フェミニズムが問う  王 権 と 仏 教
            近代日本の宗教とジェンダー

    源 淳子 著    三一書房   2300円+税

目  次
第一部 仏教と王権
第一章 近世仏教の権力構造
一 権力の補完装置としての仏教
二 幕府の宗教政策
三 権力を支えた檀家制度
第二章 近代国家と宗教
一 天皇制国家と仏教
二 天皇制を補完した宗教−祖先崇拝と家制度
三 天皇制と女性−戸籍制度と夫婦同氏
 
第二部近代日本のナシヨナリズムとジェンダー・イデオロギー
第一章 宗教による近代植民地主義
一 植民地主義を評価する戦後知識人
二 仏教と植民地主義
三 布教という名の侵略
四 仏教女性と植民地主義
第二章 近代日本の「国体」とジェンダー・イデオロギー
一 「国体」と皇国女性
二 「国体」と母
三 皇国女性による「朝鮮」への思想教化

 

 私はこの五年間、フェミニズムから「日本」を「セクシュアリティ」「自然」「王権」 をキーワードとして読み直してきました。そしていつも、その基底には宗教(とくに仏教) が存在していました。これまで『仏教と性−エロスヘの畏怖と差別』『フェミニズムが問 う仏教−教権に収奪された自然と母性』(いずれも三一書房)と題して二番目までのテー マを発表しました。本書は三番目のテーマを論じたものです。
 近代日本の「思想のモラル」に天皇制と宗教が強い影響を与えていることを明らかにし ました。また、この国の権力を支えたイデオロギーがどのようにつくられたかを分析し、 その権力が「家」制度とジェンダーに、また神話的言説によってつくられた「国体」が女 性に与えた影響を分析しました。
 いちおう三つのテーマに挑戦してきましたが、その奥の深さに今後の課題がみえてきま した。さらにその思想を深めたいと思います。

源 淳子