上野千鶴子×宮台真司

角田由紀子/藤井誠二/川畑智子/鬼塚・チェイス・円

買売春解体新書
近代の性規範からいかに抜け出すか

SEXUAL RIGHTS PROJECT 編  つげ書房新社  1600円+税


目  次

第T部 上野千鶴子×宮台真司
(対談) 援助交際は売春か?
 
売春観とセックス観の変容
東京発「援助交際」/「結婚するまで処女で」という近代的規範/プルセラ少女の登場/プルセラ・オヤジの分析/オナニー・マスターベーション・メディア/買売カルチャーという接待メニュー/プルセラ・オヤジ、援交オヤジは何者か/女の子による男の子の消費/生産財男と消費財男  
現在のセクシュアリティ
売春に参加している人たち/売春の定義の誤り/性的なパートナー/全員結婚社会/欺瞞かつ偽善的なセクシュアリティ/「うそ」社会―日本近代数世代のツケの澱  
近代の規範からいかに抜け出すか  
自由と尊厳/「自尊心」の中身/よいセックスと悪いセックス/試行錯誤から学ぶセックス/自己決定の概念  
売春処罰規定を問う  
処罰規定の中身/性的弱者と性的メディア/性欲の近代的誤解/自己決定能力を信じる

第U部 「風俗産業を考える」
 
売春女性に対する差別意識を考える
――『東電OL殺人事件』差別報道から見えるもの …… 角田由紀子
未成年者の売春をどう考えるか
――法規制と自己決定 …… 藤井誠二
売春防止法が女性に与える影響
――風俗産業で働く女性たち …… 川畑智子
エンパワーメントの意味を考える
――「被害者」・「堕落者」の視点からの脱却 …… 鬼塚・チェイス・円

 
出版にあたって

 この本は、SEXUAL RIGHTS PROJECT が大阪府からジャンプ助成金を受け、1997年に企画・主催した連続セミナー「風俗産業を考える」の講演内容をまとめたものです。

 SEXUAL RIGHTS PROJECT の前身は、シスターフッドの会といいます。私たちの出発点は、「女性学年報」(日本女性学研究会発行)の第16号(1995年)が「私たちのセクシュアリティ―いま、<女>であること―」を特集した時に、その巻頭にシスターフッドの会として発表した「座談会『ふしだら』という烙印の正体―売春防止法は誰のためのもの?―」にあります。そこで問題となったのは、売春防止法が、不特定の男を相手にお金と引き替えにセックスをする女性に対して、社会的な制裁として機能していること、そして、それは、「売春婦ではない」女性として存在する娘や妻の性行動をコントロールする機能も同時に兼ねていることでした。

 売春防止法は、売春はいけないといいながら、男性の性行動には関与せず、常に女性の性行動のみを規制しています。売春防止法は女性にはなんのメリットもないとうことで、意見は一致しましたが、では、売春自体をどう考えるかとなると意見はわかれました。議論の中で、女性の側にも、「性を売る」女性への差別意識があることが自覚できました。また、売春を認めれば男社会の思うつぼであるという危機意識も売春反対の主な理由として出てきました。

 U部は、座談会を通して出てきた売春女性への差別、労働としての売春、発展途上国における売春、そして子どもの売春という4つのテーマについて、より多くの人に私たちの問題意識を伝え、議論をしたいという意図のもとに計画したものです。

 講師として招いた人々は、セミナーを企画した私たち自身が一番、話を聞きたいと思っていた人々です。皆さん、快く引き受けてくださいました。この本を通して、私たちの問題意識が1人でも多くの人に伝わり、議論を深めるきっかけになればと思っています。

SEXUAL RIGHTS PROJECT