女性学年報


『女性学年報』と日本女性学研究会

Q 『女性学年報』と、日本女性学研究会とはどんな関係ですか。
A 『女性学年報』は、日本女性学研究会の有志のプロジェクト・チーム(編集委員会)で編集されています。日本女性学研究会を母体としていますが、『年報』は研究会の『会誌』ではありません。会計も研究会とは切り離された独立採算制で、発行費は前号の売上金、広告収入から捻出しています。

Q 編集委員にはどんな人がなるのでしょう。
A 日本女性学研究会の会員の女性で、関西で月に一回程度開かれる編集委員会に参加でき、原稿のコメントや事務作業などに携わる意志と時間の持ち主であれば、誰でも編集委員になれます。編集委員会は固定ではなく、毎年編成されます。

Q 編集委員会はどのような方針で編集をしているのでしょうか。
A 別掲の「『女性学年報』のめざすもの」を基本理念として編集しています。『女性学年報』の各号にはそれぞれ個性がありますが、それはそのときの編集委員の個性が誌面に反映されているだけで、基本原則をはずれることはありません。

Q 編集作業は出版社などに委託しているのでしょうか。
A 印刷・製本は印刷所に頼んでいますが、それを除けば編集委員のボランティアでつくっています。たんに原稿を集め、コメントするというだけでなく、発送(送本)や在庫管理、会計処理等の事務作業もすべて、編集委員が自宅で仕事や学業、家事の合間に行っています。

投稿について

Q 投稿について条件はありますか。
A 『女性学年報』は日本女性学研究会の有志によるプロジェクトですから、執筆者も原則として研究会会員とさせていただきます。また「『女性学年報』のめざすもの」の趣旨に賛同していただける方でないと困ります。自分たちの手で作ることを目的とした雑誌ですから、投稿される方は執筆のみではなく、編集作業、販売等にもご協力いただきたく思います。

Q 投稿者は、掲載料を払うのですか。
A 掲載料はいただいていませんが、執筆者には原則として十冊買い取りをお願いします。短いエッセイなどの場合には、相談に応じます。

Q 投稿するにはどうすればよいのですか。
A 本誌の次号「原稿募集欄」をご覧ください。また、毎年募集時期には『VOICE OF WOMEN』(日本女性学研究会のニューズレター)に案内を出します。

Q 投稿可能なのは、どういう種類の原稿ですか。
A 論文、研究ノート、ルポルタージュ、エッセイ、海外情報、学会報告、座談会、その他学術誌や既成のメディアには掲載されないようなタイプのものでも、内容的に『女性学年報』にふさわしいものであればジャンルは問いません。

Q 送った原稿は返してもらえるのですか。
A 投稿原稿は、採用、不採用にかかわらず返却しませんのでご了承ください。

Q 「論文」と「研究ノート」といった区別があるのですか。
A 一応、次のような目安があります。「論文」なら、先行研究をさまざまな角度から検討した上で独創的な知見が示されているだけでなく、その知見の裏付けを実証的に示す手続きがなされていること。つまり執筆者以外の人でも、参考文献一覧や注をチェックすれば、その知見が「証明可能」であるかどうかを容易に判断できるようになっていることが求められます。独創的な知見の披露がなされているものの、検証可能な資料の不足などの理由により、その知見の論証にまでは至っていない文章、あるいは時事的な話題についての文章などは「研究ノート」と考えます。ただ、これはあくまでも、個々の原稿に含まれている情報の量や形式に着目した便宜的な分類です。実際、「論文」と「研究ノート」の境界をどこに置くかは議論の分かれるところで、編集委員会のメンバーが変われば、個々の原稿に対する判断の仕方は変わる可能性があります。

原稿について

Q 投稿原稿はどんな点に気をつけないといけませんか。
A 未発表のものに限ります。日本語で書かれたもので、二〇〇〇〇字(四〇〇字詰原稿用紙五〇枚)相当を原則としています。
 ◇形式については次の点に注意して下さい。
 (1) 読みやすさに配慮し、注を必要最低限にとどめる。
 (2) 引用・参考文献の出典は、本文中では著者名と刊行年(引用の場合はページも)のみ記入し、参考文献一覧に一括して記載する。
   例 (著者名 二〇〇五、三四頁)
 (3) 日本語以外の表現や文章を使用・引用する場合は日本語に翻訳すること。
 (4) 固有名詞についても本文中では原則として読みを付すこと。
   例 バトラー(Butler)  Butler(バトラー)  Butler など
 (5) 外来語、漢語、専門用語をできるだけ避け、わかりやすい表現に置き換えること。
 (6) 「、」「。」以外の記号は多用しない。
 (7) 著者校では誤字、脱字以外の訂正はしない。
 (8) 文末に参考文献一覧をつけること。書き方には以下の方法がある。
   例
    ア 著者名を五十音順に並べる。
    イ 著者名をアルファベット順に並べる。
    ウ 文献の使用文字により分ける。
    エ 本文では引用順に番号をふり、目録では番号順に並べる。


Q どのような採用基準があるのでしょう。
A 内容(「コメント制度について」の章参照)、枚数規定の条件がみたされていることが必要です。さらに、投稿原稿が多い場合は、以下の基準で取捨選択を行うことがあります。
 ◇編集委員の原稿を優先。これは『女性学年報』が、「日本女性学研究会に所属する私たちが、私たちの見方を反映させたメディアを、私たちの手でつくる」という原則で動いているからです。「私たちの見方」の表現の場として誕生したという経緯は、大事にしたいと思います。
 ◇日本女性学研究会の分科会やプロジェクトチームの共同研究報告を個人の原稿よりも優先。これも、女たちの共同作業としての『女性学年報』の性格に根ざした基準です。
 ◇年報以外に発表の場が制限されていたり、いわゆる専攻分野では女性解放の視点で文章を書きにくい人を優先。
 ◇発表経験のない新人を優先。より多くの人に発表の機会を提供したいからです。
 ◇女性の原稿を優先。これまで多くの発表機関が男性に独占されていたことを考え、女性優位を貫いています。


コメント制度について

Q コメント制度とは何ですか。
A 執筆者の主張をより明快に、より多くの読者に伝えるために『女性学年報』が採用しているのがコメント制度です。女性学にはさまざまな領域からのアプローチが存在しますが、どのアプローチでも近年の研究の進展にはめざましいものがあります。そのため、ある領域でずいぶん新しい見方が出ているのに、他の領域ではほとんど知られていないという、一種の情報ギャップも起こっています。『女性学年報』は、これらの情報ギャップを埋め、さまざまな立場や状況から女性解放について考えている人びとが、それぞれの研究や体験から得た知見を共有し、深めていく場所でありたいと考えています。コメンテーターはこのような観点から、執筆者の知見を他の人たちと共有できるよう、わかりやすく書くことを提案するのです。

Q どんな点に注目してコメントされるのですか。
A コメントの基本的な考え方は次の三点です。
 ◇広い意味での女性解放の視点に立つものであること。単に女性が書いたものであるとか、女性を研究対象にしているだけの文章を掲載するのではありません。
 ◇執筆者自身の経験や分析、考察が、自分の言葉で書かれていること。例えば論考の場合、先行研究を押さえていることは必要ですが、「借り物」の思想だけで構成された文章では不十分です。
 ◇誰にでもわかりやすく、読みやすい文章であること。『女性学年報』は学術団体の機関誌や大学の紀要とは異なります。例えば、心理学の研究誌なら説明する必要のないような用語や概念であっても、研究者のみが読者ではない『女性学年報』ではわかりやすい説明が必要です。内容の深さと文章のわかりやすさは、充分両立するものだと思います。
 ◇構成については以下のような点をチェックします。
 (1) テーマは何か。
 (2) 執筆者がそのテーマを取り上げる理由(動機)は明らかであるか。
 (3) 論文の場合、執筆者の独創的な知見が加えられているか。さらにそれを論証できているか。
 (4) 構成に矛盾や混乱がなく、筋道立てて論じられているか。
 (5) 特定の学問分野でしか使われない専門用語や記号、言いまわしを読者向けに書き直しているか。
 (6) 「誹謗・中傷」にあたるようなところはないか。他者を傷つけたり、配慮に欠けるような表現はないか。


Q すべての原稿に対してコメントが行われるのですか。
A 原稿が集まった段階で、編集委員会で掲載する方向に決定したものについては、すべてコメントを行います。これは、学術誌などへの掲載の可否を決める「レフェリー制」とは異なり、コメンテーターは担当原稿にコメントをつけますが、掲載の可否を決める権限はありません。掲載の可否は、コメントされてできあがった原稿について、編集委員会の全体討議で最終的に決められます。また、執筆者には誰がコメントしているのかが知らされ、直接会って議論をすることが奨励される点もレフェリー制とは違うところです。

Q どのような人がコメンテーターになるのですか。
A 基本的には、一つの原稿に二人のコメンテーターがつきます。一人は原稿で扱われている分野もしくはそれに関連する分野に詳しい人、もう一人はその分野についてさほど詳しくない人です。二人とも「専門家」、あるいは二人とも「素人」としないのは、「専門家」にもそうでない人にも、女性解放に関する執筆者の視点が伝わってくる文章にしていただきたいからです。原則的には編集委員がコメンテーターになりますが、二人のコメンテーターのうち一人は編集委員以外の人となることもあります。コメントは日本語で行います。

Q 執筆者はコメンテーターを選べるのですか。
A 選べません。


 今後とも執筆者、読者、編集委員の間で率直な意見交換を行いつつ、『女性学年報』をより良いものにつくりあげていきたいと考えています。どうかみなさまのご意見をお寄せください。
『女性学年報』二九号編集委員会