毎日新聞山形全県版 9月8日

スコープ
庄内南部広域水道 来年秋から供給開始

月山ダム(朝日村)を水源とする庄内南部広域水道から鶴岡市など1市6町1村への水道水供給が来年秋にも始まる。しかし20年前の計画に基づいた鶴岡市の水需要予測は、人口が予測通りに伸びず現在の水使用量と大きくかけ離れる。このあおりで水道料金が1.7倍以上にも高騰する見込みから、市民団体が「現行の地下水利用で十分。使わない水に高い料金を支払うのは納得がいかない」と反発。広域水道からの供給の是非を問う住民投票を実現させようと準備を進めている。(佐藤 敬一)

鶴岡
20年前の予測外れる  

見直しへ 住民投票の動き

料金1.7倍以上に

計画変えぬ姿勢に問題

県環境整備課によると、庄内南部広域水道は1980年度に作成された「庄内地域広域的水道整備計画」に基づくもの。「庄内地方の市町村から要望されて県が計画を作成した」(小林実課長補佐)と言い、市町村議会や県議会の同意、厚生省の認可を経て85年4月に事業がスタートした。
広域水道は目標(94年)より7年遅れて来年秋に完成する。総事業費は475億円で、うち316億円(利息含まず)を市町村が負担する。この「借金」は供給後の水道料金から支払われる仕組みで、水道料金は各市町村が「これくらいが必要とお願いした」(県企業局)契約水量と実際に使用した水量によって決まる。しかし、広域水道料金の8割を決めることになるこの契約水量をめぐって、20年前の計画当時に見込んだ予測と現在の水道使用量に大きなズレがあるため、問題が持ち上がっている。鶴岡市の場合、計画で定められた1日の契約水量は7万2千602立方メートルだが、現在の1日最大水道使用量(昨年度)は、4万9500立方メートル。2万3000立方メートルも差がある。鶴岡市水道部の長谷川政敏総務課長は「高度成長期の昭和40〜50年代の人口の伸びの実績を踏まえて見込んだのだが、、、」と口を濁すが、誰が見ても見込みの水量が過剰であることは間違いない。現在、主に
地下水を利用している鶴岡市の水道料金(1ヶ月、20立方メートル)は2457円と県内13市では最も安いが、来年秋に広域水道に移行すれば「13市平均(4155円)程度にまではあがる」(鈴木文雄・鶴岡市水道部長)という。このため、市民団体「ウォーターワッチネットワーク」(代表・草島進一市議)は「水を使っても使わなくても、現実とはかけ離れた契約水量に基づいて高い水道料金が決まってしまう。計画から全く見直しをしてこなかったことが問題だ」と強く批判し、契約水量の見直しを求めている。しかし、市水道部では「鶴岡だけ量を減らすというわけにはいかない。広域水道になることで確かに値上げせざるを得ないが、行政としては24時間安定した水の供給をしなければならない」と述べ、見直しの考えはないことを説明する。「一度立てた計画はその後の時代の変化があろうとも変えられない」という公共事業が持つ大きな問題点が、この広域水道からも読みとれる。
ネットワークでは「月山ダムの水は必要か」を問う住民投票の実施に向けた準備を行っており、9月末からも条例制定に向けた署名集めを始める予定だ。
草島代表は「水道料金が上がれば、今以上に水を使わなくなる可能性がある。過剰な契約水量が規定値になっていることに問題があり、一般会計から繰り出す形で値上がりを抑えようというなどの小手先の議論ではなく、時のアセスによる事業の抜本的な見直しが必要だ」と話している。