京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」

1 せまりくる水の危機

第5章 水の将来(文責:佐藤)



 右の絵を見てください。水と灯油をのせた天秤はどちらに傾くでしょうか。もし値段を重さとして考えたら、天秤は水の方に傾きます。ペットボトルの水は1リットル約100円、灯油は1リットル約50円。このように今日では、水には燃料となる灯油よりも大きな価値が認められているのです。それほど水は私たちにとって重要なものとなりました。



 

 現在、世界の人口は増え続けています。2025年には80億人に達すると予想されています。その上、水質汚濁や地球温暖化も進んでいます。生活水準の改善とあいまって、今後世界中で水不足が起きる可能性があります。


 過去100年間に世界の人口は3倍に増えましたが、水の使用量は6倍に増えました。現在の水の使用量は35年前の2倍にもなります。世界各地で地下水の枯渇が進み、地下水面は低下し続けています。人間が自然回復量をかなり上回るスピードで水を汲み上げているからです。例えば中国では、工業が発達し大規模な工業用井戸が大量の水を汲み上げたために、何百万人もの農民の井戸が枯れるということが起きています。また北京の地下水面は過去40年で37mも低下し、過剰な水の取水により黄河の流れは途中で途切れています。


 このように水資源の枯渇が起きていますが、それにもかかわらず世界の水需要は今後も伸びるでしょう。人口の増加に加えて生活水準の改善や経済発展が進み、農業用水以外の水需要も急速に高まるからです。そのため農業用水が不足し、食糧不足も予想されます。中国では今後30年で水使用量は約5倍に増加すると見込まれ、今後水の不足で食糧が自給できなくなり、穀物を海外からの輸入に頼るようになるでしょう。そうなれば、中国の膨大な穀物需要が国際穀物価格を高騰させ、世界全体の食料安全保障を脅かすことも考えられます。


水の取水量と消費量の推移と予測

用途

1900

1950

1995

2025

(灌漑拡大)

2025

(灌漑維持)

農業

用水

取水量

500

1100

2500

3200

2300

消費量

300

700

1750

2250

1700

工業

用水

取水量

40

200

750

1200

900

消費量

5

20

80

170

120

生活

用水

取水量

20

90

350

600

900

消費量

5

15

50

75

100

貯水池(蒸発)

0

10

200

270

200

合計

取水量

600

1400

3800

5200

4300

消費量

300

750

2100

2800

2100

資料:Shiklomanov 1999 , Alcamo and others 1999 , 世界水ビジョン
2025年の予測は、今のまま灌漑面積が拡大し続けた場合と、灌漑面積の拡大に歯止めが
かかりかわって生活用水と工業用水の消費が増加する場合の二つの予測がある。

 国家間または国内の水の分配の不平等性も問題です。世界では5人に1人は安全で手ごろな価格の飲用水が手に入らず、半分の人は衛生設備を利用できません。1日に約1万人が水による伝染病で死亡し、そのうち半分近くは下痢による子どもの死亡です。30億人強の人々が1人あたり年間1700m3以下という高度に水が不足した状況で暮らしています。日本人の1人1日あたりの平均水使用量は350Lですがサハラ以南のアフリカではそれは10L〜20Lに留まります。日本の年間の清涼飲料水の生産額は3兆3千億円  ですが、この金額は世界のあらゆる人に清潔な水と衛生的な下水施設を供給するのに必要な資金の3倍にあたります。グローバル化が進む現在、水は金のあるところに大量に集まり、貧しい人ほど高い金を出して水を買わなければならいのです。


 2025年には推定で世界人口の約半分にあたる40億人が高度に水が不足する国に居住すると言われています。現在は1人あたり平均で年間6600m3の水資源を使える計算になりますが、2025年にはそれが4800m3になると予想されています。今後、アジアやアフリカ、ラテンアメリカを中心に世界の60%で水不足が深刻になるでしょう。


 しかしこれは海外だけの問題ではなく、私たちの暮らしにも関わる問題です。なぜなら私たちの暮らしは世界と密接に結びついているからです。そのため、私たち1人ひとりが水の問題について考える必要があるでしょう。


●次のページへ


2002年11月祭研究発表 「水家族」へ