京大ユニセフクラブ2000年度11月祭研究発表
「私たちのお金がこわす途上国の暮らし」

ある国が借りてたお金を返せなくなったらどうなるの?


(人が金を借りたら、そのお金を返す義務がある。それは会社でも同じ。返せなくなったら破産したり、倒産したりしますよね。でも国は破産できないんです。それでも、国だってお金がなくなって、経済が破綻して、どうしようもなくなることだってありますよね?こういう時はどうするんでしょうか?)

例えば、ODAによって貸付がなされたら相手国は当然返す義務があります。そのような借金(=債務)が積もり積もって返せないほどたまってしまったのが、債務問題です。

債務問題を解決するためには2つの方法があります。一つは、途上国の経済状況を改善して、外貨を得やすくします。その上で債務返済期間を伸ばして気長にお金を返してもらうというやり方です。これを構造調整と呼びます。もう一つは、債務を帳消しにするというやり方です。

これらの2つの方法が実際にどのように取られていったのか、債務問題の今までの流れを見てみましょう。

累積債務問題は80年代から注目されるようになりました。でも、当時からずっと行われてきたのは「北」の視点からの構造調整でした。ラテンアメリカへの構造調整は失敗し、さらに経済は悪化していったという経緯もあります。真剣に取り組まれなかったこともあるのでしょうか、10数年間計画・実行されていたわりに成果をあげられず、状態は遅々として改善されませんでした。

そうこうするうちに債務は膨大な量に膨れ上がります。そして、債務返済が膨大な額になるにつれ、債務国の予算は圧迫されます。たいてい、国民が一番必要としている、医療・福祉・教育面での予算が削られます。

そして96年、「今までとられた構造調整ではだめだ。債務を返済しつづけながら経済構造を改善して外貨を稼ぐことはできない。」という声があがり、イギリスの市民を中心として債務帳消しの運動が起こります。これはJUBILEE2000と呼ばれました。

●構造調整でうまく行かないのは分かったけど、帳消しにしてしまっていいのかな?
借金は返すものでしょ?

先進国が途上国にお金を貸します。このお金で途上国は儲けようとしますが、実際は貸し手の先進国が強すぎて全然儲けられません。分かりやすく言うと、借り手は貸し手に商売を邪魔されて、商売が成り立たないまま借金だけが増えていく、こんな状態なのです。他にも、独裁者と政府高官が利益を独占して国民に利益がいかない事が多々あります。この様な、もとから返すことのできないお金や、少数の人々によって不当に使われたお金は帳消しにされるべきです。

●借金を帳消ししてしまったらどうなるの?

現状よりも悪くなる国もあるかもしれません。何も改善されない国もあるかもしれません。しかし、債務帳消しをおこなう事により途上国の惨状を誰もが真剣に考えるようになるんじゃないかと思います。また、帳消しにより構造調整(外貨を稼げるようになる)が上手くいく可能性もあります。

つまり
何で僕が債務帳消しを訴えるか?

今、途上国は債務返済によって予算を圧迫され、
人々は最低限の保障さえ受けられない状況にあります。
債務帳消しの影響を考えてゆっくりと話を進めることもできます。
が、しかし今は何よりもスピードを必要とするときだと思います。

何よりも帳消しによってえられるものとして、貸し手側である
日本の人々に訴えかけられるという点です。貸し手側が真剣に
融資を考えること、これがODAをよくすることにも重要だと
思います。今までのように、悪いプロジェクトでもお金が返っ
てくるといった甘い考えは捨てるでしょう。これが債務帳消しの
成果だと思います。

(京大工1 高垣 直尚)

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