京大ユニセフクラブ2000年度11月祭研究発表
「私たちのお金がこわす途上国の暮らし」

ODAは日本企業のために使われている!?


ODAって発展途上国のために使われるもの。
そんなの当たり前じゃん。
世の中には、毎日の食事も満足にとれず飢えている人もいる。お金がなくて学校に行けない子どももいる。日本なら簡単に治る病気で死んでしまう人もいるんだよね。
そういう人たちのためにODAがあるんでしょ?
そう思ってた。
学校でもそう習った。日本は世界で一番ODAを出していて偉いんですよって。
だから、日本企業のためにODAが使われているって知った時はほんとに驚いた。
この事実をこれを読んでいるあなたにも知って欲しい。
以下、その例として「アサハンプロジェクト」を取り上げる。

アサハンプロジェクトとは
インドネシアのスマトラ島のアサハン川にダムを造り、
水力発電をする。その電力を利用して、アルミ精練事業
を行うプロジェクト。(1975年調査開始。84年完成。)
総額4110億円。うち、30.8%が日本のODAである。

なぜアサハンプロジェクトが計画されたか?(プロジェクトの背景)

◆日本のアルミ需要の増大

 

このグラフに見るように、日本のアルミニウムの需要は年々増大している。
僕たちの周りにもアルミは溢れている。缶ジュース、窓枠のアルミサッシ等。
もはや僕たちの生活はアルミ無しでは成り立たないと言えるだろう。

◆アルミ産業の基礎知識
アルミ産業には、原料のボーキサイトからアルミの新地金を作るアルミ精錬業と、その地金を加工して製品にするアルミ加工業がある。アルミ精錬業には、他の金属を精錬するよりも大量の電気が必要だ。これが、アルミが「電気の缶詰」と言われるゆえんだ。

◆日本のアルミ精錬産業

これは、日本の新地金供給量のグラフだ。つまり、アルミ精錬産業の生産量の推移を表している。戦後30年間、日本のアルミ精錬産業は生産量を伸ばしてきた。
しかし、火力発電所(原料:重油)の電力に頼ってきたので、73、79年の二度のオイルショックによる電力コストの高騰にあい、その後衰退の一途をたどった。

この様に日本国内でのアルミ生産はコスト的に難しくなった。そこで、アルミ精練業界は国内の工場を閉鎖し、安く地金を生産できる海外への移転を模索した。そして、出てきたのがアサハンプロジェクトである!

このような背景のもとで、1974年、アルミ製錬企業5社は、フィリピン政府とアサハンプロジェクトについて合意する。そして、これらの企業はこのプロジェクトを支援するように日本政府に強く働きかけたのだ。結果、「我が国のアルミ資源の長期的確保体制確立に資する」として日本政府はこのプロジェクトにODAを使うことを決定したのだ!

この事業の問題点は何か?
この事業最大の問題点。それは、第一に日本企業の都合が考えられている点である。

電力コストが上がった → 日本では生産できない → じゃあ海外でしよう → そのためにODAを使う!

という思考回路なのである。
途上国の発展を助けるというODAの理念はどこにも出てこないのだ。

ODAだって日本人の税金を使っているのだから、日本のためになる使い方をして当然だ。
そういう意見もあるだろう。
しかし、ちょっと考えて見て欲しい。
世界には、飢えている人や学校に行けない子どもがとてもたくさんいる。
彼らへの援助と日本企業への援助、どちらが大切なのだろうか?
貧しい人々のためにODAを使おう、というのがODAの理念であり、約束だ。
第一に日本企業の利益を考えてODAを使うのはやはり許せない。

 (京大法3 亀山 元)

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