ミニ学習会「国際刑事裁判所」報告

深川 博志


ユニセフクラブでは、毎週金曜日の例会後に例会後企画を行っています。「ミニ学習会」、気になる新聞記事をもとにいろいろ話し合う「From the Press」、開発教育(地球市民教育)の手法を取り入れた「ワークショップ」のどれかをやることが多いようです。 9月18日は国際刑事裁判所についてのミニ学習会を私がやりました。前号で一応の報告を載せたのですが、あまりに不評だったので、真面目に書いた報告を載せます。

1.なぜこのテーマを選んだか

罪を犯せば、相応の償いをしなくてはならない。しかし、この大原則に反する事件が、今なお多発しています。ボスニアやルワンダは、そのあまりにも有名な例です。

「敵」を支援したというだけで、人々を追い出し、町を破壊する。民族が異なるというだけで、集団的に、レイプや虐殺、拷問をする。国内の司法制度が整っていないから、あるいは政府に裁く気がないからという理由で、世界はこのような不正義を放置しておいていいのでしょうか。

国内で裁けないなら、国家の枠を超えて裁く仕組みをつくればいいという考えのもと、7月に国際刑事裁判所を設立する条約が採択されました。

あえて今この条約をとりあげたのは、これが画期的な条約であるにもかかわらず、あまりにも知られていないと思ったからです。

2.簡単な説明

もともと第2次大戦後、国際裁判所を作ろうという機運が高まったこともあったのですが、実際の作業は冷戦の終結を待たなくてはなりませんでした。1989年トリニダード・トバゴが常設裁判所の設置を国連総会に提案します。このときは、麻薬組織への対処が目的でした。

しかし、その後の旧ユーゴスラビアやルワンダでの重大な戦争犯罪を裁くための臨時裁判所の設置を経て、重大な人権侵害を裁くための常設裁判所が必要だという考えが広まります。そして、今年7月17日、1ヶ月間に及ぶ外交会議の末、設置条約が採択されました。

さてその具体的な仕組みですが、まず裁判所に事件を持ち込めるのは、

ときだけです。裁判所の検事局、加盟国政府、国連安保理のいずれかが持ちこみます。さらに、裁判所が管轄権を持つ前提として、事件が起きた国か被疑者の国籍がある国ののどちらかの同意が必要となります(安保理によって発動された事件については、同意はいらない)。裁判所で取り扱う罪は、当面、大量殺害、人道に対する罪、戦争犯罪のみです。最高刑は終身刑です。

また、安保理の決議により、最高1年間(延長可)の操作・裁判の凍結が可能です。

3.参加者の反応

「へぇ、こんなものがあるんですか。」というのが大方の反応でした。確かに、集団レイプや民族虐殺などというのは私達からあまりにも遠い世界の出来事です。それをどうなくすか(特に実務的な側面において)ということに関心を持てというほうが、無理なのかもしれません。

それから、本当に実効性があるのかという質問がありました。これについては、

と答えておきます。

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