ワークショップ報告

「できるだけ儲けましょう」
(Gain As Much As Possible)

福田健治


 9月4日の例会後ワークショップ、「できるだけ儲けましょう」の報告です。3回生以上の方は、2年前に同じワークをやったのを覚えているかもしれません。さてさて、今回はどういう結果になるやら・・・

ゲームの概要

  Xを出したチーム Yを出したチーム
4グループがX -100$  
3グループがX
1グループがY
+100$ -300$
2グループがX
2グループがY
+200$ -200$
1グループがX
3グループがY
+300$ -100$
4グループがY   +100$

 4つのグループに分かれてもらい、それぞれのグループでXを出すかYを出すか一定の時間で決めてもらいます。各グループのXとYの組み合わせで得点が決まります。各グループの得点は次の表の通りです。

 例えば、第1〜3グループがXを出して、第4グループがYを出したとすると1〜3グループはそれぞれ+100$、第4グループが−300$となります。

 こうしてXとYの選択を10回繰り返してもらいます。また5、8、10回目の前にはグループ間で相談する時間を設けました。その代わり5、8、10回目はボーナスで得失点共に3〜10倍になります。

 Xを出すかYを出すかは当然上の表が鍵になります。簡単に解説すると、すべてのグループがYを出さない限り、Yを出したグループは損をします。(自分のグループだけYだった日には…) だからといってXをみんなが出してしまうとすべてのグループが損をすることになります。それよりかはYをみんなで出してみんなで儲けた方がいい。でも1グループでも裏切る(Xを出す)となぁ…と、こんな仕組みになっています。「囚人のジレンマ」という有名なゲームがありますが、あのゲームの4グループ版だと思ってください。

◆ ゲーム結果

今回の結果はというと、これもまた悲惨なもので・・・ 次の表をごらんあれ。

代表者名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 得点
原田 X X X X Y X Y Y Y Y -4100
石原 X X X X X X X Y Y X 1500
角田 X X X X Y X X X Y Y -1700
佐藤 X X X X X Y X X Y X 3100
倍率・合計         3     5   10 -1200

 とまあそんなわけで、最後でYをだしまくって大損した原田くんチームと、最初から戦略的にゲームを進めていた佐藤くんチームの間に7000点以上もの点差が開いて終わったのでした。

 ゲーム中は比較的和やかで、前回見られた嵐のような非難の応酬はない変わりに、Yを出そうという合意形成への努力も穏やかで、結局9回目に(人をだますためにYを出した佐藤くんチームのおかげで)Yがそろったほかは、Yを出したチームには厳しい結果でした(それでも1回もYがそろわなかった前回よりは幾分ましですが)。

◆ 参加者の感想から

 えらくゲーム内容への文句が多く、こんな対照的な意見が感想で出ていました。実際にお金を賭けたらどうなるのか、とかね。あんまり考えないほうがいいと思うぞ。

 今回特徴的だったのは、ゲームなんだから勝つように努力して当然という意見が非常に強く主張されていたことです。振り返りの最初のほうでは、みんなの利益を考えていた人がいたということに驚いていました。

 この発言が儲ける派の人たちには相当印象的だったようです。これを聞かなかったら最後まで勝った、うれしかったで終わっていたという人や、少し心が痛むという人も。

◆最後に―ワークショップと「読み」を巡る一考察(丸山さんへ)

 私が大学生活で最も切れたときの話から。2回生の春、新歓学習会の準備で人の家におじゃまして議論していたときのことです。ワークショップをやるやらないという会話から、どういう態度でワークショップに臨むのかという話になりました。ワークショップに参加するにあたって、そんなに気構えなくてもいいしファシリテーターの意図なんか気にしなくてもいいのではと主張する私に、某友人は「そんなこと言われても今までずっとそうやって来たんだからできるわけないじゃない」と言い返しました。ここから売り言葉に買い言葉で私が切れるまで数分ですが、それはさておき。

 ワークショップで自由な意見を出して欲しいファシリテーターにとって、参加者の「読み」は厄介なものです。最終的な答えが与えられている「問題」を解くことに慣れている私たちにとって、「ファシリテーターが何を求めているかなど気にしなくていいじゃない」という要求ははなはだ不親切です。私も参加者としてワークショップに参加すると、ついつい、ファシリテーターがこういう意見を求めているんだろうなとか、あーあ、的外れなことを言っているよなどと腹の中で思っていたりします。

 ワークショップにもいろいろな目的があります。学習会でやるワークショップなんかは、明らかに「この問題について考えてください」という目的があってやるわけです。でも今回のように、特にテーマを設けずファシリテーター側が方向性をそれほど気にしていないときもあります。こういうときに進行側の方向を探られると非常にしんどい。気にしなくていいよ、勝手に思ったことを言ってくれれば、と心の中で叫びたくなります。ファシリテーターだって楽しみたいんだよ。予想できる意見だけじゃ面白くとも何ともない。

 まっさらになるのは難しい。でも注意して感受性を働かせれば、いろいろなものに新鮮な感情を抱き、それをストレートに表現することはそれほど困難ではない・・・かもしれません。生活の中でも、ね。

 

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