NGO訪問報告

緑の地球ネットワーク

石原正恵


活動内容

 黄土高原では、長年にわたる人間による森林伐採のため土壌流失が起こっている。この地域は降水量が少量なうえ、6から8月にかけて集中的に降る。近年は春の雨は少なくなり、代わって夏の雨が多くなってきている。これは地球温暖化影響ではないかと考えられている。そのため表面の土が流され、土壌劣化も起こっている。貧しさを改善し環境破壊を防ぐため、緑の地球ネットワークは黄土高原の大同市で植林を行っている。

 むらの共有地に松を植え20〜30年したら売る。また、小学校にアンズなどを植えて果樹園を作っている。貧しいため学校に通えない子どもも多く、古くて危険な状態な小学校もある。そのため小学校で果樹園を経営し、販売する。

 最近は高地にある農村に井戸を掘ったり、また観葉植物や花卉も高く売れるので温室で栽培し始めている。松の植林は病気、害虫が発生しやすいなどの単植の問題があるので、植え付ける苗の種類を増やしたりしている。(松はお金になるため植え始めた。)そして、もう少しいい苗を植えたいので、専門家の意見をえて育苗実験を進め、人材育成を図っている。

感想

 中国の都市部で生活している人も貧しい農村に寄付をするが、多くの場合それは力のある農村であったりする。力のある農村とは、1、土地が肥えている、水が豊富にあるなど自然条件、2、交通の便が比較的良かったり、寄付や政府からの資金的サポートがあるなどの社会的条件、3、村が団結するためのリーダーがいるなどの人的条件、がそろっていることが必要である。これらの条件の悪い村では離村が始まり、人的リーダーがいなくなる。つまりこの3つの条件は無関係ではないのだ。緑の地球ネットワークでは、3つとも条件の揃う村は、自分たちで何とかできるので協力する対象から外し、また3つともない村も外す。緑の地球ネットワークは実際に1年中ある特定の現地で活動を行うことはできないので、大同市の青年の団体とその村の人が実際の運営を行っている。3とも条件のそろっていない農村ではこの青年たちが疲れてしまうから、対象から外している。本当はこういう村に協力するのがかっこいいけれど、自分たちにできることには限界があると、正直に言ってくれた。

 この言葉を聞いてそのとおりだと思う。自分にできることには限界があると思わないとしたら、それは自分のしていることを冷静に見つめる姿勢がなくなっているということだと思う。そういう状態では貧困の長期的な改善というのは難しい。貧困とは複雑な問題であり、単に食糧の増産を図ればいいというものでもなければ、搾取の構造をなくせばいいというものでもないだろう。

 また黄土高原の土を見せていただいた。細かい土というより、粉というような土で、そのためこのままでは作物に水をやっても通気性が無くなってしまい、作物の生育がよくないうという。そこで専門家の人の意見で軽石と砂をその土に混ぜることにした。ところが、地元の人は水と肥料こそが作物栽培によく、ただでさえ生育の悪い土地に砂を混ぜるなど論外だと思っていた。これは当然だと思う。砂では作物は育ちにくいというのは私たちでも信じている場合が多いだろう。地元の専門家や長老の立場を考えつつ、少しずつ実際に証明して4年をかけて説得したそうだ。単に常識を打ち破るという事の難しさだけではなく、この地域は日本軍の略奪破壊が激しかったため、今更日本人が来て何をしてくれるのかという抵抗感もあり信用を得るまで随分かかったそうだ。今回の訪問した時に日本全国から集められたさくらんぼを見せてくれた。中国の人は日本というと桜をイメージするそうで(日本人が中国というとパンダをイメージするように)、地元の人から桜を植えたいので苗が欲しいといわれたそうです。大規模な援助ではなかなかできない人と人との信頼、本音での付き合いというのができているような気がした。

 

 

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