原本は縦書です。そのため表記の一部を変えてあります。
別紙当事者目録記載のとおり
損害賠償請求事件
訴訟物の価額金三〇九五万円
貼用印紙額金一四万一六OO円
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金3000万円及びこれに対する本訴状送達の翌日より支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え
2 被告は、原告に対し、別紙謝罪文目録記載の謝罪文を交付せよ
3 訴訟費用は被告の負担とする
との判決並びに第一項につき仮執行宣言を求める。
請求の原因
一 原告の地位
原告は、東京大学医学部を卒業した医師であるが、一九七〇年三月に同大学大学院博士課程を修了後、東京女子醫科大学などに勤務した後、一九七五年四月から一九八五年八月まで厚生省に勤務し、その間、一九八二年八月から一九八四年七月まで厚生省薬務局生物製剤課長の職にあった。その後東京大学医学部教授を勤め、本年三月に同大学を定年退官したものである。
原告は、厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、エイズ(後天性免疫不全症候群)の問題が発生したため、早い時期から危機感を持ち、行政的な対応を図ろうとして「後天性免疫不全症候群の実態把握に関する研究班」(いわゆるエイズ研究班)を組織するなどした。原告としては、右のような努力にもかかわらず結果としてHIV感染者が出たことは残念であるが、右在職中にできる限りの手段を尽くしたと考えている。
二 被告の地位
被告は、東京大学分子細胞生物学研究所の文部教官であるが、その職務と関わりなく、次項記載のとおり本件訴訟で原告が問題としている立看板を、「東大職連」なる団体名義で掲出したものである。
三 被告による立看板の設置
1.設置の経過
いわゆる「薬害エイズ」問題が、マスコミで大きく取り上げられるようになったのは、一九九六年二月頃からであるところ、被告は、同年一一月頃から本年に至るまで、原告を誹謗中傷する立看板を、東京大学本郷キャンパス内の多数個所(正門付近、赤門付近、農学部正門付近、法文経一号館アーケード付近、医学部図書館付近など多数の場所)に掲出し続けた(甲第一ないし第一〇号証)。
なお、現在は、右いずれの看板も撤去されている。
2、立看板設置における重大な手続違反
東京大学では、
@「学部共通細則」第9条(2)において、「学生生徒が、学内において、印刷物の配布その他一般を対象とする行為をしようとするときは、その場所を管理する部局長に届出るものとする」とされており、
A「学部共通細則取扱内規」4の(5)において、「掲示は別に定めるところ(掲示に関する内規)に従って、学内所定の場所においてだけすることができる」とされ、
B「掲示に関する内規」第9条1項では「第1条に定める掲示場への掲示のほかに、学内における講演会等(音楽会、映画会、ダンス・パーティー等の催物を除く)の集会の通知及び受付場所の指示等のため、立看板による掲示をすることができる」、さらに同条2項では「立看板の記載事項は、集会の名称、日時、場所及び主催団体名等とする」とされたうえ、第10条1項では「この掲示内規に定める様式によらない掲示の届出は、受理しない」と定められている。
しかるに、被告による本件立看板の設置については立看板掲出に関する右各規定に違反しており、そのため、繰り返し大学当局から撤去するよう警告がなされていたにもかかわらず、被告は繰り返しこの警告を無視し、本件立看板の掲出を長期にわたり継続していたものである。
3、立看板の内容
(一)正門前の立看板(立看板@及びA)
(1)東大本郷キャンパス正門前には、被告により、少なくとも一九九七年一〇月頃から本年三月頃まで、甲第一号証写真@ないしB のとおり立看板が設置されていた(立看板@)。同立看板には、その一番上の部分に赤字で大きく目立つように「郡司戒告教授は血友病患者1800人『殺人政策』の責任を取れ!」と記載され、そのすぐ下に、原告の大きな顔写真が掲載されている(同号証写真C)。
(2)同正門前には、遅くとも一九九六年一一月頃には、甲第二号証写真@ないしBのとおり立看板が設置されていた(立看板A)。同立看板には、同号証写真Cのとおり、「郡司氏は、薬害エイズ死者400名に対し責任を取れ!」との記載がなされていた。
(二)赤門前の立看板(立看板B、C及びD)
(1)東大本郷キャンパス赤門前には、被告により、少なくとも一九九七年一〇月頃から本年三月ころまで、甲第三号証写真@ないしBのとおり立看板が設置されていた(立看板B)。同立看板には、その一番上の部分に大きな字で、「郡司『殺人政策・ワイロ』教授」と記載され、そのすぐ下に原告の大きな顔写真が掲載されている(同号証写真C)。
そして、同号証写真Dのとおり、同立看板の左上部分に貼付されたビラには、「郡司氏、懲戒処分・戒告」との見出しのもとに、「・・・保険会社からワイロを受け取っていた郡司氏に『戒告』処分・・・」さらにその下段の見出しには「郡司氏の一連のワイロ体質」と記され、さらに「郡司氏は厚生省から東大へと、氏なりに一貫した姿勢をとっている。企業利益に奉仕し最優先させる金まみれのワイロ体質は、東大にきて急に身につけたものではあるまい」、「郡司氏は東大医学部教官としての『立場』をしっかりと利用し、ユナム社の労災保険に重要な位置を占める『医者』の紹介にも心を砕いている。企業の利益と立場に対する配慮と読みの深さは驚くばかりである」などと記載されている。
また、同号証写真Eのとおり、同立看板の左下部分に貼付されたビラには、「『殺人政策』を選択・執行した郡司戒告教授」、「郡司氏は『殺人政策』の責任を取れ!」との見出しのもとに、「郡司氏は、自ら繰り返し語っているように、厚生省生物製剤課長として82年の・・・極めて早い時機に非加熱製剤によるエイズ感染の危険性を十分承知していた。しかし氏は、終始一貫して、非加熱製剤の使用を推進した。」、「しかし郡司氏は、エイズ汚染製剤が輸入された事実をあえて公表せず、輸入禁止措置もとらなかった。」とされ、さらに引き続き、「郡司氏は血液製剤の危険性を熟知し、死に至る病・エイズの感染を防ぐ方法があったにもかかわらず、当の血友病患者には危険性を一切知らせずに囲い込んで、1800人以上もの血友病患者を死に至らしめる道をあえて選択し執行したのだ。」とされている。
(2)東大本郷キャンパス赤門前には、被告により、遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第四号証のとおり立看板が設置されていた(立看板C)。同看板には、「厚生省から出張中の郡司医教授は死者400名に謝罪し責任を取れ」との記載があった(同号証写真@ないしB)。
また、同じく赤門前には遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第五号証のとおり立看板が設置されていた(立看板D)。そこには、「厚生省出向教授郡司氏は薬害エイズ死者四三〇名に謝罪し責任を取れ!郡司氏ユナム社からワイロ受け取り発覚」との記載があった。
(三)医学部一号館前の立看板(立看板E)
医学部一号館前路上には、被告により、遅くとも一九九七年一〇月頃から本年三月ころまで、甲第六号証写真@及びAのとおり立看板が設置されていた。この立看板は、前記立看板Bと同一内容のものである。
すなわち、立看板Eには、その一番上の部分に大きな字で、「郡司『殺人政策・ワイロ』教授」と記載され、そのすぐ下に原告の大きな顔写真が掲載されていた(同号証写真@、B及びC)。
そして、同号証写真C及びDのとおり、同看板の左上部分に貼付されたビラには、「郡司氏、懲戒処分・戒告」との見出しのもとに、「・・・保険会社からワイロを受け取っていた郡司氏に『戒告』処分・・・」さらにその下段の見出しには「郡司氏の一連のワイロ体質」と記され、さらに「郡司氏は厚生省から東大へと、氏なりに一貫した姿勢をとっている。企業利益に奉仕し最優先させる金まみれのワイロ体質は、東大にきて急に身につけたものではあるまい」「郡司氏は東大医学部教官としての『立場』をしっかりと利用し、ユナム社の労災保険に重要な位置を占める『医者』の紹介にも心を砕いている。企業の利益と立場に対する配慮と読みの深さは驚くばかりである」などと記載されていた。
また、同号証写真Cのとおり、同看板の左下部分の貼付されたビラには、「『殺人政策』を選択・執行した郡司戒告教授」、「郡司氏は『殺人政策』の責任を取れ!」との見出しのもとに、「郡司氏は、自ら繰り返し語っているように、厚生省生物製剤課長として82年の・・・極めて早い時機に非加熱製剤によるエイズ感染の危険性を十分承知していた。しかし氏は、終始一貫して、非加熱製剤の使用を推進した。」及び「しかし郡司氏は、エイズ汚染製剤が輸入された事実をあえて公表せず輸入禁止措置もとらなかった。」とされ、さらに引き続き、「郡司氏は血液製剤の危険性を熟知し、死に全る病・エイズの感染を防ぐ方法があったにもかかわらず、当の血友病患者には危険性を一切知らせずに囲い込んで、1800人以上もの血友病患者を死に至らしめる道をあえて選択し執行したのだ。」とされていた。
(四)病院前歩道上の立看板(立看板F)
医学部付属病院から医学部図書館に至る歩道上には、被告により、遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第七号証のとおり、立看板が設置されていた(立看板F)。この立看板には、「郡司出向教授は薬害エイズ死者四〇〇/二〇〇〇に責任を取れ」「郡司氏が米ユナム社よりワイロ」との記載があった(同号証写真@ないしB)。
(五)理学部五号館前の立看板(立看板G)
理学部五号館前路上傍には、被告により、遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第八号証のとおり立看板が設置されていた(立看板G)。この立看板には、「厚生省出向教授郡司篤晃氏は薬害エイズ死者400名に謝罪し責任を取れ」、と記され、さらにそこに貼付されたビラには、「郡司氏とその配下の人々の醜い薬害エイズワイ口隠し」、「郡司氏は300万円のワイロを受け取っていた」との題のもと、「松村氏に先立って薬害エイズヘと国の施策方針を導いた郡司氏は」であるとか、「米国系保険会社から『ワイロ』を収受し」などと記載されていた。
(六)法文二号館前の立看板(立看板H)
法文二号館前には、被告により、遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第九号証のとおり立看板が設置されていた(立看板H)。この立看板には、「郡司出向医教授は薬害エイズ死者400名に責任を取れ!」「郡司氏米社からワイロ受け取り発覚!」などと記されていた(同号証写真B)。
(七)法文一号館前の立看板(立看板I)
法文一号館前には、被告により、遅くとも一九九六年一一月頃から、甲第一〇号証のとおり立看板が設置されていた(立看板I)。この立看板には、「郡司篤晃・医学部教授の薬害エイズ・ワイロ隠しに抗議する」などと記載されていた(同号証写真CないしE)。
三 立看板による名誉毀損・侮辱
右の立看板@ないしIは、いずれも被告が「東大職連」なる名義を用い、その全体としては、短くとも1年半近くにわたって掲出し続けたものである。そして、立看板の内容はつぎの二点において共通したものである。
すなわち、立看板に共通している内容の第一点は、「原告が厚生省薬務局生物製剤課長時代に誤った政策をとり、その結果いわゆる『薬害エイズ』事件を発生せしめたもので、原告には右事件の発生及びその結果四〇〇名が死亡した事実に対して重大な責任が存する」との事実を摘示するものであり、第二点は、「原告がユナム社より賄賂を収受した」との事実を摘示したものである。
右のいずれの点も全く事実に反するものであるが、右の事実の摘示は、いずれも原告の社会的評価を著しく低下せしめるものであるとともに、原告の名誉感情を著しく傷つけるものであることは明白である。
被告によって、このように共通の内容を持った立看板が、同一の団体名で東京大学構内において長期間掲出され続けたことは、被告の右立看板掲出行為全体により、原告の名誉が毀損され、且つ、原告が侮辱されたものと評価すべきである。従って、各立看板の個別の文言自体が違法性を有するものであることはもちろんであるが、それに止まらず、被告の掲出行為全体を併せてその違法性を評価するべきである。
以上を前提に前記各立看板による名誉毀損及び侮辱について述べる。
1、立看板@による名誉毀損・侮辱
立看板@の記載は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果患者1800人を死亡するに至らしめたとの事実を摘示するものである。
右の摘示事実は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長として結果を予見し、または少なくとも予見し得たのにもかかわらずそれを怠り、血友病患者に大量の死亡者を出す政策を実行したというものであり、明らかに原告の名誉を毀損するものである。同時に、このような記事を大きな顔写真とともに職場である大学に掲出されたことにより、原告の名誉感情は著しく侵害された。
なお、原告は厚生省薬務局生物製剤課長の在職中にエイズ(後天性免疫不全症候群)の問題が発生し始めたため、早い時機から危機感を持ち、エイズに関する研究班を組織するなどして迅速・的確な行政的対応を図ろうとしたものであり、従って右の摘示事実は虚偽の事実である。
2、立看板Aによる名誉毀損・侮辱
立看板Aの記載は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果400人を死亡せしめたとの事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものである。
右の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
3、立看板Bによる名誉毀損・侮辱
立看板Bの記載は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果患者1800人を死亡するに至らしめたとの事実を摘示するものである。
そしてさらに具体的に、原告が極めて早い時機に非加熱製剤によるエイズ感染の危険性を十分承知していたにもかかわらず、エイズ汚染製剤が輸入された事実をあえて公表せず、輸入禁止措置もとらず、終始一貫して非加熱製剤の使用を推進して血友病患者を死の危険に晒したとの事実を摘示するものである。
右の摘示事実は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長として結果を予見し、または少なくとも予見し得たにもかかわらずそれを怠り、血友病患者に大量の死亡者を出す政策を実行したというものであり、明らかに原告の名誉を毀損するものである。同時に、このような記事を大きな顔写真とともに職場である大学に掲出されたことにより、原告の名誉感情は著しく侵害された。
なお、原告は厚生省薬務局生物製剤課長の在職中にエイズ(後天性免疫不全症候群)の問題が発生し始めたため、早い時機から危機感を持ち、エイズに関する研究班を組織するなどして迅速な行政的対応を図ろうとしたものであり、従って右の摘示事実は虚偽の事実である。
4、立看板Cによる名誉毀損・侮辱
立看板Cの記載は、原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果400人を死亡せしめたとの虚偽の事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものである。
右の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
5、立看板Dによる名誉毀損・侮辱
立看板Dの記載は、第一に原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その緒果430人を死亡せしめたとの虚偽の事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものであり、第二に、原告がユナム社から賄賂を収受したとの虚偽の事実を摘示するものである。
右の第一の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。そして第二の摘示事実は、原告が職務に関して賄賂をユナム社から収受したとの事実を摘示するものであるから、やはり原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
6、立看板Eによる名誉毀損・侮辱
立看板Eの記載は、立看板Bの記載と同一である。従って、その内容が原告の名誉を著しく毀損し、且つ、原告を著しく侮辱するものであることは立看板Bと同様に明白である。
7、立看板Fによる名誉毀損・侮辱
立看板Fの記載は、第一に原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果400人を死亡せしめたとの虚偽の事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものであり、第二に、原告がユナム社から賄賂を収受したとの虚偽の事実を摘示するものである。
右の第一の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。そして第二の摘示事実は、原告が職務に関して賄賂をユナム社から収受したとの事実を摘示するものであるから、やはり原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感惰を侵害するものであることは明白である。
8、立看板Gによる名誉毀損・侮辱
立看板Gの記載は、第一に原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果400人を死亡せしめたとの虚偽の事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものであり、第二に、原告がユナム社から賄賂を収受したとの虚偽の事実を摘示するものである。
右の第一の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。そして第二の摘示事実は、原告が職務に関して賄賂をユナム社から収受したとの事実を摘示するものであるから、やはり原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
9、立看板Hによる名誉毀損・侮辱
立看板Hの記載は、第一に原告が厚生省薬務局生物製剤課長の職にあったとき、故意または過失により血友病患者に死の危険をもたらす政策を実行し、その結果400人を死亡せしめたとの虚偽の事実を摘示し、原告の「責任」を追求するものであり、第二に、原告がユナム社から賄賂を収受したとの虚偽の事実を摘示するものである。
右の第一の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件における大量の死亡者の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。そして第二の摘示事実は、原告が職務に関して賄賂をユナム社から収受したとの事実を摘示するものであるから、やはり原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
10、立看板Iによる名誉毀損・侮辱
立看板Iの記載は、第一に、原告にいわゆる「薬害エイズ」事件の責任があるとの虚偽の事実を前提にそれを原告が隠蔽しようとしているかの虚偽の事実を摘示し、第二に、原告が賄賂を収受したとの虚偽の事実を前提にそれを原告が隠蔽しようとしているかの虚偽の事実を摘示するものである。
右の第一の摘示事実は、原告には「薬害エイズ」事件の発生につき責任が存するとするものであり、原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。そして第二の摘示事実は、原告が職務に関して賄賂を収受したとの事実を摘示するものであるから、やはり原告の名誉を毀損し、且つ、名誉感情を侵害するものであることは明白である。
五 損害の発生
被告による本件立看板の執拗な掲出により、前項記載のとおり原告は、名誉を著しく毀損され、且つ、名誉感情を著しく侵害された。その結果、原告は筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被った。
右の精神的苦痛を慰謝するに足る金額は、立看板掲出内容の誹謗中傷の程度が極めて強いものであること、立看板掲出が長期に継続したものであること、立看板掲出の場所が多数であること、立看板掲出手続が東京大学における手続を繰り返し破って行なわれたものであることなどの諸般の事情を考慮すれば、各立看板の掲示による損害を合計すると、少なくとも金三〇〇〇万円を下らない。
六 原告の人格権侵害を原因とする謝罪文の交付義務
本件立看板の掲出により、第四項記載のとおり原告の名誉及び名誉感情は著しく侵害された。これによる原告の精神的苦痛を慰謝するには、損害賠償のみでは不十分であり、民法七二三条所定の「適当なる処分」として、被告は原告に対し、別紙謝罪文目録記載の謝罪文の交付をなす義務が存する。
七 結 語
よって原告は被告に対し、民法七〇九条及び同七二三条に基づき、請求の趣旨記載の判決を求め、本訴を提起する次第である。
証拠方法
甲第一号証 写真撮影報告書(立看板 @)
甲第二号証 写真撮影報告書(立看板 A)
甲第三号証 写真撮影報告書(立看板 B)
甲第四号証 写真撮影報告書(立看板 C)
甲第五号証 写真撮影報告書(立看板 D)
甲第六号証 写真撮影報告書(立看板 E)
甲第七号証 写真撮影報告書(立看板 F)
甲第八号証 写真撮影報告書(立看板 G)
甲第九号証 写真撮影報告書(立看板 H)
甲第一〇号証 写真撮影報告書(立看板 I)
甲第一一号証 東大校内図面
添付書類
一 甲号証写 各一通
二 委任状 三通
一九九八年八月二〇日
右原告訴訟代理人
弁護士 弘 中 惇一郎
弁護士 喜田村 洋 一
弁護士 飯 田 正 剛
弁護士 坂 井 眞
弁護士 加 城 千 波
東京地方裁判所 御中
年 月 日
被 告 氏 名
郡 司 篤 晃 殿
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