女性のがん
関東中央病院産婦人科部長 今西由紀夫氏
2001年8月14日 日本経済新聞 夕刊
女性では胃がんに次いで多かった子宮がんも近年は減少ないしは横ばい。検診の普及で早期発見できることが大きい。一方、同じ女性特有の卵巣がんは増加傾向にあるが、「検診が面倒だが、早めに手術をすれば治癒率は高い」と、医療現場での経験を元に今西由紀夫関東中央病院産婦人科部長は言う。
――子宮がんには頸(けい)がんと体がんがあります。
「子宮の入り口に近い部分にできるのが子宮頸がん、胎児が宿る子宮体部にできるのが体がんです。以前は頸がんの患者が95%、体がんの患者が5%の割合といわれましたが、今は体がんが増えています。私たちの病院では、頸がんと体がんの比率は7対3といったところです」
「全体として子宮がんは減る傾向にあります。これは検診の寄与が大きい。がん検診にはいろいろな意見がありますが、特に頸がんについては大いに意味があります。膣(ちつ)から器具を入れて頸部の細胞を採取して診断するのですが、非常に初期の段階で発見できます。早期発見ができれば5年生存率は95%以上と、治癒する可能性が高いのです。30歳を過ぎたら恥ずかしがらずに受診した方がよいでしょう」
「体がんは検診で見つかる例はあまりありません。自覚症状もほとんどありませんが、閉経後の不正出血があると要注意です」
閉経後に多い体がん
――原因は何ですか。また、治療法はどんなものがありますか。
「頸がんにはある種のウイルスが関係しているといわれていますが、すべてがそうであるとは言えないでしょう。ただ、性体験のない女性にはほとんど見られないことから考えますと、性生活が関係している面は強い。その意味では男性側にも原因があるのかもしれません」
「体がんは発症年齢層が頸がんより少し高く、50歳代以降の閉経後に多く見られます。これは体がんが女性ホルモン依存性であることと関連があります。排卵が規則正しい人や、妊娠・出産が多い人は子宮体がんになりにくい。また、肥満は体がんの危険因子ですが、体がんの割合が多くなっている背景にはこれを助長する生活の欧米化があります」
「治療には手術が最もよいでしょう。体がんでは出産することが少ない年齢層の人の場合は子宮を全部取ってしまいます。妊娠を希望する人では手術法を工夫します。頸がんの初期の場合は開腹しないですむ円錐(すい)切除術ですむことが多く、手術も患者の肉体的な負担が少ない縮小手術をとることがあります。周囲への浸潤や転移が進んだ段階のものは手術が難しく、放射線や抗がん剤での治療を行います」
発見難しい卵巣がん
――同じ婦人科領域として卵巣がんで亡くなる人も多いと聞きます。
「全体としてそれほど多くはありませんが、私たちの病院でも患者は増えているという印象をもっています。原因は不明であり、20歳代から見られるというように患者の年齢層も広いのです。卵巣はおなかの奥の方にあり、自覚症状もほとんどなく発見も難しいのです。超音波による検査が有効ですが、進行が速くなかなか初期の段階ではとらえられません」
「卵巣がんでは抗がん剤をよく使います。最近はよい抗がん剤がでており、効果をあげています。がんが卵巣にだけある段階では手術が有効です。大事をとって二つとも切除した方がいいのですが、若い人の場合には将来を考えて片方に限って切除します」
(聞き手は編集委員 中村雅美)
子宮頸がんと体がんではがんになる細胞が異なる。頸がんの場合は95%がへん平上皮がんと呼ばれるもので、残りが腺(せん)がんである。一方、体がんではほとんどが腺がん。一般に腺がんは放射線の効果が小さいと言われる。
体がんは子宮体部にある子宮内膜の細胞ががん化する。このため、体がんは子宮内膜がんと呼ばれることがある。子宮内膜は月経時にはがれ落ちてしまう。また、30歳代以降に見られる子宮筋腫(きんしゅ)は子宮の筋肉にできる良性のもので、これが子宮がんになることはない。