片平教授の「意見書」

 乙174号証

2001年6月21日

依 頼 書

東洋大学教授  片 平 洌 彦  殿

弁護士 新美 隆

弁護士 虎頭昭夫

弁護士 藤田正人

弁護士 保田行雄

 東京高等裁判所平成12年(ネ)第6021号 損害賠償請求控訴事件の争点に関連して、貴殿の御意見をいただきたく御照会申し上げます。

1.郡司篤晃氏が厚生省生物製剤課長在任中の1982年8月から1984年7月頃までの間、輸入非加熱製剤の使用によりエイズ感染の危険性を示す情報・指摘はありましたか。

2.輸入非加熱製剤の使用を禁止した場合、クリオ等の代替製剤の確保は可能だったのでしょうか。

3.輸入非加熱製剤の使用を中止した場合、血友病患者の治療や生活にどの様な影響がもたらされたと考えますか。

4.「薬害エイズ」事件について、厚生大臣は、薬事法に基づいて輸入血液製剤の使用停止等の処置をとることは可能だったのでしょうか。可能だったとして、いつ頃、どの様な処置をとることが可能だったと考えますか。

5.薬害エイズ事件に関して、厚生省(当時)の中で、生物製剤課長(当時)の役割・責任についてはどの様に考えますか。また、郡司篤晃元生物製剤課長の1996年7月の国会での証言については、どの様に評価されますか。

以上


 
乙175号証の1

                          2001年7月4日

弁護士 新美 隆 他三氏 殿

                  東洋大学社会学部教授 片平洌彦(きよきこ)

「依頼書」のご質問について

. 1982年8月から1984年7月頃までの間、輸入非加熱製剤の使用によりエイズ(HIV)感染の危険性を示す情報・指摘は、米国及び日本において存在していました。そして、時間の経過とともに、そのエビデンス(根拠)の科学性は明らかにされていったと言えます。しかも、そうした情報を、関係企業と厚生省は、患者や一般人が知るよりも早く入手していて「知っていた」ということが言えます。このことについては、筆者の著作のうち、特に「構造薬害」と「ジュリスト」論文において詳述しました。

. 輸入非加熱製剤の使用を禁止しても、その代替製剤は「クリオ」(血友病A)、「国産濃縮製剤」(血友病A,B)、「加熱製剤」(血友病A,B。1983年に米国で承認され、その緊急輸入も厚生省が決断すれば不可能ではなかった)があり、その確保は不可能ではなかったと言えます。このことについては、筆者の著作のうち、特に「ジュリスト」論文において詳述しました。

. 輸入非加熱製剤の使用を中止しても、前記のように代替製剤があり、その確保が不可能ではなかったので、血友病患者の治療や生活には、多少の不便やトラブルはあったとしても、治療が出来ずに死亡するなどの事態には至らなかったと考えられます。すなわち、「輸入非加熱製剤は『血友病患者の命綱』であった」というように言う事はできないと言えます。このことについても、筆者の著作のうち、特に「ジュリスト」論文において詳述しました。

. 厚生大臣は、薬事法56条、同69条に基づき、輸入非加熱製剤の使用停止等の措置をとることは十分可能でした。そして、その措置を取ることは、米国で血友病患者にエイズが発症し、その原因として血液製剤に疑いがかけられた1982年7月には可能でした。仮にこの段階では可能とは言えないとしても、遅くともトラベノール社から「血液製剤回収」の報告が郡司課長宛に文書で伝えられ、安部医師が「帝京大症例」をエイズと報告した1983年6−7月には十分可能であったと言えます。このことについては、筆者の著作のうち、特に「構造薬害」において詳述しました。

. 生物製剤課長は、血液製剤の輸入・販売使用を厚生省として認めるか否かの中心的役割を果たす地位にありますから、薬害エイズ事件では、上司の薬務局長や厚生大臣とともに、その責任は極めて大きいと言えます。そうした地位にあった郡司氏が、前記のように1983年当時適切な権限行使を行わず(あるいは、そのようにするよう上司に働きかけず、と言った方が良いのかもしれませんが、その真相がまだ未解明です)、その結果日本の血友病患者多数をHIVに感染させることになったのは、否定できない歴史の事実です。

 このことに関連して、郡司氏は1996年7月に国会で「1983年のトラベノール社の回収報告はかなり後になって知らされ、エイズ研究班には知らせなかった」旨証言しています。ところが、このことは事実と異なる(事前に知らされており、研究班にも報告していた)ということを、1998年6月の松村明仁被告刑事訴訟の公判において、当の郡司氏自身が明言しています。従って、この裁判所での証言が正しければ、上記の国会証言は真実でないことを述べたことになり、偽証の疑いがあると言わざるをえません。

 以上のことにつき、貴裁判所が真実を解明され、郡司氏の国会や裁判所における証言の信憑性につき的確にご判断下さることを、薬害問題の一研究者として期待しております。

                             以上

  乙175号証の2

片平教授の履歴書(略)

  乙175号証の3

「構造薬害」より
(片平洌彦著、農山漁村文化協会、1994年)

  乙175号証の4

「ジュリスト」より

  乙175号証の5

1996年7月の国会における「薬害エイズ」審議

郡司篤晃証人の「偽証告発」についての要請


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