大学院、情報学結集へ新組織
来春、修士学生受け入れへ
任期定め各部局から教官参加
「実践コース」も設置
1999年9月14日 東京大学新聞
大学本部は、学内の各部局(大学院研究科・研究所)で行われている情報関連の研究教育分野の結集を目指して検討を進めてきたが、来年4月に新組織「総合情報学環」が大学院に設置される見通しとなった。8月末に文部省が大蔵省に提出した2000年度予算の概算要求に、関連経費が盛り込まれた。計画によると総合情報学環は、所属教官が固定している従来の大学院研究科と異なり、他部局の教官が任期を定めて参加する流動性の高い組織となる。また、他研究科の授業を「指定授業科目」とするなど、既存部局と連携したネットワーク型組織を目指す。修士課程は来春から学生を受け入れる予定で、社会人の再教育を視野に入れ、実践的な教育を行うコースも設ける。(編集部・西健太郎)
総合情報学環は、研究組織「情報学環」と教育組織「学際情報学府」から成り、@学環の教官は、他研究科から時限付きで異動する「流動定員」で多くをまかなう。学府の教育は学環の教官が主に担うがA他研究科の教官にも学府の授業を担当してもらいB学府では他研究科の授業科目を「指定授業科目」とする。また、C流動定員の教官の一部は元の研究科の授業も担当し、D学府の授業は他研究科の学生にも開放するなど、既存部局と連携したネットワーク型組織を目指す。
社会人の再教育も
総合情報学環は、教官が所属する研究組織「情報学環」と、学生が属する教育組織「学際情報学府」とから成る=図。社会、人間、表現、システム、生命などの側面から、「情報」をめぐる文理横断型の教育研究を行う。
情報学環は、所属教官が固定している基幹定員は小規模にとどめ、多くは既存部局から時限付きで振り替えられる流動定員とする。流動定員の教官は3−7年程の任期を設けて既存部局から異動し、期間終了後は元の部局に戻る。教官定員は、教授16人、助教授16人、講師2人、助手9人の計43人の予定。このうち28人が流動定員となる。
大学本部では、各部局に情報学環への参加を求めていたが、最終的に、理学系、工学系、医学系、教育学、総合文化の各研究科と、社会情報、社会科学、東洋文化、生産技術、史料編さん所の各研究所の教官が移動することになった。情報学環では、学際情報学府の学生や、他部局の教官らと共同して、研究プロジェクトを進める。
一方、学際情報学府の学生定員は修士課程37人、博士課程16人。修士は年明けにも入学者募集要項を発表し、4月頃に入試を行うとみられる。博士課程の学生受け入れは2002年から始める。
情報学府には、研究者養成を主目的とした「学際情報学コース」(学生定員16人)と、高度実務者を育てることを目指した修士課程のみの「実践情報学コース」(同21人)を設ける。後者は情報関連の実務経験がある社会人を積極的に受け入れる方針だ。
情報学府の授業科目(90科目)の半数程度は、他研究科の情報関連の科目を自由選択の「指定授業科目」とすることでまかなう。また、学府独自の科目も、一部は他研究科の教官に開講してもらうなど、既存研究科と連携して教育に当たるようにする。一方、情報学環の流動定員の教官の一部は、出身部局での教育を引き続き行うほか、全ての教官がこれまで通り学部教育を担当する予定だ。
学府の授業としては、課題研究や研究・論文指導のほかに、「情報メディア史」「情報経済・産業論」「生命体情報学」といった科目が検討されている。
従来、大学院には研究科しか置くことができなかったが、今年5月に学校教育法が改正されて、別の組織も置けるようになっていた。九州大学でも、来年度から大学院を全学的に改組し、研究組織の「研究院」と教育組織の「学府」に分ける計画だ。
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東大には現在、10の学部にほぼ対応する形で、12の大学院研究科がある。工学部に工学系研究科、文学部に人文社会系研究科といった具合だ。一方、数理科学研究科や新領域創成科学研究科は、1対1で直接対応する学部をもたない独立研究科だ。 大学院重点化以前は、教官は学部に所属し、大学院研究科に出向いて院生の指導に当たっていた。しかし、重点化によって、それまで教育組織であった研究科が教官組織にもなった。その結果、ある研究科の教育に他部局の教官が協力しにくくなったという指摘があり、また、新領域のような従来の枠組みを超えた研究科をつくるには教官の異動が必要だった。総合情報学環が、教官組織と切り離して教育組織を設けたのは、部局を超えた柔軟な大学院教育を目指す試みといえる。 |
理・工 計算機科学5専攻、独立研究科に再編
2001年度から
「総合情報学環」構想の一環として、2001年度に理学系、工学系両研究科の計算機科学関連の5専攻を「情報科学研究科」に再編する計画も進んでいる。学際情報学府と同研究科との間では「副専攻制」が導入される予定だ。
再編の対象となるのは、理学系研究科の情報科学、工学系研究科の計数工学・情報工学・機械情報工学・電子情報工学の5専攻。理学部の情報科学科や工学部の計数工学科などはそのまま残るため、新研究科は直接対応する学部を持たない独立研究科となる。
学際情報学府では、惰報科学研究科を念頭に置き、他研究科の情報学関連専攻との間で、二つの専攻を同時に修了できる副専攻制を導入するとしている。計画によると、情報学府の学生は、学府と協定を結んだ他研究科の情報学関連専攻の単位を「副専攻」として選択できるようにし、逆にその研究科・専攻の学生も、学府の単位を副専攻として選べるようになる。
理・大学院、来春 4専攻統合へ
地球惑星物理、地質、鉱物、地理
研究の学際化へ対応
1999年9月28日 東京大学新聞
大学院理学系研究科は来春、地球惑星物理学、地質学、鉱物学、地理学の4専攻を統合した「地球惑星科学専攻」を新設する。4専攻は研究手法によって分かれているが、扱っている対象には重なる部分が多く、手法の異なる研究者が連携した学際プロジェクトも盛んに実施されている。新専攻は、幅広い視野を持った人材を育てることを目指す。また、大学院生の出身学科や卒業後の進路が多様化していることに対応した教育を行うのも狙いだ。
地球惑星科学専攻の新設は、8月末までに決まった文部省の2000年度予算概算要求に盛り込まれており、学生定員は修士課程108人、博士課程53人の予定。教官数は教授・助教授合わせて40数人になる。同研究科の来年度入試は、4専攻に分かれて9月初めに行われたが、合格者は新専攻に所属することになる。
計画によると、新専攻はこれまでの4専攻を対象領域ごとに大気海洋科学、宇宙惑星科学、地球惑星システム科学、固体地球科学、地球生命圏科学の5つの大講座に再編する。手法を超えた学際プロジェクトを中心となって担う研究者を育てることを目指す。
また、これまでは院生の論文指導は一人の教官が担当することが多かったが、新専攻では複数の教官によるクループ指導制を取り入れ、指導が狭い専門性に偏らないようにする。
最近の大学院生の多様化に対応するのも目的の一つだ。大学院重点化後は院生の定員が増加し、他大学や他学科の出身者も多くなっている。博士謀程に進まず、企業や官庁に就職するケースも増えた。そこで、新専攻では、入門的な内容を教える「一般基礎科目」を履修できるようにする。また、就職した場合は、幅広く地球惑星科学を学んでいた方が役立つとの判断から、研究者志望でない学生には、修士論文には高度な専門性は求めず、ある分野やトピックの研究動向をまとめたものも認める方針だ。
ロースクール試案
法曹コース設け教育
法・ワーキンググループ
既存の制度を利用可能
1999年10月5日 東京大学新聞
大学院法学政治学研究科・法学部(佐々木毅研究科長・学部長)は9月20日、弁護士会館(千代田区霞ヶ関)でシンポジウム「法曹養成と法学教育」を開催した。この中で法曹養成大学院(ロースクール)について、同研究科内のワーキング・グループ(WG)が考案した構想を公表した。WG案では、大学1・2年で憲法や法哲学などの基礎分野を、3・4年では新たに法曹コースを設けて司法試験科目を中心に、さらに大学院修士課程において応用法学分野や模擬裁判・演習を行うようにする。東大WGがロースクール構想の叩き台を出したことで、法曹養成のあり方に関する議論が高まりそうだ。
ロースクール構想は、社会構造の変化によって訴訟件数の増加し、法曹人口の増加が求められるようになったことや、法律問題の複雑化に対応できる人材を育成する方法として持ちあがった。今回のシンポジウムはこうした議論に対して大学側から意見を表明することを目的として開かれた。東大WG案は、従来議論されていた「アメリカ型構想」と「日本型構想」の欠点を補い、学部・大学院双方で法学教育を行うこと、学部教育は学部で完結するため、既存の大学制度・・司法実習制度を発展させた形で実施できる。
アメリカ型構想では、学部において4年間の教養教育、さらに大学院修士課程で2年ないし3年にわたり専門教育を受けた者が司法試験の受験資格を得る。司法試験は大学院教育の確認試験といったレベルの内容にする。合格者は全員弁護士または研修弁護士となり、裁判官・検察官は弁護士で5〜10年間の経験者から任用するというシステムで、法曹一元化がなされている。しかしこの案を実現すると、裁判官、検察官および裁判実務を担当する弁護土は、司法試験合格後も修習が必要になってしまう。また、4年間の教養学部を設けるというのはアメリカの学制にならったものであり、大学全体の制度の変更もしくは「法学部の教養学部化」を要求する点で実現が難しいといわれる。
日本型構想は、全国大学法学部の内20校程度に「法曹養成コース」を置き、学部4年生段階から大学院修士課程とあわせて3年問の一貫教育を実施する。大学院入試はコースを設けた大学間での共通試験と内部試験の2元で行う。大学院では理論教育を重点的に行い、司法試験合格後は司法研修所で実務研修を行う。この案は既存の制度を利用しているため移行がスムーズだが、学部段階で教育が完結しないことや、他大学からの大学院進学と内部進学がある関係上、選抜試験が複雑化するのが難点だ。
同構想が実現した場合、全国93法学部・73法学研究科の中から20程度をロースクールとして改組し、卒業生が法曹界の中心となる。しかしこれはロースクールを擁する法学部をエリート化し、多様な人材の法曹参加を阻害するのではないかとの懸念もある。これに対してシンボジウム中、奥島孝康・早稲田大学総長は、同構想は、現在の司法試験合格者が特定大学に寡占されている状況を緩和できるとの見解を示した。
東大WG案を出した「法曹養成と法学教育に関するワーキンク・グループ」は菅野和夫教授(労働法)を主任に、今年春からロースクール構想の検討を行ってきた。メンバーは菅野教授のほか伊藤眞教授(民事訴訟法)、能見善久教授(民法)、長谷部恭男教授(憲法)、山口厚教授(刑事学)、山下友信教授(証券取引法)。
工学部、システム創成学科を新設
1999年10月12日 東京大学新聞
工学部では来年度から、精密機械工学、船舶海洋工学、システム量子工学、地球システム工学の4学科を統合改組し、「システム創成学科」を新設する。「科学技術が人間や社会、自然との調和ある発展を図るには、従来の細分化された領域工学的な知識だけでなく、それらを組み合わせて総合的に捉える『システム創成』的なアプローチが必要」との考えから新学科の創設に踏み切ったという。新学科は来年の4月に発足、来秋の進学振り分けから募集を姶める予定だ。(編集部・村澤 良)
来秋進振りから学生募集
新学科は、
@経済学的手法も取り入れ、自然と人・人工物が調和した持続可能なシステムの創成を目指す「環境システム」
A人間と資源・エネルギーとの関わりなどの地球規模の問題を社会システム科学的に分析・評価する「エネルギーシステム」
Bプラズマ・素粒子・レーザーなど物質と光の先端的ミクロ原理を応用した新しい創造のための方法論を学ぶ「設計物理」
C素材・製造・使用・保守・廃棄におよぶ製品のサイクルにおける、様々な情報を生成・運用する理論や技術を扱う「設計情報」
D医用福祉機器、生体計測機器、情報機器などに関する、「より人にやさしい技術」を開発する生体情報」
E経済・社会・心理などにも配慮しつつ、科学技術的知識に基づいて社会的決断ができるリーダーの育成を目指す「知能社会システム」−の6コースが設けられる。工学の領域に限定されず、経済や政策なども視野に入れた新しい工学を目指すとしている。
カリキュラムは「広い視野を持つ」技術者の養成を目指して構成されており、学生は学科共通項目である基礎工学・汎工学において広く工学の教育を受けると同時に各コースに分かれての領域工学を学ぶ。各コースで小人数のプロジェクト演習を行い、プランニングやケーススタディ、フィールドワークを扱う。教官を民間や行政関係者からも募って幅広い教育を行う考えだ。
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2年生冬 (12〜13コマ) |
3年生夏
(15〜17コマ) |
3年生冬
(15〜17コマ) |
4年生夏
(15〜17コマ) |
4年生冬
(10コマ) |
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| プロジェクト: プロジェクトを通して 種々の分野を学習する (2コマ以上) |
・動機付けプロジェクト (2コマ) ものこわし 文献調査 ネット検索など |
・基礎プロジェクト (2コマ) 比較的短期間 (2〜3遇間単位) ・輪講、実験 ・問題の検索など |
・応用プロジェクト (2コマ) 少し長めの期間 (l〜2ケ月単位) |
・領域プロジュクト (ミニ卒論)(4コマ) ・設計演習 ・ デベートなど |
・研究プロジェクト (卒業論文) (10コマ) |
| 領域工学: 複数のコースで共 通もしくはコース 別の講議 |
・エネルギー環境 システム概論 ・素粒子・原子核 概論など |
・調和システム論 ・レーザー工学 ・生体計測工学 ・機械デザインなど |
・地下空間開発論 ・信号処理工学 ・生産システムなど |
・環境政策論 ・システム設計論 ・福祉工学 ・技術政策論など |
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| 講議+プラクティス: 広い範囲の基礎を プラクティス付き で学習する |
・統計・データー解析 ・運動と振動 ・伝熱・熱力学 ・変形と流れなど |
・制御工学 ・システム制御 ・材料力学 ・ツールとしての 計算機1など |
・計算物理 ・流体力学 ・ツールとしての 計算機2など |
・複雑系の数理 ・環境アセスメン ト学など |
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| 汎工学: 学科共通 |
・システム創成学概論 |
・技術と社会 ・生体・生命 |
・設計学 ・エネルギー環境学 |
・安全学 ・経済概論 |
新学科としての募集は2001年度進学振り分けから始める予定で、現1年生が第1期生となる。学科の規模が大きいため、振り分け部門はいくつかに分けることを検討している。
原点に戻り物づくりを
新学科の設立準備に当たっている船舶海洋工学科・宮田秀明教授の話
「工学部全体の方針として、学部教育では専門に限定せず、『工ンジニアとしてのリベラルアーツ』を教えるようにし、また環境問題に配慮するなど、産業界に限らず社会の二ーズにあった工学を目指そうとしている。システム創成学科は、その先頭に立つ学科といえるだろう。個人的には、新学科では工学の原点である『物づくり』に戻り、物に対するセンスを持った創造的なエンジニアを育てていきたいと考えている」