小中高で到達度評価

中教審答申、教育方法の改善狙い

1999年12月17日 読売新聞朝刊


 文相の諮問機関「中央教育審議会」(中教審、根本二郎会長)は16日、高校教育と大学教育の連携について、中曽根文相に答申を提出した。各大学が求める学生像を「入学者受け入れ方針」(アドミッション・ポリシー)として示し、この「方針」に必要ならば、大学入試で受験科目の増加を容認する考えを打ち出した。また、大学生の学力低下が問題になっていることなどから、小、中、高校が各段階で、教育目標に対する児童・生徒の到達度評価を行い、文部省も学力の実態調査を行うよう求めた。

 文部省では答申を受け、高校と大学の連携などについては2000年度から、大学入試は2001年度入試から改善を促す考えだ。今回の答申の表題は、「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」。

 少子化や大学進学率上昇に伴い、大学などが学生を「選抜」する時代から、学生と高等教育機関が相互に「選択」する時代へ移行すると指摘した。

 大学入試対策として、各大学に「受け入れ方針」を明示させるのも、偏差値に基づいた学校選択を改め、興味や関心に応じた選択を促すのが狙いで、大学が学部、学科ごとに学生に求める適性や能力を公表し、多様な入試を行うべきだとしている。高校進学希望者は、全員を高校全体で受け入れていくよう提案している。

 小、中、高校での到達度評価は、各学校の教育方法の改善に役立ててもらうのが目的。大学教育は、教養教育を重視するよう求めた。(解説2面、答申の要旨5面)

 解説  

大学、高校側の意識変革求める

−中教審答申−

 中央教育審議会がまとめた答申には、法律や省令の改正を迫る提言は盛り込まれなかった。これを踏まえて文部省が来年度、実施することは、センター試験で英語のリスニングテストを導入できるかどうかや、小、中、高校生を対象にした定期的な学力の実態調査を行うための検討を始める程度で、現行制度の枠内の改革案にとどまったと言える。大学入試改革にしても、どれだけ実現できるかは、各大学の判断次第でもある。しかし、高校、大学が「全入」時代を迎えようとしている中で、高校進学率40%、大学進学率が10%前後だっだ戦後間もないころと同じ意識で「選抜」を建前としている受け入れ側の意識を変革させよう、という意義は大きい。

 大学に対しては、大学入試を「選択」の場と位置づけ直し、自らのポリシーを「入学者受け入れ方針」として明確に打ち出すことを求めている。高校には、成績が一定レベルに達しない受験生を不合格にする「適格者主義」を改めるよう促している。どちらも、少子化社会を踏まえ、知識偏重の今のままの入試を続けていれば、いずれは受験生から見放され、高校や大学がつぶれる時代がくるのだ、という警鐘を鳴らしたものと言える。

 答申は、大学改革の具体的な手法のほとんどを、大学人を中心とした大学審議会の検討にゆだねた。同審議会に配慮したためだが、今後は、大学人が、身内の改革にどこまで踏み切れるかもカギとなる(政治部 尾山宏、本文記事1面)

中教審答申の概要

 中央教育審議会がまとめた高校教育と大学教育の連携に関する答申の主な内容は次の通り。(本文記事1面)

 ◆検討の視点

 大学進学の「受験戦争」は緩和される方向に進む。求める学生を見いだそうとする大学側の取り組みと、能力・適性に基づいた学生側の大学選択との「相互の選択」をどうマッチングさせるかが重要となる。

 大学教育は教養教育を重視し、社会生活を送るうえで必要な知識や倫理観を養うことが必要。

 ◆初等中等教育の役割

 大学進学率の上昇に伴い、平均的学力の低下は避けられない。しかし、大学生の学ぶ意欲が落ちているという指摘を踏まえ、その原因の分析、対策の研究を進める必要がある。

 高校は、進学希望者全員を高校全体で受け入れられるよう受験機会の整備に努める。

 小、中、高校の児童・生徒が、各学校段階での教育目標を達成しているかどうかの到達度を評価することは、教育上の責務。児童・生徒に新たな負担を課すことなく、各学校の教育の中で評価を行っていく。客観的な評価基準を国立教育研究所などで研究する。

 ◆高等教育の役割

 学部段階は、特定分野の完成教育よりも、基礎・基本を重視する。専門性の向上は大学院で行う。

 高度な職業専門人の養成に特化した大学院の設置を促進する。

 ◆初等中等教育と高等教育との接続の改善のための連携の在り方

 大学が高校生向けに夏休みなどを利用して集中講義をしたり、高校側の協力を得て大学生に補習授業を行うことも考えられる。

 大学関係者と高校関係者が情報交換する連絡協議会などの開催を推進する。

 高校の進路指導を充実させ、進学か就職かだけでなく、ボランティア活動や国際交流体験なども進路の選択肢。

 大学では卒業後の進路選択を見据え、履修の相談、指導を行う指導教官制(チューター)を入学時から導入することを検討する。

 ◆初等中等教育と高等教育との接続を重視した入学者選抜の改善

 各大学が学部・学科の教育理念、目標に即して学生に求める資質、能力を「入学者受け入れ方針」(アドミッション・ポリシー)として示し、それに沿った入試を目指す。受験教科・科目数は、削減の方針をとらない。

 各大学が、大学入試センター試験の利用方法を工夫する。一定の水準に達していれば2次試験は学力試験を課さないといった方法や、「一点刻み」にこだわらず、同試験の結果を成績別に分け、グループごとの2次試験を実施することも考えられる。

 教科横断型の総合問題や英語のリスニングテスト導入を検討する。

 ◆学校教育と職業生活との接続

 企業が学生を採用する際、学生の属する大学の教育目標などを考慮することが望まれる。

 

センター試験、資格試験化を検討へ

文部省、複数回実施も議論

1999年12月17日 朝日新聞朝刊


 高校と大学教育の連携などを検討してきた文部省の中央教育審議会は16日、最終答申を文相に提出した。先月の中間報告を踏まえた内容で、一点刻みの学力競争でなく、本当に適性がある学生を選抜できるよう入試を改善することなどを盛り込んだ。これを受けて文部省は、大学入試センター試験を中心にした入試制度改革の検討に入る。センター試験をいわば「資格試験」化し、必要最低限の学力を確認する手段にとどめることなどが検討課題だ。また、大学進学者の学力が多様化していることから、センター試験の難易度を変えて複数回実施することの可否も議論するという。(3面に最終答申の骨子)

 近く、大学審議会で議論を始めるが、早ければ2001年度の入試から改革が始まる。

 センター試験の「資格試験化」については、「成績が一定水準なら、後は学力試験以外で合否を決める」といったやり方を議論する。ただし、従来の学力競争型の入試も否定はしないとしている。

 センター試験の複数回化は、受験学力が比較的低い志願者を念頭に浮上したという。現在のセンター試験は「エリートを対象にした出題内容になっている」という指摘がある。より幅広い大学、受験生が参加できるようにするため、比較的やさしい出題の試験を別に設ける、という考えだ。


中教審最終答申の骨子

 ●今後の大学入学者選抜は、「求める学生を見いだす」(大学)、「能力・適性に応じて主体的に大学を選ぶ」(学生)という相互選択が重要

 ●大学は入学者受け入れ方針を明示し、選抜方法や出題内容に反映させることが重要。
   受験生は大学の教育理念、特色などに応じて選択することが必要

 ●高校と大学の相互理解のため連絡協議会を開催

 ●大学入試では、良質な問題を出題するという観点から過去の問題の再利用も必要

 ●大学入試センター試験利用大学の個別試験の受験科目を削減すべきだ、という従来の方針はとらない

 ●センター試験では資格試験的に利用するなど多様な利用が望ましい

 ●センター試験では外国語のリスニング(聞き取り)テストを検討。教科横断型の総合問題を研究。

 ●大学の学部教育では教養教育を重視し、幅広い教養や倫理観、豊かな人間性を身につけさせることが必要

 ●児童・生徒の教育目標の達成度評価を各学校の責務で行うべきだ。評価基準、方法を研究する。

 ●高校進学希望者を全体で受け入れられるよう、適切な受験機会の提供や条件整備につとめる
 

 


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