文部省、5大学連合を「高く評価」
構想具体化へ協議
学長らと初会合 独立維持など確認
1999年11月10日 日本経済新聞朝刊 38面
一橋、東京工業、東京外国語、東京医科歯科、東京芸術の有力5国立大学の学長が実現を目指している「5大学連合」をめぐり、5学長と文部省首脳との初会合が9日午後、東京都内で開かれた。関係者によると、出席した同省首脳は「いいプランであり、できるだけ支援していきたい」と同構想を高く評価した。5学長は今後、事務担当者らも交え構想の具体化へ向けた協議を本格化させる方針だ。
構想具体化へ協議
学長らと初会合 独立維持など確認
連合構想は、学生間の交流の活発化や柔軟な教育プログラムの提供を目的として、東京都内にある5大学が教養教育の共同実施や、編入学・学士入学の相互受け入れ、授業の履修を認め合う単位互換などの連携を目指すもの。
この日の会合では、まず構想について、「各大学とも学内ではおおむね好意的に受け止められている」ことを確認した。その上で、5大学が合併、統合するのではなく、独立したまま事業を進める「連合」の形態や検討事項について学長側が文部省側に説明した。
事業内容は各大学の特性を考慮し、協力できる範囲で対応していくことも関係者間で了承。実施に際しては事業内容をコーディネー トする事務局の必要性についても意見交換した。
構想について、文部省側は「(5大学内だけでの)転・編入学の法律的な問題はないだろう」などと発言。実施時期をめぐって学長からは「できれば2001年度から実施したい」「自主的な改革としてやれるところから取り組みたい」との声も上がったという。
構想の具体化へ向けては12月初旬に、事務長や学生部長なども交えた実務者レベルの会合が開かれ、関係者間で事業内容を詰めた上、来年1月には各学内での本格論議に移るものとみられる。
中曽根弘文文相は9日の衆議院文教委員会の答弁で連合構想について触れ、「学内での議論も必要だが、一般論で言えば単位互換などで相互の連携を深めることは、教育・研究を深めるもので、方向として望ましい」と一定の評価をした。
他国立大、推移を見守る
好意的:単科大の連携「ざん新」
危機感:「地方では無理」戸惑い
独立行政法人化問題をはじめ、改革の渦中にある全国の国立大学が、東京の有力5国立大学の連合構想の推移を注視している。「単科大学が連携し、足りない部分を補い合うという発想はざん新だ」と評価する声がある半面、地方の国立大学の中には、構想を本格的な大学の合従連衡時代の到来を告げるものととらえ、生き残りに危機感を募らせるところもある。
「さすがに東京は時代の流れに敏感だな」。広島大学の生和秀敏副学長は連合構想についてこう感想を述べた上で、「5大学は東京にあって、領域が違うから連合に無理がない。単科大学の連合という形は大学間の一つの連携の方法としてありうる」と評価する。他大学の学長からも、「いい発想だ」といった好意的な発言が目立つ。
ただ、東京で始まったこうした動きに地方の国立大学を中心に戸惑う学長がいるのも事実。東日本のある単科大学の学長は「他大学と距離が離れすぎていて東京のようにはいかない」と話す。西日本のある単科大学の学長も「大学の存亡をより真剣に考えざるを得ない。成り行きを注目したい」と慎重な口ぶりだ。
18歳人口の減少などに加え、独立行政法人化問題を抱える国立大学には、「99ある国立大が、そのまま99の法人になることはできない。魅力的な提携相手がいない大学は淘汰(とうた)もやむを得ない」(西日本の総合大学の学長)といった生き残りへ向けた強い危機感がある。文部省の佐藤禎一事務次官は「これからの大学行政は、従来のような護送船団方式は成立しない。どのようなサービスが社会に提供できるかが大学経営の重要な課題となっており、構想は国立大のあり方のモデルケースとなりうる」と強調する。
大阪大学の岸本忠三学長は「旧帝大も部局間の連携を見直し、良い部分を今以上に活用しなければならない。連合構想は大学が活性化し、競争力を高めることへ向け一石を投じた」と指摘している。