1999年9月14日 東京新聞朝刊
国立大学協会(会長・蓮実重彦東京大学長)の臨時総会が13日、東京都千代田区内で開かれ、国立大学の独立行政法人化について検討していた第一常置委員会(委員長・阿部博之東北大学長)の中間報告が基本的に了承された。国大協では現在ある枠組みのままでの独法化に反対する姿勢を崩していないが、独法化への流れは食い止められないどの見方が強い。今後は、報告で求めた修正点を立法化の際にできるだけ盛り込むよう、文部省などに求めていくことになりそうだ。
総会では、各大学長から報告の内容説明を求める質問や問題点の指摘、追加の書き込み要求などが相次いだ。各大学の実情を訴える学長もいたが報告への反対意見はなかった。
中間報告は、前文が大幅に削られたほかは、ほぼ小委員会の最終原案通りだった。「独立行政法人通則法を見る限りでは、撒回ないし変更する理由は見あたらない」と、1997(平成9)年の反対表明を維持することをあらためて表明。「常置委員会レベルとはいえ、見解を早急に発信することに意義がある」と、急いだ理由を説明した。
そのうえで、通則法の根幹部分について修正を盛り込む必要があると指摘。通則法に付随する個別(設置)法では足りず、大学の理念や特質に照らして通則法の特例を定める「大学独立行政法人特例法(仮称)か、大学独自の「国立大学(法人)法(仮称)」を制定すべきだとした。
3−5年の中期目標を主務大臣が指示する点などについては、長期計画での位置づけが必要だとし、大臣の関与が大学の自主性を損なってはいけないとした。
さらに、日本の高等教育予算が欧米より著しく少ない点にも言及。定員・経費削減優先では「教育研究の質的低下を招く」と批判し、一般会計とは別枠の国立学校特別会計を維持すべきだとした。会計制度を見直す場合でも、現在の債務を引き継ぐことがないよう要請。学長人事は、現行通り「大学内部の意思」に基づく選考を求めた。
解説 将来への禍根を懸念
国立大学の独立行政法人化問題で、国立大学協会の委員会がまとめた中間報告が臨時総会でおおむね了承された。文部省も20日に独自案を出す予定で、独法化への流れは各国立大が好むと好まざるとにかかわらず加速してきた。
先の国会で成立した独立行政法人通則法は、大学の自治や学問の自由を狭める恐れなど問題が指摘されている。中間報告は、そうした問題点をほぼ網羅、独法化するならここまでは認めてほしいという国立大学の言い分を列挙したものだ。
こうした「願望」がすべてかなうとしたら、国立大の独法化には、ほとんど問題がなくなる。それどころか、予算をより柔軟に使えることなど、国立大にとってプラスの要素も多い。
だが通則法を骨抜きにするような要求がそのまま通ると考える人は、文部省や国大協内部でも多くはない。報告書の裏には、先に枠組みを提示することで独法化に向けた制度設計を有利に進めたいという思惑がある。こうした危機感に裏打ちされた積極姿勢は、旧七帝大などがリードしたのだが、急な話に戸惑いを隠せない大学もある。
大学の教育研究は「将来への投資」(ある国立大学長)にほかならない。大学をいたずらに疲弊させることは、将来に禍根を残すことになる。
独法化により、大学の自治や学問の自由を損なわないこと、今でさえ少ない高等教育への予算配分を減らさないこと、この二点は最低限守られるべきだろう (加古陽治)
あらためて法人化反対 国大協会長ら会見
「日本が破滅していくスキーム(枠組み)が提示される前に大学側から意見発信しないといけない」。国立大学の独立行政法人化問題で国立大学協会の蓮実重彦会長(東京大学長)ら幹部5人が13日、臨時総会後に記者会見し、性急な独法化の動きにあらためて反対の意思を表明した。
第一常置委員会内の小委員会で検討にあたった松尾稔委員長(名古屋大学長)は「いったい日本をどういう国にするのか、いかなる大学、人材がどのくらい必要かという検討がまずなされないといけないのに具体的なスキームがどんどん進んでいく」と、急いで検討し、報告書をとりまとめた裏事情を説明した。
蓮実会長は「通則法を断固支持するかとうかがったら、そのようなことはなかった」とほとんどの学長が独立行政法人通則法の枠組みに問題があると考えていることを指摘した。
しかし、文部省の独法化案提示を受けた後の動きについては「次のステップでどこまで踏み込むかは別。そこまでの議論は出ていない(阿部博之・第一常置会委員長、東北大学長)と、”条件付き容認”にも含みを残した。
国立大法人化「反対」を維持
国大協が臨時総会、特例法の制定求める
1999年9月14日 日本経済新聞 朝刊
国立大学の独立行政法人化問題を協議していた国立大学協会(国大協、会長・蓮實重彦東大学長)は13日、臨時総会を開き、先に検討チームがまとめた法人化に関する条件などの報告書を各大学長に説明した。総会後に記者会見した蓮實会長は一般行政事務の効率化を目的とした独立行政法人通則法を直接大学に適用することについて、「支持する学長はいなかった」と述べ、一昨年11月に国大協が表明した法人化反対声明を現時点でも変更しない考えを明らかにした。
国大協の検討チームの責任者の松尾稔名古屋大学長は「法人化される場合は大学の自治を確保する特例法の制定が必要」とした報告書の性格について、「万一、法人化が実現した場合に(国大協が)遅滞なく対応するために満たすべき条件を整理したもの」と述ベ、法人化を前提とした「条件闘争」ではないことを強調した。
しかし、文部省は今月20日に開く国立大学長会議で、大学自治の尊重を条件に、国立大を国の行政組織から分離し、独立した法人組織とする考えを伝える方針。こうした動きを踏まえ7日に開いた国大協の検討委員会では、「総会後に国民に向け、何らかのメッセージを発信すべきだ」との意見も出たが、99国立大の総意として法人化の是非に関する見解をまとめるには至らなかった。
この日示された報告書は、先の国会で成立した独立行政法人通則法が大学の自主性を損なうものだと指摘。仮に法人化する場合は
@学内の最高意思決定機関(評議会)を設置し、学長選考を実施する
A教官人事について大学の自冶を認めた教育公務員特例法を維持する
B主務省が行う大学の業績評価は学内や第三者評価機関の意見を尊重する−など、通則法の原則を修正すべきだとしている。
国大協は通則法を国立大学に直接適用することには反対の姿勢を崩していないが、「行革の中、99すべての国立大学を現状のまま残すのは困難」との判断に傾いており、法人化が避けられない場合には、大学の特殊性に配慮した新たな立法措置を求める道を模索する方向だ。
大学自治確保へ「特例法」制定を
国大協が中間報告
1999年9月14日 読売新聞 朝刊
国立大学協会(国大協、会長=蓮實重彦東大学長)は13日、国立大の独立行政法人化問題について、独立行政法人化する場合は「大学の自治」を確保する特例を定めた「大学独立行政法人特例法」か「国立大学法」の制定が必要とした中間報告をまとめた。
国大協第一常置委員会がまとめた中間報告は13日の国立大の全学長による臨時総会に報告された。
それによると、制度の共通規範を定めた独立行政法人通則法を国立大に適用することについて、「多くの問題を生ずることは火を見るよりも明らかだ」と批判し、特例法などの制定を求めている。
また、通則法で「文部科学相が学長を任命する」と定められている点を、「(学部長らからなる)評議会の議に基づいて大学が定める基準により行う」と修正するよう求めた。