国立大の独立行政法人化、国大協小委案

国立大法人化、自主性保つ特例法要望
国大協が独自案「学長は学内選考」

1999年9月12日 朝日新聞朝刊(1面)

 国立大学を国の直轄運営から切り離して独立した行政法人とする問題で、国立大学協会(会長・蓮實重彦東大学長)の委員会がまとめた報告書の全容が明らかになった。政府内ではすでに国立病院などを独立行政法人にすることが決まっているが、報告書は、国立大を法人化しようとすれば、「多くの問題を生じることは火を見るより明らかだ」と改めて反対を表明。仮に法人化する場合には、「大学独立行政法人特例法」や「国立大学法」(いずれも仮称)などを制定し、大学の自主性を維持できるようにすることを強く求めている。(3面に報告書の概要

 国大協は13日に全学長を集めた緊急総会を開き、報告書について討議する。文部省は報告書の内容に大筋で理解を示しており、今後は、国大協の考えを政府・自民党がどこまで認めるかが最大の焦点になる。

 国大協では、今年6月から第1常置委員会(委員長・阿部博之東北大学長)が法人化問題を検討してきた。同委員会がまとめた報告書は、法人化が避けられない場合には、財政基盤を現在よりも拡充したうえで、大学の自治を損なわないように法律を整備することを求めている。

 具体的には、国立大を法人化する場合には、付属病院や研究所も含めて、「1大学1法人」とすることを原則とし、「各大学には、学長や副学長のほか教員らで構成して重要事項を検討する評議会を置く」「職員の身分は国家公務員を維持する」「現在の国大協のような連合組織を置き、事務職員の人事を一元的に行う」なども盛り込まれた。

 国の機関が独立行政法人に移行する際のルールを決めた独立行政法人通則法は、「法人の長は主務大臣が任命する」「大臣が3−5年間の中期目標を定める」「業績を評価して、業務を継続させるかどうかを検討する」などと定めている。これに対し、報告書は、大学に適用されれば自主牲が大きく損なわれる恐れがあるとし、@学長や役員の人事は評議会などを通じて学内で決めるA中期目標の策定については、事前に大学と協議し、自主性を尊重する義務を文部省に課すB文部省による教育・研究の評価は、大学の自己点検結果などを尊重する−などを求めている。

国大協報告書(概要)
独立行政法人化をめぐる国立大学協会委員会の報告書の概要(1面参照
総論 ・独立行政法人通則法をそのまま国立大に適用するのは困難。仮に独立行政法人化する場合でも、大学の特殊性を法律で明らかにする必要がある。
・通則法に付随した個別法の規定では不十分。「大学独立行政法人特例法」や「国立大学法」「国立大学法人法」(いずれも仮称)などが立法化されるべきだ。
組織 ・仮に独立行政法人化する場合、現在の各大学ごとの法人化を原則とする。
・大学の連合組織が必要。事務職員人事の一元的運用などの業務を行う。
大学運営・人事 ・国立大学法人は、経営と教学の機能を一体にする。自主的に意思決定するために評議会を置く。学長選考は評議会の議に基づき、大学が定める基準による。
・職員の身分は人事の流動化や待遇の均等化などの観点から、国家公務員であることが望ましい。
・教育職員は、現在保障されている身分、教育研究における自由度が保障されなければならない。
運営目標・評価 ・個々の大学は主体的に教育研究の長期方針を決める。通則法では中期目標を主務大臣(文相)が指示することになっているが、各大学から事前に意見聴取して協議する義務、教育研究の自主性を尊重する義務などを設けるべきである。
・主務省(文部省)の評価委員会が直接大学を評価することは、教育研究の自主性の点から不適当だ。
財政 ・高等教育の質を維持・向上させ、授業料などの負担を抑制するには、現行の財政的投入を確保することが必要。国立学校特別会計は維持されるべきだ。見直す場合でも、特別会計的な機能の維持は不可欠。現在の同会計の債務は法人が引き継がないよう措置する。
・長期的な教育研究を支えるため、国の現金出資などによる基金をつくる。寄付金などは大学が自由に便用する。地方自治体による寄付を可能にし、地方税などは原則非課税とする。

国立大 法人化 自治確保へ特例法を
国大協小委が最終報告案
大臣の目標設定にも反論

1999年9月6日 東京新聞 朝刊より

 国立大学の独立行政法人化問題について検討している国立大学協会(会長・蓮実重彦東京大学長)の検討小委員会(委員長・松尾稔名古屋大学長)の最終報告案の全容が五日、明らかになった。大学自治とそぐわない独立行政法人通則法とは別に「大学独立行政法人特例法」などを制定する必要性を強調。通則法で主務大臣が、大学側に三−五年の中期目標を指示するとしている点にも「教育研究の長期方針を踏まえているものでなければならない」と反論している。

【関連記事22面に】

 検討小委は七日に最終会合を開き、同日、第一常置委員会(委員長・阿部博之東北大学長)に報告。13日に開かれる国大協臨時総会で最終的に決定する。

 報告案は前文と本文の二部構成。前文で、国立大学の独立行政法人化への動き について、反対の立場をあらためて表明。「大学の自己責任のもとで柔軟な業務運営を進める観点からは、検討に値する問題」とも述ベ、報告案で指摘した改善策が文部省や政府の決定に反映されるよう求めた。

 本文では個別の問題について検討。「企画立案機能(官庁)と「実施機能(独立行政法人)」を分離する独立行政法人の構想は「もともと大学にはなじまない」として、主務大臣が 中期目標を指示する点など、通則法の根幹にあたる部分について修正を求めた。方法については、大学独自の例外措置を定めた「大学独立法人特例法」や大学の理念や組織を定める「国立大学(法人)法」が別に必要だと指摘した。

 具体的には@中期目標や中期計画を長期的な研究計画の中に位置づけるA策定にあたっては大学の自主性を尊重する特例を設けるB評価は法人内の評価機関の評価結果を尊重する−などの点で修正を求めている。

 学長の選考については、通則法で主務大臣が任命するとされているが、学内選考を維持すべきだとした。

 

国大協、効率先行を警戒
独立行政法人化最終報告案 
作成急いだ独自案

1999年9月6日 東京新聞 朝刊22面

 国立大学の独立行政法人化問題について検討している国立大学協会の最終報告案の全容が、五日明らかになった。独立行政法人は、行政の仕事を企画・立案部門と実施部門に分け、後者を行政組織から分離することで、スリム化を図るものだ。その枠組みは先の国会で成立した独立行政法人通則法によっている。(1面参照

 国立大学は現在、独法化移行の検討対象で、2002(平成15)年までに結論を出す予定だ。しかし、実際には2001年から始まる国家公務員の定員削減との関係で、来年夏の概算要求時までに結論を出す必要がある。残された時間はあまり長くない。

 97年に独法化反対を表明している国大協が、あらためて検討を急いだのは、こうした状況下で「政府・行政機関からは理念的諸問題はとりあえず横に置き、まず法人化のスキームが提示されてくる可能性が強い」(報告案前文)と予測したからだ。

 通則法には@中期目標・計画を主務大臣が策定、指示するA主務省などに置く評価委員会が業績評価するB主務大臣が法人の長(学長)を任命する−など、大学自治の死につながりかねない項目が並ぶ。行財政改革からスタートした経緯からしても、財政基盤が大きく損なわれる心配もある。

 今回の報告案では、そうした通則法の問題をクリアするには、通則法の下にある個別法では不可能で、特例法か、全く別に「国立大学法人」などを立法化する必要性を示した。

 現在、同じように検討を急いでいる文部省は、特例法や大学独自の法人化では「土俵に乗れない可能性が強い」(同省幹部)として、個別法による修正で対応すべきだという姿勢だ。この先、両者間の調整は難航する恐れがある。

 いずれにしても、現在の通則法の枠組みを大学に当てはめるのは不可能なことがはっきりしている。「将来への投資」である大学教育・研究の未来像を見据えた論議をさらに深める必要がある。(加古 腸治)

国大協報告案骨子

               
立法形態
通則法に付随する個別法でなく、特例を定める「大学独立行政法人特例法」か、全く別の「国立大学(法人)法」を制定する。
中期目標・計画
教育研究の長期方針を踏まえ、大学の主体性や憲法に保障された学問の自由が確保されたものにする。主務大臣が指示することになっている通則法には特例的な措置を講じる。
業績評価
主務省に置く評価委員会は、教育研究の面では、法人内に置かれる評価機関(自己点検、独自の外部評価機関)の評価結果を尊重する。
法人化の単位
原則として付属病院、研究所を含めて現在の各大学(99国立大)の単位で行う。他の国公私立大と新たな大学法人を結成する可能性も検討の余地がある。
組織
経営機能と教学機能を一体化し、役員として学長、副学長、監事を置く。自主的な意思決定のため評議会を置き、最高審議機関とする。学長の諮問機関として運営会議を置く。
運営と人事
主務大臣の関与が、統制・監督になりうる危険性を排除する。各大学ごとに教育研究の長期方針を定める。役員は学長が選考し、学長は評議会の論議に基づき、学内で選考する。職員は、人事の流動化や待遇の均等化の面から、国家公務員型とする。
財政
国際的に低い水準にとどまっている高等教育全体への財政配分を高める。財政的安定のため、国立学校特別会計制度は維持するが、存続意義を再度確認する必要がある。現物・現金資産について、機動的・弾力的な運用が可能となるようにする。寄付金や剰余金は、自主的に運用できるようにする。
税制
地方税などは原則非課税とする。共同研究経費や奨学寄付金などについての優遇措置を維持・拡充する。

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