国立大 学長任免権は大学に

独立行政法人化で文部省原案判明

特例設け自治尊重

1999年8月19日 読売新聞 朝刊より

 全国に99ある国立大学すべてを独立行政法人化するための文部省の原案が18日、明らかになった。@学長の任免権を事実上、大学側に認める A評議会・教授会などの組織を維持する B学長や教職員の身分は国家公務員のままとする−などが柱で、「大学の自治」を尊重することにより、法人化に反発している大学側に理解を求める内容だ。

 文部省は10日に有識者による懇談会を発足させ、国立大学の独立行政法人化問題の検討に着手しており、この文部省案は今後の論議の軸となる見通しだ。ただ、公務員数の削減を求める与党と、独立行政法人化に反対する大学側の双方から反発が予想され、なお曲折をたどるものと見られる。

原案の要旨5面、解説2面)

 文部省案は既に一部の国立大の学長に示されており、大学側もこれを基に独自に検討を始めている。文部省は今後、各大学のほか、国立大学協会(会長・蓮實重彦東大学長)や同省の有識者懇談会などと意見調整し、早ければ9月中にも独立行政法人化の結論を導き出したい考えだ。

 文部省案によると、国立大の組織は1大学1法人で一体とし、名称は「国立大学法人」(仮称)としている。法人の長は学長が兼務する。

 独立行政法人は、国家公務員型と非国家公務員型に分けられることになるが、いずれにしても公務員削減計画の対象外となる。このため、「国家公務員の身分を維持した場合、本当に削減したことにはならない」との批判もある。文部省案は大学の教職員らが国家公務員の身分を維持し、削減計画の対象にならない案を選択した形だ。

 制度の共通規範を定めた独立行政法人通則法は、法人の長(学長)の任命権を、法人を管轄する主務大臣に与えているが、文部省案は「学長の採用のための選考は評議会の議に基づき(中略)評議会が行う」と規定した。評議会による学長選挙を容認し、「学長の申し出に基づいて大臣が(任免・免職を)行う」としている。

 教職員採用についても、通則法が「法人の長が任命する」と定めているのに対し、「教育公務員特例法を適用する」として、教授会で教授を選考する手続きを経てから学長が任命する現行の仕組みを提示した。

 独立行政法人は、総務省、所管省庁、法人の三者が効率化の進み具合をチェックする「評価制度」の対象となる。これについて、文部省案は、大学の教育・研究を「評価」する際には、大学に設置される「大学評価機関」(仮称)の独自の評価結果を重視し、これを踏まえて総務省、文部科学省が行うとしている。

 こうした文部省案の規定は、通則法とは別に個々の法人の業務の範囲などを定める個別法に「特例措置」を設けることで対応するものだ。

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国立大の独立行政法人化原案(要旨)

 国立大学の独立行政法人化案の要旨は次の通り。(本文記事1面)

【基本的な組織】

 ▽ 1大学に1法人(「国立大学法人」仮称)を設置。

 ▽ 役員として、学長(1人)、副学長(教育研究、学生、経営など複数人)、監事(複数人)を置く。

 ▽ 評議会、教授会、運営諮問会議は不可欠の機関として、個別法で規定。

 ▽ 学部・研究科・付属研究所は不可欠の基本的組織として、設置・改廃は個別法令による。

【役員・教職員人事】

 ▽ 役員・教職員は国家公務員とする。

   教員に教育公務員特例法を適用する。

   職員は法人間の移動を可能とするため広域的な人事の仕組みを検討する。

【中期目標・中期計画】

 ▽ 中期目標は文部科学省が各法人に指示するが、大学の自主性を尊重するための特例措置を個別法に規定。

 ▽ 中期計画は各法人が作成、文部科学相が認可。

 ▽ 文部科学相は「評価委員会」の意見を聴取、財務相と協議。

 ▽ 「評価委員会」は、「大学評価機関」(仮称)が独自に行う評価の結果を踏まえ意見を表明、そのための特例措置を個別法に規定。

【予算措置】 (略)

評価

 ▽ 「評価委員会」が、毎事業年度及び中期目標の終了時に、各法人の業務の実績について評価する。

 ▽ 教育研究にかかわる事項は、「大学評価機関」(仮称)が独自に行う評価の結果を踏まえて評価を行うこととし、特例措置を個別法で規定する。

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国立大独立行政法人化 文部案

「自治」尊重で反発抑止図る

 【解説】

 国立大学の独立行政法人化に向けた文部省の原案は、可能な限り「自治」を尊重することで、“身内”でもある大学側の反発を抑えようと文部省が考え出した苦肉の策だ。自民党文教族の中には、「大した研究もしていない大学は、いっそ私大にしてしまったらどうか」という突出した意見もあり、「もはや法人化の流れには逆らえない」(文部省筋)との判断があった。

 また、国の機関として残れば教職員の大量削減が予想されることから、独立行政法人に移行するのも組織の生き残りのためには有効だとの見方もある。

 ここにきて文部省が検討を急ぎ始めた背景には、自自公連立政権の発足が現実味を帯び、内閣改造が9月末にも予想されることから、東大学長や中央教育審議会会長を務めた有馬文相の下で一定の結論を出した方が、大学側にも受け入れられやすいのではないか、との思惑が働いている。

 しかし、大学関係者には、「法人化されるといろいろな行政の審査を受けることになり、経営が不自由になる」といった反発も依然として根強い。また、大学側への配慮を強調すれば、「手心を加えた」という世論の批判も出かねない。文部省は苦しい対応を迫られそうだ。

(政治部 尾山 宏、本文記事1面)


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