国立大学協会(会長・蓮実重彦東京大学長)のワーキングチームが、国立大学の独立行政法人化について極秘に検討し、報告をまとめていたことが4日、明らかになった。報告では、現在ある独立行政法人通則法とは別に「大学独立行政法人特例法」の創設などを提言。各国立大を一法人として、連合組織の独立行政法人(組合法人)を別に設けるパターンなど三つのモデルを示している。国大協は1997(平成9)年10月に「多様な教育・研究を行っている大学に全く相応しない」として、独立行政法人化に反対する決議をしていたが、報告を受けて第1常置委員会で審議を始めており、方針転換といえる。文部省の検討作業にも影響を与えそうだ。【解説26面に】
報告は今年4月に蓮実会長が名古屋大学の松尾稔学長に委託。複数の大学から各分野の専門家4人を加えて、約1カ月半かけて集中的に審議した。結果は蓮実会長に提出され、総会直後の6月18日、各国立大学の学長に送られた。
松尾学長による前文では、独立行政法人化について「明治の学制施行、戦後の学校制度改変にも匹敵する国立大学のきわめて重要な問題」だと指摘。「大学は、いわゆる競争原理とは異なる基本理念」にもとづくとする一方で「行政改革の急激な動きの中で、設置形態をも含めて国立大学の在り方が見直されている現実をもはや無視できない」と、法人化を検討した背景を説明している。
続く本文では@定員削減と経費削減が最重点課題となる結果、教官の負担がさらに増大し、教育研究の質的低下を招きかねないA(教育研究の効果は)短期的に評価されるべきでないB主務大臣の関与は、実質的な統制・監督となりうる−などと現在の通則法に定められた独立行政法人の枠組みに疑問を呈した。
そのうえで、通則法に代る「大学独立行政法人特例法(仮称)」を定めることを提案。組織面では@各国立大学を一法人として、国大協のような連合組織の独立行政法人(組合法人)を設立するA各国立大を一法人として、連携協力のたの組織を文部省の本省とは分離する形で設立するB全部の国立大を一つまたは複数にまとめた法人(連合大学法人)を設立し、その下に各大学を置く−の三つの枠組みを示した。
職員については通則法と同じく国家公務員型とするが、人事や教育研究については、各大学にゆだねるよう求めた。
これを受けて、国大協では7月下旬に開いた委員会で審議を開始。同様に独立行政法人化についての結論を求められている国立の大学共同利用機関とも連携を取りながら、遅くとも11月の総会までには結論を出す方針だ。
今回の報告について、松尾学長は「国大協の委員会審議にゆだねている」として、コメントしなかった。
[解説] 国立大学協会のワーキングチームが、独立行政法人化について独自の提言を行っていたことが4日、明らかになった。(1面参照)。
国立大学の独立行政法人化は、中央省庁改革推進大綱で2003(平成15)年までに結論を出すことになり、先延ばしされたと思われた。一方で国家公務員の定数を2001年からの10年間で25%削減することが決まっており、独立行政法人移行による削減分を算入するためには2000年夏の概算要求前までに結論が出ていないといけない。
文部省職員の約9割、約12万5千人の教職員を抱える大所帯、国立大学の独立行政法人化の是非を決めるまでには、実はあまり時間は残されていない。
「現在の独立行政法人通則法のままでは、国立大学に取り返しのつかないダメージを与える恐れがあるのに、そのまま独立行政法人化されかねない」。国立大学協会が極秘の検討を進めた背景には、そんな危機意識があったようだ。
通則法には、複数年度にまたがる企業会計の導入や、代表への人事権付与など、独立性を高める面もある。しかし、主務大臣が3年以上5年以下の期間で「中期目標」を定めることや、事業年度ごとに評価することなどが盛り込まれており、監督官庁の監視が強まる恐れが払しょくできない。
そもそも研究や教育は、経済効率とは基本的に相いいれない性格を持っている。高等教育への対GDP(国内総生産)比財政支出は、カナダ2.2%、米国1.3%、仏、英各0.9%に対して、日本は0.4%(いずれも1993年)と半分以下だ。ただでさえ研究環境が恵まれているとはいえないのに、法人化により、短期間で結果を求められたら、基礎研究などが存亡の危機にひんする、と多くの大学人が不安感を抱いている。
国大協は現行のままでの独立行政法人化に反対する姿勢は崩していないが、東大などは、国立という設置形態そのものにはこだわっていない。提言された「大学独立行政法人特例法(仮称)」が制定され、新しい類型の法人ができたとき国立大は一気に独立行政法人へと向かう可能性がある。