廃棄注射針で「エイズ死」
米国では「針刺し事故予防安全法」
「廃棄注射針、誤って刺す」
エイズ死亡、初の報告例
都内の大学病院、作業の男性
2001年9月8日 読売新聞 朝刊
都内の大学病院で清掃作業中の男性が、医療廃棄物として出された使用済みの注射針を誤って刺した「針刺し事故」でHIV(エイズウイルス)に感染し、死亡したと疑われる事例が、厚生労働省のエイズ動向委員会に報告されていたことが7日わかった。医療現場での針刺し事故が原因とされるHIV感染の報告例は国内初。同省では、今回の事例が、医師や看護婦などの医療従事者でなく、十分に危険性の情報を持っていない外部の清掃業者で起きたことを重視。近く医療廃棄物を扱う清掃業界に注意を呼びかける通知を出すとともに、同様の事故を防止するための具体的な方策の再検討を始める方針だ。
死亡したのは5、60代の男性で、都内の大学病院で清掃業者の作業員として働いてきた。今春、体調不良を訴え都内の病院で受診し、HIVに感染しエイズを発症していることが判明。間もなく死亡した。
主治医が生前、感染経路について尋ねたところ、男性は「病院の清掃作業中に注射針を刺したことがある」と話したという。
感染症法は、新たなHIV感染、エイズ発病について医師に報告を義務付けており、この主治医は「推定される感染経路」欄に、男性の自己申告通り「針刺し事故」と記載して発生届を提出。7月31日の動向委員会に報告された。針刺し事故が起きた時期や状況など詳しいことは報告されていない。
同省では、男性がすでに亡くなっていることや、感染源とされる注射針が廃棄されていることなどから、「HIV感染の原因が本当に針刺し事故か明確にするのは、現状では難しい」としており、感染者のプライバシー保護を配慮しながら調査するという。
ただし動向委員会は、医療施設の清掃業者に針刺し事故が起きていたことを重視。同省に対し、清掃業界への注意喚起を呼びかけるよう求めた。また同省は事故が起きた際には、医療施設で検査、治療を受けるよう要請することも検討している。
同省はさらに、医師や看護婦などの医療従事者に対しても、改めて使用済み注射針の適正な廃棄を指導していく方針だ。
エイズ死報告
医療ごみ安全対策ずさん
清掃現場、低い危険認知度
2001年9月8日 読売新聞
都内の大学病院で清掃作業員が使用済みの注射針を誤って刺し、HIV(エイズウイルス)に感染したと疑われる事故は、医療現場における危険な医療ごみのずさんな処分を改めて浮き彫りにした。
国の感染性廃棄物の処理マニュアルは、注射針など鋭利なものは、強化プラスチックなど丈夫な容器に入れて保管、収集するよう求めている。だが「段ボール箱などに入れている場合もあった」という医師もいる。事故の詳しい状況は不明だが、マニュアル通りなら防げたはずだ。
厚生労働省の調査では96―98年の3年間に全国約600の病院で、HIV感染者に対する治療行為中の針刺し事故が約70件発生。対策として医療従事者には、97年に事故後の感染防止マニュアルが配布されている。
ただ、こうした危険性は、医療従事者以外には周知徹底されておらず、清掃作業では廃棄物用の容器から使用済みの針を手で取り出すこともあるという。清掃作業員は感染に気付いていなかったとみられ、事故直後に抗ウイルス薬を飲むといった有効な治療を受けていた可能性は低い。
エイズの医療機関は年々増え、感染の危険性は拡散している。医療従事者の針刺し事故は、C型肝炎ウイルスでは一層深刻で、感染報告は3年間で28件もあった。
米国では今年4月、安全装置のついた注射器の使用などを義務づけた「針刺し事故予防安全法」が施行された。国は関連業界に注意を呼びかけるだけでなく、より踏み込んだ対策を検討する必要がある。
針刺し事故に詳しい名古屋市生活衛生センターの木戸内清主幹は「注射針の処分方法が守られていないのは決して珍しくなく、安全な注射器を導入している病院もごくわずか。医療従事者の針刺し対策が始まったばかりで、今回の事故は盲点の部分だった」と指摘、早急な対策を求めている。
「手術室で何回も刺した」
使用済み注射針でエイズ死
2001年9月8日 読売新聞 夕刊
都内の大学病院で清掃作業中の男性が、医療廃棄物として出された使用済みの注射針を誤って刺した「針刺し事故」でHIV(エイズウイルス)に感染し、死亡したと疑われる事例報告について、厚生労働省は8日、詳しい報告内容を公表した。
同省エイズ動向委員会への報告によると、今年5月、57歳の日本人男性が都内の病院でエイズと診断された。清掃作業員だった男性は診断した医師に対し、感染の経路について「病院の手術室で清掃中に何回も針を刺したことがあった」と話したという。しかし、針を刺した時期などは不明としている。男性はこの受診後数日して死亡した。
廃棄注射針でHIV感染か
病院清掃業者が死亡
国内初報告
2001年9月8日 東京新聞 夕刊
病院で医療廃棄物として出された使用済みの注射針が刺さり、清掃業者の男性がエイズウイルス(HIV)に感染、発病し死亡した可能性があることが、厚生労働省のエイズ動向委員会への報告で8日、分かった。
針刺し事故によるとみられるHIV感染の報告例は国内で初めて。厚労省は近く、医療廃棄物を扱う清掃業者らに注意を呼び掛けるとともに、感染の危険のある医療廃棄物処理の実態調査を行うことを検討している。
厚労省によると、この男性は57歳。体調不良を訴え5月にエイズを発病したと診断され、間もなく死亡した。男性は生存中、医師に対し「自分は病院の手術室の清掃業者で、廃棄された注射針を誤って刺したことが何度かある」と話したという。
男性の話に基づき、医師は推定される感染経路として「針刺し事故」と記載した報告書を東京都の保健所に提出、7月31日のエイズ動向委員会に報告された。
清掃作業をしていた病院名や針刺し事故の時期などは明らかにされていない。
厚労省は男性が既に死亡していることなどから感染経路を完全に特定するのは難しいとしているが、以前から危険性が指摘されていた針刺し事故によるHIV感染とみられる報告があったことを重視。清掃業者らに対し医療廃棄物による感染の危険について周知徹底を呼び掛けるとしている。
同省疾病対策課の麦谷真里課長は「針刺し事故が起きたらすぐに抗ウイルス剤を投与するなどの対応を徹底してほしい」と話している。
HIV
廃棄針で感染の報告
清掃業務の男性が死亡
2001年9月8日 朝日新聞 夕刊
東京都内の病院で今年5月に死亡した男性患者(57)が、医療機関での清掃業務を通じてエイズウイルス(HIV)に感染した疑いがあるとして、厚生労働省のエイズ動向委員会(委員長=吉倉廣・国立感染症研究所長)に報告されていたことが8日、わかった。HIV感染は性交渉や輸血による報告例はあるが、清掃業務での報告は初めて。厚労省は都道府県や環境省を通じて医師や看護婦らのほか、注射針などの医療廃棄物を扱う業者らに対して針刺し事故対策の徹底を指導するよう検討している。
厚労省によると、死亡した男性患者は今年5月3日に都内の病院を受診し、エイズと診断された。数日後には死亡しており、HIV感染を知らずに重症化したとみられる。患者は主治医に「(都区内にある)大学病院の手術室の清掃をする業者だった。その間に(注射針を過って手指などに刺す)針刺し事故が何回もあった」と話したという。時期は不明という。
感染症法は医師に対し、HIV感染者やエイズ患者の発生をすべて報告するよう義務づけている。主治医は男性患者の話した内容を「推定される感染経路」として厚労省に報告した。男性患者が死亡し、医療廃棄物も現存していないことから、感染経路の特定は不可能だが、厚労省は針刺し事故直後に抗エイズ薬を投与するなどの対策を徹底するよう、医療現場に注意喚起する方針だ。
厚労省研究班が96〜98年にのべ約1000病院で実施した調査では、医師らの針刺し事故は100床あたり年間約30件と推定。うち感染例はHIVがゼロ、C型肝炎が0.4%だった。