起業促進へ資金支援

大学発ベンチャー育成

専門ファンド

経産省が包括対策 開業率

2001年8月24日 日本経済新聞 朝刊


 経済産業省はベンチャーなどの新規開業を資金支援する包括策をまとめた。大学教授らが研究成果をもとに会社を設立する「大学発ベンチャー」に出資する専門ファンド(投資基金)を創設するほか、事業計画がしっかりしていれば無担保で開業資金を融資する制度を導入する。ハイテクなど成長分野の起業を促進するとともに、開業率を引き上げることで雇用の拡大につながるとみている。2002年度からの実施を目指す。

事     業 支援の目的 初年度の事業規模(計画)
大学発ベンチャー専門ファンド バイオなどハイテク分野の開業促進 20億円程度の投資基金
(政府出資は半分程度)
新規開業者向け融資制度の拡充 開業率の引き上げ 融資件数は1万件
融資額は400億円
売掛債権担保融資に公的保証 不動産担保の乏しいベンチャーの
資金繰り
保証総額で1兆円
社債への公的保証拡充 ベンチャーの資金調達手段の多様化 保証総額3000億円
以上で検討

 政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)は100社程度にとどまっている大学発ベンチャーを3年間で1000社、1年間の新規開業数を今後5年で2倍の36万社に増やす計画を掲げている。経産省の支援策はその一環となる。

 創設するファンドには、中小企業総合事業団や日本政策投資銀行が10億円程度の資金を出すほか、民間のベンチャーキャピタルからも資金を募り、合計20億円程度の規模にする。

 ファンドはバイオやナノテク(超微細技術)など成長分野の大学発ベンチャーに出資する。昨年4月から国立大の教授らも現職のまま企業を経営できるようになった。私立大だけでなく、国立大の教授らも特許を活用した製品などをつくる企業を設立する場合に資金支援を受けることができる。

 開業資金として国民生活金融公庫に無担保・無保証人で設備投資資金や運転資金を融資する制度を設ける。融資額は最大550万円、期間は最長7年。金利は長期プライムレート(最優遇貸出金利、現行年1.65%)を参考に決める。

 同公庫には現在も開業資金を低利融資する制度があるが、利用者に開業しようとする業種での職務経験などを求めており、利用は伸び悩んでいる。新制度では起業家の経験を問わず、事業計画の審査だけで融資を受けられるかどうかが決まる。経産省では「リストラにあった中高年が異業種で起業するようなケースでも融資できる」としている。

 また開業後間もないベンチャーなどの資金繰りも支援する。売掛債権(販売済み商品の未回収金)を担保する融資に信用保証協会の保証をつけ、銀行から融資を受けやすくする。資金調達手段を多様化するため、社債の発行も後押しする。純資産額が5億円以上の企業の社債にだけ信用保証協会の保証を付けているが、来年度からは5億円未満の企業でも保証を付けるよう制度を見直す。

 経産省は来年度予算の財政投融資計画で専用ファンドの資金手当てを財務省に要望する。新規開業者向け融資制度の拡充については、来年度予算の概算要求で国民公庫への利子補給金として計上し実現を目指す。こうした支援策は特殊法人に対する財政支出を増やし、特殊法人改革に逆行する恐れがあるものの、経産省は「財政支出を最小限に抑える」としている。

開業率

▽…一定の時期に開業した企業数の年平均を総企業数で割った値。逆に廃業した企業数を総企業数で割ったのが廃業率。直近の調査期間(1996年―1999年)では開業率が3.5%、廃業率が5.6%で、開業率が廃業率を下回っている。この結果、総企業数がじりじりと減少し、雇用の場が失われている。

▽…米国の場合、廃業率は12%で日本より高いが、開業率は14.3%でこれを上回る。不況業種で廃業が進む一方、成長分野で多くのベンチャーが誕生し、雇用状況が好転している。日本の開業率は欧州各国と比べても格段に低い。日本政府も不況業種の企業を保護して廃業率を抑えるのではなく、起業を促し開業率を引き上げる方向に政策のかじを切り始めている。


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