国研から脱皮 独立法人始動
産業技術総合研究所
連載:日経産業新聞
@ 体制一新、解体的出直し
2001年5月15日
2001年度に発足した独立行政法人。その多くは以前の国立研究機関の体制を維持しているが、経済産業省系の産業技術総合研究所(産総研)はその組織が根本から変わった。縦割り体制だった15の旧研究所を廃止し、先導的・戦略的なプロジェクトを推進する「研究センター」、中長期的な課題に取り組む「研究部門」など目的に応じた体制に組み替えたからだ。
産総研の母体である旧工業技術院には、例えばコンピューターの基礎技術の開発で一世を風靡(ふうび)した電子技術総合研究所のように、産業界に大きな影響力を持っていた機関が少なくない。しかし、1980年代後半から各研究所とも基礎志向が強まり、「産業界との関係が疎遠になった」(児玉皓雄前電総研所長)という反省から、“解体的出直し”を目指した。
2500人近い研究者を擁する巨大機関の経営を取り仕切るリーダーとして、東京大学学長などを務めた吉川弘之氏が選ばれた。副理事長は元工技院長の平石次郎氏。ただ、企業関係者は日本電信電話 (NTT)出身の池上徹彦会津大学長が非常勤理事を務めるくらい。国立研究機関の雰囲気がまだ残っている。
| <産総研の概要> |
| ▽東京本部 東京都千代田区霞が関1−3−1 |
| ▽つくば本部 茨城県つくば市東1−1−1 |
| ▽理事長 吉川弘之氏 |
| ▽職員数3242人 |
| ▽研究者数2441人 |
| ▽年間予算793億円(運営交付金の額) |
A 研究センターを看板に
2001年5月16日 日経産業新聞
総工費165億円のスーパークリーンルーム。今年2月に着工したこの施設を舞台に、産業技術総合研究所の次世代半導体研究センターが2002年から、最先端の半導体製造技術の開発に挑む。産学も含め、総勢200人の陣容を整える。広瀬全孝センター長は「世界から見ても、存在感あるセンターとして活動したい」と意気込む。
産総研に23設けられた研究センターは、新法人の看板組織だ。情報技術(IT)やバイオ、ナノテクノロジー(超微細技術)、エネルギーなどの分野で、期限を決めて戦略的・先導的なプロジェクトを遂行する。
次世代半導体以外のセンターも、100人前後の規模を想定している。
センター長に資金や人事に関する権限を持たせるトップダウンの運営制度を導入した。センター長は業績に応じて研究者の給与を調整し、業績が振るわない研究者を他の組織に異動させることもできる。こうした措置は国咽立研究所時代には考えられなかったこと。厳しい外部評価を受けながら、産業界にインパクトを与える成果を目指す。
B 「部門」3年で見直し
2001年5月17日 日経産業新聞
産業技術総合研究所の「研究部門」は、原則的に研究者がやりたい研究テーマを設定するボトムアップ型の組織。トップダウン型の「研究センター」に比べると、いわゆる地味なテーマが多い。中長期的な課題に取り組む国立研究所のスタイルに最も近いと言えるが、3年でいったん全部門を見直す予定になっており、“ぬるま湯”からの脱却を目指す。
研究部門がカバーする分野は情報技術(IT)、バイオ、ナノテクノロジー、エネルギーなどで、研究センターとそれほど変わらない。より基礎的・学術的な研究業務に携わることになるが、分野を融合して新しい技術領域を開拓する狙いもある。
22設けられた部門のうち、最大の組織は計測標準研究部門。旧計量研究所を中心として、エレクトロニクス関連の規格を定めていた旧電子技術総合研究所、化学分析に不可欠な標準物質を取り扱っていた旧物質工学工業技術研究所の職員ら約250人が、今春つくばに完成した新しい施設に集団移転した。(筑波)
C 独自色を深め地域振興
2001年5月18日 日経産業新聞
北海道、東北、名古屋、大阪、中国、四国、九州にあった旧工業技術院の7工業技術研究所がそれぞれの地域拠点として再スタートした。重複した研究を整理して独自色を深め、それぞれの地域の産業振興につなげる。関東地方では従来からある茨城県つくば市の拠点に加え、東京・臨海副都心に建設していた新施設が7月にお披露目される。
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戦略的なプロジェクトを展開する23の研究センターの多くはつくばと臨海副都心に本拠地を置く。東北(仙台市)に設けた「超臨界流体」は、旧物質工学工業技術研究所などつくばにあった研究機能の大部分を移して増強した。関西(大阪市)には細胞組織工学とストレス防御、中部(名古慶市)には次世代セラミックスに関する各研究センターを置く。 組織再編に伴い、全体の約2%の研究者が地域間異動の辞令を受けた。少ないように見えるが、工技院時代には決してなかった大人数という。(筑波) |
D 産学との連携を重視
2001年5月21日 日経産業新聞
産業技術総合研究所は産学との連携研究を重視する。企業側が研究者個人またはグループを指名して短期間で実用技術を開発する「連携研究体」という仕組みが新たにできた。第1号は田中真奈実研究体長と日本製粉による「ブラディオン連携研究体」。田中氏が発見した特殊なたんぱく質ブラディオンを使った大腸がんの検査キットを2004年に発売する計画だ。
つくば市の本部と東京・臨海副都心に建設した産学官共同研究棟(OSL)では、産総研が企業・大学と施設使用料を分担する形で共同研究をする。旧工業技術院では外部の研究者が所内の施設を利用することが原則できなかっただけに、大きな変化だ。 関西センター(大阪府池田市)には「研究系」という時限組織を新設した。ライフサイエンス分野の人間系特別研究体と、クリーンな暮らしづくりを目指す生活環境系特別研究体の二つ。3年をめどに企業と基礎から実用まで多彩な研究開発活動を展開する。(筑波)
E ベンチャー創業支援
2001年5月22日 日経産業新聞
4月下旬、遺伝子機能の解析技術を実用化する「ジェノファンクション」社がつくば市で開業した。久光製薬が全額出資するベンチャー企業で、産業技術総合研究所(産総研)ジーンディスカバリー研究センターが開発したリボザイムと呼ばれる遺伝子を利用する。久光出身の野村巌社長は「未知の遺伝子機能解析の受託が当面の業務。現在、数社と交渉している」という。
産総研はジェノファンクションのようなベンチャーの創業支援をするほか、各地域拠点に成果普及の窓口となる産学官連携センターを設けた。産総研の技術シーズと、地域ごとの産業ニーズをうまく組み合わせるために、部長級の研究コーディネーターが立案・調整にあたっている。
産総研は発足と同時に「産総研イノベーションズ」を設立し、旧国立研究所の技術移転機関(TLO)として初めての認定を受けた。約1万件にのぼる特許など知的所有権の企業への売り込みや特許実施契約などを一手に引き受ける。(筑波)
F 評価部、高く位置づけ
2001年5月23日
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産業技術総合研究所(産総研)の組織図では「評価部」という他の研究機関では見られない部署に、企画本部と並ぶ高い格付けが与えられている。研究を評価する仕組みがなかった国立研究所時代との違いの一つで、評価を重視する姿勢を目に見える形にした。 評価部は産総研トップの理事長直属で、研究ユニットや間接部門の評価を一元的に担当する。経済産業省の評価基準をたたき台として各組織に応じた個別の評価項目を示す。外部の専門家による評価委員会の評価結果を理事長に報告し、研究資源の配分、体制の改廃に反映させる。 |
5月から業務の方向性を確認する「プレ評価」を始めており、7月までに完了させる。その後は毎年11月から3カ月間にその年次の実績を評価する。古賀洋一評価部長は「国からの運営交付金がからまない委託研究にもタッチする方針」という。評価部がまとめた最終評価はホームページなどで原則公開する考えだ。
(筑波)
=「産総研」はおわり