厚生年金を民営化
空港・大学も対象
経済財政諮問会議
2001年5月30日 日本経済新聞 夕刊
政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が6月下旬にまとめる経済・財政運営の基本方針の核となる「構造改革プログラム」の検討項目が明らかになった。厚生年金の報酬比例部分(現役時代の賃金水準に応じた上乗せ部分)を企業年金や個人年金に移行するほか、羽田、成田両空港や国立大学も民間に経営をゆだねる方針を盛り込んでいる。道路特定財源については法的な根拠を持たない自動車重量税を使い道を限定しない一般財源にすると明記した。(プログラム検討案の要旨)
このプログラムは小泉政権の経済・財政運営の中期的な基本方針となるもので、検討項目は竹中平蔵経済財政担当相が中心となってまとめた。諮問会議がめざす改革の方向性を具体的に示す「総論」にあたり、民営化、チャレンジャー支援、保険強化など7項目で構成している。公共事業に優先順位を付ける仕組みの導入など、並行して検討中の「本論」と合わせ31日の諮問会議で調整し、6月末の基本方針の骨格にする段取りだ。
「豊かな生活と安全網」の分野で柱となるのが厚生年金の報酬比例部分の民営化だ。公的年金には全国民が加入する基礎年金に加え、サラリーマンなら厚生年金の報酬比例部分がある。公的年金は現役世代が毎月支払う保険料で高齢者の年金を賄っているため、少子高齢化が進めば財政の悪化が避けられず、保険料の大幅な引き上げや給付削減が避けられない。このため、報酬比例部分を企業年金や個人年金などに移し、国の関与を少なくして効率的な財政運営をめざすという考え方を盛り込んだ。
社会保険料を徴収している厚生労働省・社会保険庁と税金を徴収する財務省・国税庁の統合も検討課題にあげている。
「経営効率が低く、民業を圧迫している」などと批判が強い国や地方自治体、特殊法人などが運営する事業も民営化の対象とする。国営空港である羽田空港や、特殊法人が運営する成田空港の民営化も対象とする。英国が実施した空港公団の完全民営化などが念頭にあるとみられる。
日本道路公団、石油公団、都市基盤整備公団、住宅金融公庫などの特殊法人の民営化を検討するほか、国立大学の民間移管も打ち出す。水道など地方自治体の公営企業も対象とする。
使い道を道路に限定した道路特定財源のうち、自動車重量税は政府内の運用で国が得る税収の8割を道路整備に充てている。諮問会議はこの部分を一般財源にするための法改正が不要であることに着目して、道路整備以外にも使えるようにする方向で検討を進める。法律で使途を限定している揮発油税(ガソリン税)は当面、現行法の範囲で使い道を拡大、将来は一般財源にすることも盛り込む。環境対策に使い道を広げる「環境税」の導入も検討する。
経済財政諮問会議の構造改革プログラムの検討案の要旨は次の通り。
(構造改革1 経済社会の活性化)
(1)民営化プログラム=空港(羽田、成田)民営化、公社・公団民営化(電源開発前倒し、道路、石油、都市基盤整備、住宅金融公庫など)、国立大学、郵政事業など。
(2)チャレンジャー支援プログラム=起業家支援税制、個人投資家税制(資本市場税制)、納得できる税制(納税者番号と申告納税制)、競争による情報技術(IT)活性化・科学技術振興、ITモデル地域、IT教育支援。
(構造改革2 豊かな生活とセーフティーネット)
(3)保険強化プログラム=年金報酬比例部分の民営化(国税庁・社会保険庁の統合)、生活保護の充実、失業保険給付の条件付き強化。
(4)人材大国プログラム=就業者に対する職業訓練投資減税、失業者に対する教育バウチャー。
(5)生活維新プログラム=保育所待機児童ゼロ作戦、職住接近(多機能高層都市推進)プログラム、エコタウン推進、デジタルタウン、多様な働き方を可能にする仕組み。
(構造改革3 政府の機能と役割分担の見直し)
(6)地域自立プログラム=地方交付税制度の見直し、地方公営企業(水道事業など)の民営化
(7)財源硬直化の是正=自動車重量税の一般財源化、揮発油税の使途柔軟化と将来的な改革(減税・一般財源化)、環境税導入、寄付税制、電子政府