教育改革に首相熱弁
具体論は乏しく
2001年5月30日 日本経済新聞 朝刊
小中高での奉仕活動の促進などを柱とする教育改革関連法案の審議が29日の衆院本会議から始まった。小泉純一郎首相は「今国会に提出した法案の成立に全力を尽くす」と表明。随所に独自の教育観を交えて教育改革でも「小泉カラー」の発揮に努めた。ただ学級崩壊や不登校などの問題を抱える教育の現場をどう立て直すのかといった具体論は乏しかった。
| ▽ | 学校教育法改正案 小中高で奉仕活動の充実に努める。 小中学校の出席停止制度の要件や手続きを明確化。 大学、大学院で「飛び入学」制度を規定。 |
| ▽ | 地方教育行政の組織・運営法改正案 都道府県の教育委員会は指導が不適切で、研修などを受けても改善しない教職員を免職できる |
| ▽ | 社会教育法改正案 社会教育体制を整備。 教育委員会の事務に家庭教育に関する講座を開設、奉仕活動に関する事業を追加 |
| <首相の総裁選での公約> 〇小学校教育で基礎学力の習得を徹底 〇小中高で習熟度別学級を促進 〇大学の研究と経営に競争原理を導入 |
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「子供のころ、自分が楽しむと同時に公のために尽くすことに喜びを感じる『公私相半ばできる人間』が望ましいとよく言われた。人格向上が教育の一つの大きな目標だと思う」
首相は最初に質問に立った民主党の大石尚子氏への答弁で、自らの体験談から教育問題を説き起こした。野党席をみながら「教育改革でも協力できる点は協力してほしい」と秋波を送り、いつもの小泉流の受け答えをみせた。
公明党の西博義氏には「若くして学べば壮にして為(な)し、壮にして学べば老いて衰えず、老いて学べば死して朽ちず」と答弁。江戸時代の儒学者、佐藤一斎が年代ごとに勉学の大切さを説いた言葉を首相流に解釈して語ったもので、教育問題への関心の強さをアピールした。
もっとも政策の各論に入ると、安全運転に終始する場面が目立った。独自の見解を示したのは高校の通学区廃止に絡んで「入学者選抜の多様化を促していく」と表明した程度。森喜朗前首相が意欲を燃やした教育基本法の見直しについては「中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得ていきたい」と政府の公式見解を棒読みした。
野党側に慎重論が強い出席停止措置でも「他の児童、生徒の教育を受ける権利を守るために必要ではないか」と政府の既定方針に沿って答えた。
教育基本法の改正問題などで野党側の質問が重なったことに加え、官僚出身の遠山敦子文部科学相が簡潔に答弁したため、2時間40分を予定していた本会議の質疑は約30分早く終了。法案の中身に突っ込んだ論争はみられなかった。
政府は教育改革関連法案を3月に閣議決定したが、4月の自民党総裁選による国会審議の空白が響き、審議入りが遅れていた。与党は今国会中の法案成立を目指すが、野党は慎重審議を求める構えだ。緊急経済対策や情報技術(IT)関連など他の重要法案の審議も目白押しで、教育法案の出口は見えていない。