公務員制度
官僚の“お手盛り人事”が心配だ
2001年3月30日 読売新聞 朝刊(社説)
中央省庁再編の実を上げるには、かねて制度疲労を指摘されている公務員制度の抜本改革が不可欠だ。
とくに前例主義にとらわれたり使命感に欠けた公務員の意識と行動原理の改革が必要である。
政府の行政改革推進本部が決めた「公務員制度改革の大枠」は、そうした認識に基づいて「人」と「組織」の両面から改革の方向を示した。
根幹は、給与の設定や定員管理を行っている人事院の権限を各省庁に大幅に移し、総人件費、総定員の枠内で、各省庁が自由に給与や人事を決めることができるようにしたことだ。
信賞必罰の人事制度の確立や、変化に対応できる組織の機動的改編、官民交流の促進などが狙いという。
だが、疑問も多い。各省庁の官僚による“お手盛り人事”が強まるのではないか、という点だ。
新たな制度では、閣僚を各省庁の「人事管理権者」と位置づけ、政治の責任で人事を行うとしている。しかし、閣僚が膨大な職員の能力、業績などを的確に把握して適正な人事を行うなどということは実際上、不可能と言っていい。
閣僚や副大臣がくるくる変わる政治の現状を考えれば、なおさらだ。
結局、官僚が新制度を自分たちに都合良く運用し、「官主導」の人事が横行することになるのではないか。
天下りにしても、これまでの規制強化の流れに逆行して、大幅緩和となる公算が極めて大きい。
国家公務員は現在、退職後2年間は、原則として離職前5年間に在職していた省庁と密接な関係にある企業への再就職が禁止されている。就職を希望する場合は人事院の承認が必要だ。
今回の「大枠」では、人事院の承認制度を廃止し、所属省庁の閣僚の承認があれば天下りできるようにしている。
だが、閣僚が個々の再就職の適否を一つずつ点検し、判断を下すことは困難だろう。結局、チェックはきかず、事務当局の原案を政治が追認するだけに終わる恐れがある。
このほか、スト権など労働基本権の付与を視野に入れて検討する方針を打ち出している点も、問題だ。
公務員は、給与を税金で賄われ、倒産がないから、労働側の行動には歯止めがかかりにくい。職務の公共性という点も考え合わせると、民間と同列視して労働基本権を全面的に付与することには、賛成できない。
6月をめどに進める制度の基本設計までに、なお慎重な検討を求めたい。