バイオ関連の特許出願続々
大学の技術移転機関
予算増え研究活発
実用化少なく企業不満
2001年1月13日 日本経済新聞 夕刊
大学で生まれた発明を企業に移転する技術移転機関(TLO)でバイオ・医学関連の特許出願が増えている。東京大学や慶応大学のTLOでは4−5割がバイオ分野の出願。政府がバイオ予算を増やし研究が活発になっていることに加え、研究成果を特許にして企業に使ってもらい特許使用料(ロイヤルティー)収入を研究費にあてる米国流の研究者意識が浸透してきたためだ。ただ実際に企業と技術移転契約を結んだ例はまだ少ない。企業側のニーズにこたえる新技術が少ないなど技術移転を広げるうえで課題も指摘される。
東大の先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI)は出願済みと出願手続き中を合わせて約200件の特許を扱っているが、5割強(昨年末時点)がバイオ関連。すでに企業に移転した7件の特許のうち6件、近く契約予定の8件中6件もバイオだ。
また、慶応大の知的資産センターでは出願済み99件中28件(同)をバイオ関連が占める。
京都大学など関西の大学の成果を扱う関西ティー・エル・オーでは110件の出願のうちバイオが13件(同)。飛び抜けて多くはないが、「医学、薬学部の研究者から特許出願の相談が増えてきた」と話す。日本大学の国際産業技術・ビジネス育成センターでも出願特許61件中、9件がバイオ関連という。
| TLO名称(大学名) | 移転した技術内容 | ライセンス先企業 |
| 知的資産センター (慶応大学) |
エイズウイルスの識別法 | 大塚製薬 |
| エイズウイルスの定量法 | 大塚製薬 | |
| 自己免疫病研究用のモデル動物育成技術 | 実験動物中央研究所 | |
| 先端科学技術インキュベーションセンター (東京大学) |
血液や血管になる細胞の分離技術 | 医学生物学研究所 |
| 国際産業技術・ビジネス育成センター (日本大学) |
肝硬変の検査法・装置 | 日立東京エレクトロニクス |
大学のバイオ特許が増えているのは、政府のバイオ研究予算の急増が背景にある。ゲノム(全遺伝情報)を巡る国際競争などの刺激を受け、政府は遺伝子関連研究などの予算を増額しており、これに後押しされる形で大学の研究成果が着実に増えている。
同時に研究者の間で「成果を特許収入につなげ次の研究の資金に充てる」(慶応大の研究者)という米国流の意識が高まってきたことも大きい。特にバイオ特許は「医薬品などに直結するため技術移転に成功すれば高額なロイヤルティーに結び付きやすい」とCASTIの高田仁副社長は分析する。
ただTLOの現状に対して企業側には不満もある。激しい開発競争にさらされている企業の目から見ると、すぐに実用化につながる技術シーズが少ないからだ。
吉田健一住友電気工業常務は「(成果があるから使ってほしいという)大学から企業への一方通行ではだめ」と指摘する。
文部科学省の承認を受けたTLOは現在17機関あり、保有・出願した特許は全技術分野で515件。技術移転に成功した例は30件(昨年7月末)にとどまっている。
またTLOに技術移転や特許の専門知識を備えた人材が不足していることも課題だ。