薬害エイズ・安部医師批判が
名誉毀損とされた判決

新潮社・保田弁護士に対する
名誉毀損判決 要旨

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主  文
 被告株式会社新潮社は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平成8年4月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 原告の被告株式会社新潮社に対するその余の請求及び被告保田行雄に対する請求をいずれも棄却する。
 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告,その余を被告新潮社の負担とする。
 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

週刊新潮の記事に対する判断

本 件 記 事 真実性に関する判断 相当性に関する判断
記事1(1996年3月7日号)
(1) 「強引にエイズ研究班の結論を(加熱製剤)緊急輸入の見送りにねじ曲げたのが、班長の安部英氏なのである。」 原告が,加熱製剤の安全性が十分に証明されていないとして,その緊急輸入に反対したことは,格別不合理な行動と認めることはできない。 被告新潮社が,取材結果と原告の言動を照らし合わせて,原告が加熱製剤の緊急輸入に反対したのは,ミドリ十字を含む国内メーカーのためであり,治験調整を行ったのではないかと信じることには相当な理由があると認められる。

金銭の授受と,エイズ研究班内部における原告の行為とを結びつけて考えることも相当な理由がある。
(2) 「加熱製剤の技術が遅れていたミドリ十字を助けるために,治験期間を遅らせ,その見返りに巨額の金員を得た 原告は,ミドリ十字のために加熱製剤の治験期間を調整したと認めることは困難である
記事2(96年3月21日号)
 「彼は刑事裁判に付されて当然の犯罪者ですし,すでに殺人罪で告発されていますが,少なくとも10年ぐらいの実刑に問われて当然だと思います」
 「殺人罪ということになれば,大量殺人ですから,死刑もあり得るでしょう」
原告において,エイズウイルスにより血友病患者が死亡してもかまわないと考えていたと認めるに足りる証拠はなく,原告が非加熱製剤の使用中止の方針をひっくり返したことをもって,殺人,大量殺人と論評することは,公正な論評の域を逸脱している 当時の医療水準に照らすと,原告が,非加熱製剤の使用を継続することが,血友病患者にとって利益である判断したことも不相当,不合理とまではいえない。
記事3(1996年4月25日号)
(1) 「保田弁護士がいう。『安部という人間は,患者のことをこれっぽちも考えていない人間です。』」 血友病患者でもある被告保田が,原告に対し,このような印象を持っていることを明らかにしたものに過ぎず,原告の置かれた立場,社会的地位に照らすと,この程度の人格の評価は,報道機関の表現として許される範囲内。
(2) 「保田弁護士がいう。『ミドリ十字のために最大の便宜を図り,その見返りに巨額の金を得ていたのが安部なんです。』『これは,私自身が当時の外資系メーカーの担当者から直接聞いたことなんですが,外資系メーカーに対して,治験(臨床試験)に必要な量以上のサンブルを要求し,さらに製法などの資料提供まで要求したそうです。そして,安部氏はそれをミドリ十字に流したというんです。その見返りとして,財団への寄附金など,巨額のカネが動いたわけです。 原告が,治験の対価としての金を要求したとの内容は真実であると認められるが,それ以外の,外資系の製薬会社に対し,治験に必要な量以上のサンプルを要求して,取得したサンプルをミドリ十字に渡すなど,ミドリ十字のために最大の便宜を図り,その見返りに巨額の金を原告が得ていたとの本件記事3の内容は,真実とは認められない。 被告新潮社は,原告が,多数の製薬会社から,多額の金銭的援助を受け,深いつながりを有していたと認識していたものと認められる。

原告も,郡司ファイルに書かれた内容と同じような認識を持っていたと,被告新潮社が考えることもそれなりに理由がある。


被告新潮社が,緊急輸入に反対した等の原告の行為について,ミドリ十字の便宜を図ったのではないかと考え,本件記事3を掲載したことには相当な理由がある
記事4〜6(1996年3月7日号、3月21日号、4月25日号)
「殺人被疑者たち」「大量殺人の被疑者たち」「血友病の大権威『安部英』がエイズ薬害で得た利益」など 原告が非加熱製剤の使用を継続したことについて,血友病患者が死んでも構わないとの認識を持っていたとは認められない
記事7(1996年4月25日号)
「驚くべき二面性」「彼は自分のいうことを聞く患者には丁寧でやさしい。しかし,何か気に入らないことがあるとコロッと変って敵意むきだしになる。そういう二面性のある人なんです」 多数の関係者に取材し,原告の性格を二面性があると論評したもので,その論評は,正当なものと認められる。



判決が示した薬害エイズの「真実」とは

エイズに関する危険性認識

 東京地裁民事36部は「1983年当時、エイズウイルスの感染力は非常に弱いと考えられており世界的に、非加熱第[因子製剤によるエイズウイルス感染は,深刻なものとは認識されていなかった」と認定している。 

 その根拠として挙げられているのは、以下のように、NHF(全米血友病財団)の誤った勧告だけ。CDC等の調査により、非加熱製剤を通じて血友病患者の約半数がエイズに感染しているおそれが明らかになっていたことは、全く無視されている。

(1) 1982年12月21日のNHF勧告に,非加熱第[因子製剤の投与を受けている患者については,治療の変更を推薦しないこと,決して必要なときに凝固因子治療の使用を控えるべきではないとの記載がある

(2) NHFは,1983年5月11日,ヘモフィリアニュースノートで,血友病患者のエイズ発症率は極めて低いので,患者や治療者に不安を与えたり治療の変更をしないで,非加熱第[因子製剤あるいはクリオの使用を継続するように勧告している

「エイズウイルスを検出できなかった

 東京地裁民事36部はさらに、以下のように、非加熱製剤の安全性の立証を求めるのではなく、「危険性を立証できていなかった」と認定している。これは薬害企業の主張そのままである。

 「加えて,エイズウイルスが同定され,血液製剤のエイズウイルス混入の検査が可能になったのは,昭和59年4月であるから,原告が非加熱第[因子製剤の使用中止に反対した当時は,非加熱第[因子製剤の中にエイズウイルスが混入しているか確認することも,また,加熱することでエイズウイルスが死滅するかを確認することも不可能であったし,当時は,エイズウイルス陽性が直ちに,エイズの発症に結びつくとも考えられていなかった。」

クリオ転換の否定

 「当時,専門家の間では,クリオヘの転換には,@クリオは原料である血液あるいは血漿が多数必要となること(丙1),A昭和58年7月当時,クリオを国産の製剤として供給するだけでは,需要を賄うことは不可能であったこと(乙55),Bクリオの大量かつ連続投与を必要とする血友病A患者の大出血や手術時には,しばしば血液循環障害を来すことがあったこと,C血友病の専門医ではない医師にクリオの使い方等について教育する必要があること(乙109,7頁)などの不都合が生じるおそれがあり(乙22,55,109,丙1)

加熱製剤緊急輸入の否定

 「加熱第[因子製剤の緊急輸入には,@加熱により,たんぱく質が変成され,副作用が出る可能性が考えられたこと(丙1),A米国で承認されたものの安全性の確認は十分なものとはいえなかったこと,B製剤の副作用には人種間の違いがあることなどの問題があると考えられていた。」

日本ではエイズの危険性は低い

 「エイズ研究班は,第1回会議と第2回会議の間に,エイズの症状を呈した血友病患者がいないか全国の施設に確認しているところ,エイズと疑われたのは,帝京大学症例の一例だけであり,エイズ研究班内部において,日本ではエイズの危険性は低いとの認識がされてもやむを得ないとの状況にあったと推認できる。

非加熱の使用継続は不合理とは言えない

 こうして東京地裁民事36部は、以上のように安部氏の言い分を次々に認め、結局、血液産業・専門医・厚生省が癒着して国際的に繰り広げられた「殺人政策」を、「当時の医療水準」として認め、非加熱製剤の使用継続を容認してしまう。

 「以上のような,当時の医療水準に照らすと,原告が,非加熱第[因子製剤を使用することの利益とエイズウイルスに感染することの不利益とを比較検討し,非加熱第[因子製剤の使用を継続することが,血友病患者にとって利益である判断したことも不相当,不合理とまではいえないものと認められる。

こんな判決は絶対に許せない!


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