職連学習会

国立大学の独法化

職員はどうなる? どうすべきか?

変わる国立大学の労使関係

−独法化論議の現段階

2001年5月10日 午後6時〜

話題提供 小池徳博氏

(日教組 国立大学・公的機関交流センター)


 独法化の具体像をめぐって「調査検討会議」の中間まとめが焦点になっている。独法化されると「学問の自由」「大学の自治」が侵されるといった教官の論理ではなく、「具体的な労使関係が生じてくることにどう対応するか」という職員の立場から独法化を考えるために行った学習会の報告です。

1.独法化で労使関係が変わる

 職員にとって独法化とは、労使関係が大きく変わるということです。

1)団体交渉権、労働協約権の復活

 一般職国家公務員はストライキを禁止され、団体交渉権が一部制限され、また労働協約締結権がない(「財政民主主義」の考え方から賃金自主決定権がない)ことから、その代償として人事院制度が作られた。労働条件の基本は法律で決められ、賃金や定員枠は国会での審議、承認を経て決められている。自主決定権がない代わりに人事院勧告制度によって一定の水準を保障されてきたともいえる。

 独法化されると、スト権は否認されたままではあるが団体交渉権と労働協約締結権が保障され、労働条件は大学当局との団体交渉で、各大学ごとに決定され、労働協約を結ぶことになる。

 人事院勧告で賃上げが決まるという制度も、総定員法によるシバリも、国家公務員給与表による賃金体系も適用されなくなる。

2)総額人件費上限制の枠組みは維持

 しかし、大学当局との交渉で定員も給与も自由に決められるというわけにはいかない。国から支給される人件費の総額は決められてしまう。 したがって、職員の賃上げと教官の賃上げが競合することになる。定員数も人件費の面から制限される。(単純な職員数だけでいえば、パート、派遣、非常勤職員を増やすことでかえって増える可能性もある。もちろん個々の賃金水準は大きく下がる)。

 国から支給される人件費の総額が変わるのは、中期目標を達成したかどうかの評価による。

 注意しなければならないのは国公法の給与法、総定員法の体系から外れるため、人件費を国庫支出のみに限る必要がなくなることだ。しかし、研究教育機関の性格上、法人は利潤追求を一義的にするものではなく、また特許料などの収入を上げるなどの“業績向上”があったとき総額としての国庫補助は逆に削られないか、さらに“収益部門”の利益を大学全体に還元する体制になるのかなど、制度設計上もまだ不確定な部分も多い。

3)「非公式な」労使関係から「公式な」労使関係へ

 これまでの組合は法的には「職員団体」であり、国公法上、大学当局は団体交渉に応じなければならない義務もない(だから大学側は“交渉”ではなく“陳情”であるという言葉にこだわる)。本来の交渉事項の多くが「管理運営事項」として交渉議題から除外されている。

 独立行政法人化されると、現状の、国が管理し、保障し、統制してきた中での教授会を中心とした大学運営を通じてのインフォーマルな労使関係から、職員多数の意志を反映した組合を通じてのフォーマルな労使関係の確立が、これからの国立大学では迫られてくる。

独立行政法人化でどう変わるか
事  項 一般職国家公務員 独立行政法人職員
一般の国家公務員 特定独立行政法人
(公務員型)
非特定独立行政法人
(非公務員型)
基本的な
適用法律等
国家公務員法
勤務時間法
給与法
国家公務員退職手当法
国家公務員倫理法
人事院規則  等
国家公務員法
独立行政法人通則法
国営企業及び特定独立行政法人等労働関係法
独立行政法人個別法
労働基準法
労働組合法  等
独立行政法人通則法
独立行政法人個別法
労働関係調整法
労働基準法
労働組合法  等
労働
基本権
団結権○
団体交渉権○

(労働協約締結権×)
争議権×
団結権○
団体交渉権○

(労働協約締結権○)
争議権×
[現業職員に同じ]
団結権○
団体交渉権○

(労働協約締結権○)
争議権○




身分 一般職国家公務員 一般職国家公務員 非国家公務員
任命
権者
任命権は各大臣等。
任命権者は任命権を部内の上級の職員に委任できる。
法人の長
採用・昇任 原則、競争試験 原則、競争試験
法人の長の判断により採用を行うことのできる範囲を拡大
法人の長が定める基準による
分限・懲戒 分限及び懲戒の事由を法定。休職の期間は人事院規則で定める 同  左 就業規則等による。
[解雇については労基法に制限あり]
定年 原則として60年
定年の特例は他の法律、人事院規則等による。
非現業職員に同じ
定年の特例は法人の長が定める。
就業規則等による。
任期 任期制は一般的に認められない。一般職職員の任期制法案を今国会に提出。 同  左 就業規則等による
[労基法による]
給与 人事院勧告に基づいて、給与法により決定 支給基準は法人が決定、主務大臣に届出、公表。
服 



服務 法令遵守義務、争議行為等禁止
信用失墜行為の禁止
守秘義務
職務専念義務
政治的行為の制限
私企業からの隔離
他の事業又は事務の関与制限
同  左 就業規則等による。
兼業 所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合を除き、営利企業役員等兼業や営利企業を自ら営むことを禁止。
 報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問、評議員を兼ね、他の事業に従事し、事務を行う場合は、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可を要する。
同  左。
ただし、兼業は法人の長が許可。役員兼業は法人の長が申出。
就業規則による。
勤務時間 勤務時間法による。(週40時間) 国家公務員の勤務時間等を考慮し、法人が規定を定め主務大臣に届出。[労基法による] 就業規則等による[労基法による]
福利厚生 医療保険年金 国家公務員共済組合法 同  左 同  左
退職手当 国家公務員退職手当法 同  左 法人が支給基準を決め、主務大臣に届出、公表。
定員管理 総定員法に基づき定員を法定 毎年国会に常勤職員数を報告 法人に委ねられている。


2.どこが経営方針を決めるのか

1)「調査検討会議」の発足

 中曽根文相は昨年5月26日の国立大学長会議で、「大学の自治」の尊重を条件に国立大学の独法化方針を正式に表明し、「大学の自治」尊重の具体策について大学関係者、「有識者」等による調査検討会議を設け、2001年度中にまとめることを打ち出した。

 国大協は昨年6月の総会で調査検討会議への参加を表明した。7月に調査検討会議が発足、独立行政法人の具体像をめぐって国大協と文部省との摺り合わせが始まった。

2)中間報告に向け、論点整理はじまる

 「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」は64人の委員(4委員会の全主査を含む約半数が国立大学関係者)を動員して4つの委員会を設けて審議し、8月ごろの中間報告に向けて各委員会の論点整理を始めている。

 この中で焦点になっているのが、独立法人化された国立大学の管理運営機構をどのように組み立てるか、ということである。

 「調査検討会議」組織業務委員会の第9回会議で配布された資料を見ていただきたい。
        (この資料をご覧いただくには、無償配布のAdobe Acrobat Readerが必要です)

 3頁のA−1案は現行と同じで、大学の教学・経営双方について評議会で審議し、学長が決定する。

 同じく3頁のA−2案は評議会に学外者を加えるというもの。(「教学」とは教育、研究に関わること。経営との明確な区別は困難)。

 6頁のC案は私大と同様、理事長が法人の長となり、経営事項を決定する。学長−評議会は教学に関することだけを審議・決定する。準民営化論である。

 B案はA案とC案の折衷案で、学長を法人の長とし、経営と教学の一体論を固持しつつその意志決定プロセスをある程度分離するもの。

 4頁のB−1案では、経営については学外者を含む運営協議会で審議し、教学については評議会で審議する。経営も教学も、決定するのは法人の長たる学長である。

 5頁のB−2案では、教学について審議する評議会の上に、学外者も含む運営審議会を設け、経営、教学について審議する。最終決定は学長が行う。

3)国大協が抱える二つのジレンマ

@ 国大協としてはA案に固執したいが、あまりこだわると、「いっそ民営化してしまえ」という議論に道を開くことになる。 ちなみに、国立大学民営化論は、私学関係者、旧通産(現・経済産業省)官僚グループ=自民党行革派、民主党若手(団塊世代グループ)、財界等々に根強くある。

A 独立行政法人通則法に基づく独法化は問題が多いが、現状の国立大学方式を除けば、通則法によらずして国の財政保障措置を得る法制度上の手段がない。

4)当面の節目と議論の方向性

@ このままいくと、国大協は意志決定不能の状態に陥りかねない。

A 「経営と教学の一致論は国立大学の“国体”である」というのが、文部科学省の立場。

B 6月12、13日に国大協総会、14日に国立大学学長会議が設定されている。これをメドに調査検討会議の「中間まとめ」を出す準備が進められている。

3.質疑応答・討論から

Q:文系の研究所はどうなるのでしょう?

A1:独立行政法人は独立採算制ではないので、「儲からない研究所はつぶれる」というようなことはありません。

A2:2年くらい前から校費の配分が大学に任され、ぶんどり合戦になっている。そういう場合に文系がしんどいのは事実。


Q:法人の理事長に官僚が天下ってくる可能性は?

A:むしろ、民間企業や私大の人が理事長になる可能性がある。 


Q:独立行政法人の職員の身分はどうなるのか?

A:公務員型の独立行政法人(特定独立行政法人)の場合は、今までどおり一般職の国家公務員。非公務員型の場合は、公務員ではなくなり、非特定独立行政法人の職員ということになります。


Q:尾身幸次・科学技術担当大臣が、国立大学に競争原理を持ち込むために非公務員型にすべきだと主張している(5月9日「読売」夕刊)。非公務員型になる可能性はあるのか?

A:可能性はある。人事制度委員会では、国大協も文部省も公務員型を主張しているが、産学共同研究推進の観点から非公務員型の主張もあり、まだ結論は出ていない。

  あえてシュミレートすれば、次の3つの場合が考えられる

  @ 国大協が法人化論議から脱落、独法化反対と決定した場合…

    国立大学に当事者能力なしと判断され、外部主導で民営化論を軸とする制度設計を開始する

  A 小泉内閣のもとでより急激な“構造改革論”(通産原案のようなもの)が力を持ち、文部科学省の抵抗が押さえ込まれた場合

  B 政権交代で民主党中軸の政権が生まれ民主党が仮にまとめた「国立大学民営化論」が政府方針化された場合


Q:東大病院の教官がなぜ民営化を要求するのか

 (97年3月、東大病院の次期病院長ら教授・助教授13名が、水野清・行革会議事務局長(当時)の事務所で、国家公務員からの離脱を主張、これがその後の国立大学の独立行政法人化論議への突破口となりました。)

A:民間の医者と比べると国立大の医者の給与は低いから、民営化すればもっと給与が高くなると思うのだろう。それ以上に国立機関として諸法令、手続きに縛られた管理運営機構のもとでは効率的な病院運営ができない、と判断したとも言える(東大病院だから言えること、ともいえる)


Q:東大は外国にあちこち海外拠点を作っている。そこで悪いことをやっているのではないか。

A:大いにありそうな話だ。


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