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2002年3月4日

『今後の都立図書館のあり方』都立図書館あり方検討委員会報告(2002年1月)について(見解)

図書館問題研究会全国委員会

 2001年4月から検討されていた、都立図書館あり方検討委員会の本報告『今後の都立図書館のあり方』(以下『あり方』と略)が2002年1月24日に東京都教育委員会に報告された。図書館問題研究会常任委員会は、2001年12月10日に「都立図書館の充実と東京の図書館資料の共同保存・共同利用政策を!」の要望書を提出したが、その要望に沿ったものではなかった。

 また、東京都議会文教委員会は、2月19日に計画の見直しを求める二請願を「保留」とし、文教委員会も、都立図書館の計画を完全に容認しなかった。

 『あり方』への常任委員会の見解を明らかにし、今後の東京都における図書館サービスの進展に役立てたい。

1 『あり方』の「報告にあたって」では、「都立図書館協議会や区市町村等の関係者にも検討状況を説明し、御意見を伺ってまいりました。」としている。しかし、図書館協議会へ諮問はなされず、協議会の場で出された意見を反映するものでもなかった。検討状況の説明も、区市町村立図書館の館長会や、教育委員会からの要請や要望書の提出があってはじめて行なわれ、しかも、一方的な説明で、その意見を反映しようとはしなかった。

 区市町村立図書館との役割分担を課題としているのであれば、区市町村立図書館との協議の場を設け、相互の課題と解決を図るべきである。

2 都立図書館の課題、そのサービスの目指すものが、『あり方』の第2章「都立図書館の現状と課題」、第3章「都立図書館の目指すもの」で挙げられている。しかし、この具体化を記すべき第3章の4「都立図書館の運営体制と機能」では、その方策が展開されるのではなく、都立中央図書館と都立多摩図書館の「一体的運営の強化」として、中央図書館への機能の集中が述べられる一方で、「地域分担から機能分担へ」という整合性の無い内容が述べられている。これは現有書庫の範囲でしか資料保存をしないことを前提としてしまい、「再活用」という名の資料処分自体を目的化する記述となっている。

3 『あり方』第3章の4で、都立中央図書館と都立多摩図書館の関係を、地域分担から機能分担へ転換することとしているが、これは、都立図書館資料の分断にしかならない。

 機能分担というのであれば、レファレンス図書館と相互協力センターなどと別けるべきである。ところが、都立多摩図書館の資料は、文学関係資料、多摩行政資料等、都立中央図書館と資料を別けているにすぎず、レファレンス機能を分断するだけである。

4 重複資料の収集を行わない理由として、資料費の現状と収集率の低下を挙げている。しかし、東京の区市町村を支援する都立図書館の資料費を確保することは、区市町村の図書館の資料費が十分でない現在、極めて重要であり、かつ、需要のあるものである。また、都立図書館は、レファレンス・サービスや調査研究を支援するのに必要な資料をそろえ、協力貸出しのためには、区市町村立図書館で収集しないような資料を中心として、別に資料を確保すべきである。

5 『あり方』では、現有書庫容量の限界が大きな課題となっている。まず、都立図書館及び、東京都の施設で書庫に転用できるものがないのかを精査する必要がある。さらに、書庫の問題は、都立図書館だけでなく、すべての区市町村立図書館でも問題となっている。これを契機に、都立図書館と区市町村立図書館との協働で、共同保存書庫の設置も含む、資料の共同保存・共同利用の政策の検討に着手すべきである。