毛虫から環境を考える

[つくば市並木小学校PTA会員有志「毛虫を知る会」において、1994年より2000年まで、文責:青木寛子にて配布していた資料より作成]

 「毛虫を知る会」が活動を始めたのは、1994年の五月。親子除草でのかぶれの被害がひどいという話がきっかけで、まず並木小の先生方に毛虫についてお話を伺いました。マイマイガの幼虫を手にとってかわいいでしょ、とおっしゃる先生方に、チャドクガの幼虫に触れると「かせられる(かゆくなる)」けれど、かかずに我慢すればすぐ治ることなど、教えていただきました。農業環境技術研究所の昆虫分類研究室にも毛虫の勉強をしにいきました。そして得た結論。
〇駆除方法として、手作業が確実である。

 以来、毎年二回、「毛虫を知る会」「何でも考える市民の会」の会員たちは、必要最小限のチャドクガの幼虫駆除を続けています。


《 チャドクガの幼虫について 》

 動植物、そして菌類のそれぞれの営みは、蜜バチやアリに限らずひとつひとつ観察すれば、不可思議なもの。この生物の不可思議を追求していけば、遺伝子や脳の学問につながり、これらの生物に支えられて農業や我々の食生活があり、人間の生活とこれらの生物との関わり方のバランスの問題が、生態系や人間の免疫系にも影響を及ぼしていると考えられます。ちょっと立ち止まってこれらの生物との付き合い方を振り返ってみる、毛虫についても、と考えています。

人里で人の皮膚にひどいかぶれを惹き起こす毛虫は、ほぼチャドクガのみ

 毛虫退治を始めた当初は、いろいろな毛虫を駆除対象にするつもりでしたが、資料を読み、専門家のお話を伺うと、ほとんどの毛虫は人に対して無害、人に害を及ぼす毛虫は、ドクガの仲間(ドクガチャドクガ)、カレハガの仲間(マツカレハ)、そしてイラガにほぼ限られるということです。このうちイラガの幼虫は、刺されるととても痛いのですが、すぐ治ります。マツカレハの幼虫は松の葉を食べる森林害虫。ドクガは、通常山間部にいるので、人里では被害にあいません。という訳で、駆除するとすれば、それはチャドクガの卵と幼虫であるということがわかりました。(ちなみに、毛虫たちの親であるチョウやガの羽の鱗粉りんぷんもかぶれの原因にはならないそうです。この場合も原因は毒刺毛。)

チャドクガのつく木は、サザンカと椿とビワとお茶の木

 アメリカシロヒトリの幼虫のつく樹木の種類は、360種ほどありますが、チャドクガの場合は、ほぼ上記の4種類に限られます。そのうえ卵から幼虫期の殆どを集団で過ごすので、駆除するのは容易です。幼虫はそれはもう、葉っぱの裏や表にぎっしりきちんと見事に並びます。幹や枝を移動するときも、連絡の都合でしょうか、ぎっしりくっつき合っています。音に敏感で、そばで手を叩くと頭をクィと持ち上げ、また実験では、一匹になってしまうと摂食活動を止やめてしまうそうです。

かぶれの原因は、毒刺毛(どくしもう)

 チャドクガの幼虫は大きくなっても25mm内外。細かいキラキラした毛に触れると、その中の毒刺毛がささってかぶれを起こします。掻くと、毛が折れて次々ささり、かぶれがひどくなります。チャドクガの幼虫に触れたと思ったら、薬を探すよりも何よりも、水でよく洗い流すことです。粘着テープなどでそっとささった毛を取り除くのも、毒刺毛のある毛虫に触れたとき一般に有効です。そして掻くのを我慢すれば早く治ります。

チャドクガにも天敵

 キイロタマゴバチ、ドクガヤドリバエなどチャドクガにも天敵がいろいろいます。タマゴバチというのは寄生蜂です。農薬散布に関しては、これら天敵をも殺してしまための弊害(ときどき大発生してしまう)が指摘されています。

チャドクガの駆除方法として、手作業+人海戦術にまさるものなし

 農薬を散布しても死骸が葉にしっかり残り、それが除かれないかぎり、死骸の毒刺がやはりかぶれを惹き起こします。以前、市内の公園などでもチャドクガの幼虫の観察をしましたが、農薬散布のあとも死骸はそのまま葉の上にあり、また生き残りもたくさんいました。また抜け殻の毒刺毛もかぶれを惹き起こします。

 並木小学校に関しては、前年にひきつづき大発生していた1994年5〜6月期でも実際2週間くらいでおおよそが駆除でき、中庭などは実質3回で完全に駆除できました。なお、同年8〜9月期の発生はわずか。またそれ以降も並木小学校内における発生はごくわずかです。(参考までに:経験から、駆除の初期に人数が多ければ、短い期間で駆除でき、一度ていねいに駆除すると、その後の発生は相当、減少します。)

チャドクガの発生は年2回

 チャドクガは卵で越冬、4月中旬に孵化、第一回目の幼虫は6月に根ぎわで蛹化('94年の観察では6月中〜下旬)、7月に成虫が羽化。第二回目の幼虫は8〜9月に現われ、10月に再び成虫となり越冬卵を産む。

 チャドクガの幼虫は向こうからわざわざやってくることはないので、こちらから近づかないのがまず第一。5〜7月、8〜9月のサザンカ、椿にはさわらないように。それでも子どもたちは遊ぶわけですから、そこのところは自分たちで駆除しよう、というのが私たちの基本的な考え方です。

 (ということで、毛虫を知る会では、学校並びにPTAのご理解を得て、チャドクガ幼虫の駆除をしています。作業は幼虫のついた葉の除去と若干の剪定です。古葉の除去と風通しの確保も大切です。)

 ご自宅などでも、サザンカ・ツバキ・お茶の木の下を幼児がくぐり抜けて遊ぶようなところでは、下部の葉を取り除いておくと被害を少なくすることができます。


【参考】

身支度:長袖の服・長ズボン・ゴム手袋(首にはタオルなどを巻く方がよい)

道 具:花鋏、あれば高枝鋏、段ボール箱など、段ボール箱などを密封するためのガムテープ、あればチャッカマンのようなバーナー

◆◆よく見る毛虫◆◆◆◆◆◆◆

・サクラやヤマモモその他の樹木によくいる全体が黒く、横に赤い点が並んでいて目がパンダの目のような形をしているのは、マイマイガの幼虫でさわっても大丈夫。

・明るい緑色の毛がふさふさしていて、横に青い色がついているのはクスサンという名の毛虫らしくこれも大丈夫。

◆◆さわるとかぶれる毛虫一般◆

背中にこぶ状の盛り上がりや歯ブラシ状の毛束があるもの、或いは警戒時に毛束が出てくるものには気をつけて!


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