特集・電車内のケータイオフ

(1)鉄道事業者あて要望書と回答から

報告者:電磁波問題市民研究会・測定担当

 電磁波問題市民研究会では、都営地下鉄や東京メトロの地下走行区間などでも、携帯電話やWiMAXなどの通信機器が使えるようになったことで、それに対する意見として、都営地下鉄や東京メトロをはじめ、首都圏の鉄道の21事業者、及び私鉄各社で構成する日本民営鉄道協会(民鉄協)に対して、「一両すべてで携帯電話の電源オフを求める車両を設定することを要望する」要望書を、2012年11月21日付で提出し、回答を求めました。
 その後、3事業者から回答が来ました。その回答者の内容を紹介しつつ、この件について改めて考察したいと思います。
 まず、回答が来たのはJR東日本、西武鉄道、横浜市営地下鉄の3事業者(2013年1月20日まで)です。その内容はどこも同じようなもので、「優先席及び優先席付近では携帯電話の電源をお切りいただくよう、車内アナウンス、ポスター、車両貼付のステッカーなどにより、お客さまに周知しております」(JR東日本)というものを代表し、告知はしていますというものでした。ただし、そのルールは徹底されていないとの認識も持っていました。
 また、横浜市営地下鉄では、2011年から「車内での携帯電話の取扱いについて見直しを求める声が多く寄せられていること」を踏まえて、「電源オフエリア」を設定したとのことです。しかしながら、こちらも浸透していないとの認識です。1編成の中で1両すべてを携帯電話オフに設定する意志は、現在のところ無いそうです。
 いずれの会社も、電磁波に対して過敏な人がいることについて知っているかについては、「電磁波などにより、体調を崩されている方がいらっしゃることにつきましては、お客さまからのご意見として伺っております」(西武鉄道)と承知はしているようです。
 さて、この回答を踏まえて、一気にすべての会社で1両すべてを電源オフはできないという鉄道各社に対して、「けしからん」とか「過敏な人もいるので、すぐに1両オフを導入しろ」とは強く言えないと考えています。というのは電車はかなり公共性の高いものなので、それを利用する人の意識を重視する必要があるからです。
 かつて、駅でたばこは普通に吸うことができました。しかし、煙の影響を受けるのが嫌だという人が少しずつ増え、山手線では原宿駅、目白駅の全面禁煙からスタートし、今では駅をはじめとした公共スペースでは、喫煙スペース以外ではたばこが吸えなくなっています。
 この禁煙の例を見ても、携帯電話をオフにする車両が欲しいという意識が高くなり、その状態を鉄道会社が理解していくことが重要だと考えます。
 その意味では、鉄道会社が電磁波に過敏な人がいることを理解していると回答したきたことは大きいと思います。以前であれば、国の基準以下なので、そのような話は聞いたことがないと、回答した可能性も考えられます。
 関西では、携帯電話オフ車両を阪急電車がすでに実施しており、その実績はあります。少しずつ、各界や広くユーザーに、携帯電話からの電磁波の影響について知ってもらい、その上で1両携帯電話オフ車両実現を願っていきたいと考えます。
 要望書を提出した鉄道事業者は以下のとおりです。東京メトロ、都営地下鉄、東急、小田急、京王、西武、東武、京成、新京成、京急、相鉄、つくばエクスプレス、りんかい線、みなとみらい線、東京モノレール、多摩モノレール、千葉モノレール、ゆりかもめ、横浜市交通局、JR東日本、JR東海

【当会から鉄道事業者あての要望書】

(東京メトロ、都営地下鉄あて)

2012年11月21日

○○様

電磁波間題市民研究会
代表 野村 修身

○○にて、一両すべてで携帯電話の電源オフを求める車両を設定することを要望します

 貴社益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。
 私たちは電磁波公害をなくすことを目的に研究・活動している環境NPOです。
 このたび貴社が駅構内および駅停車中の列車車内だけでなく、走行中の車内でもインターネットへの接続やEメールの送受信を可能にし、それを拡大しようとしていることに関して、いくつか疑問と懸念があるので、質問と要望をいたします。
 駅構内でインターネットへの接続やEメールの送受信を可能にするだけでなく、走行中も可能にすることは、貴社のサービス向上の1つであり、同時に事故や災害発生時などの情報収集の手段を確保するためであることは十分理解できます。しかしながら、地下鉄の駅構内、走行中の車内でインターネットへの接続やEメールの送受信できることは、あらゆるところに電波が飛び交うことでもあります。そのような状況であるため、携帯電話などの端末から発せられる電磁波(高周波)に対して敏感に感じる人がおり、その電磁波で健康を害した人もいます。携帯電話などからの電磁波と健康影響の関係を示す研究報告もあります。
 また、携帯電話などからの電磁波について、2011年5月31日に国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話などで使用する無線周波数電磁界を「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」(グループ2B)と評価する結果を発表しました。
 本来であれば公共性の高い場所である駅構内、車内では先に述べたリスクに対して軽減措置を取るべきなのにも関わらず、逆にリスクを増大させるのはいかがなものかと考えます。
 私たちは、電磁波に対して過敏な人たちが安心して生活できる社会の実現を願って本要望書を提出いたします。ご検討と誠意ある回答を11月30日までにいただけ るようお願い申し上げます。

1.携帯電話から発せられる電磁波に対して過敏に感じる人がいることをご存知でしょうか。
2.そのうえで、過敏に感じる人たちに対して何らかの対策を取っていますか。また、まだなら今後対策を取る考えはありますか。
3.現在、優先席近辺では携帯電話の電源をオフにするようアナウンスされていますが、携帯電話の電源オフはほとんど守られていない状態をご存知でしょうか。また、その状態に対して何らかの対策を取る考えはありますか。
4.阪急電車で実施しているように、一両すべてで携帯電話の電源オフを求める車両を設定する考えがありますか。
もしないなら、一両すべてで携帯電話の電源をオフの車両を取り入れることを強く要望します。

(その他の各鉄道事業者及び民鉄協あて)

2012年11月21日

○○様

電磁波間題市民研究会
代表 野村 修身

○○にて、一両すべてで携帯電話の電源オフを求める車両を設定することを要望します

 貴社益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。
 私たちは電磁波公害をなくすことを目的に研究・活動している環境NPOです。
 このたび東京メトロ、および都営地下鉄が駅構内、および駅停車中の列車車内だけでなく、走行中の車内でもインターネットへの接続やEメールの送受信を可能にし、それを拡大しようとしていることに関連して、貴社の携帯電話電源オフについて、いくつか疑問があるので、質問と要望をいたします。
 現在貴社では、優先席近辺でのみ携帯電話の電源をオフにするよう求めていますが、ほとんど守られていません。それは本来、電源がオフで電波が発生しない場所であるはずなのに、電磁波が飛び交うことを意味します。
 また、金属で覆われた車両は電波が外に漏れにくく、複数の携帯電話が同時に発した電磁波は重複して反射しているとする東北大学本堂毅准教授の研究もあります。つまり、電車の車内は一部のエリアで携帯電話の電源オフをしたとしても、車内には電磁波が飛び交うことを意味します。
 そのような状況であるため、携帯電話などの端末から発せられる電磁波(高周波)に対して敏感に感じる人がおり、その電磁波で健康を害した人もいます。携帯電話などからの電磁波と健康影響の関係を示す研究報告もあります。

<これ以下の文言は、東京メトロ、都営地下鉄あての要望書と同じなので省略します>



【横浜市交通局からの回答】

 この度は、貴重なご意見をお寄せいただきまして有難うございます。
 横浜市営地下鉄では、総務省からの「携帯電話端末及びPHS端末の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」を受け、平成16年から車内では携帯電話の電源をお切りいただく取扱いとさせていただいておりました。しかしながら、その後、多くのお客様から車内での携帯電話の取扱いについて見直しを求めるご要望をいただいたこともあり、心臓ペースメーカー等の医療機器を装着されたお客様など、電源オフエリアを必要とされる方々が、どの車両にも安心してご乗車いただけるよう昨年から各車両に「電源オフエリア」と「マナーモードエリア」を設けております。
 ご提案いただいた携帯電源オフ号車につきましては、編成が短いこともあり導入は難しいものと考えております。
 市営地下鉄では、近郊鉄道会社と同様の取扱いに変更し、電源オフエリアの表示方法の見直しや構内放送、ポスターの掲示等、周知を行ってまいりましたが、ご指摘のとおり、まだまだお客様に浸透していないところもございます。
 そのため、表示方法等について、どなたにも分かりやすくなるよう見直しの検討を進めており、お客様からのご意見も参考にさせていただきます。
 総務省の指針に基づいて、電源オフエリアを必要とされる方や携帯電話をご利用になられるお客様双方にご満足いただける車内環境の提供に取組んでまいります。

平成24年12月6日
横浜市交通局
高速鉄道本部運転課長 山内 義則



【JR東日本からの回答】

 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 平素は弊社をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。このたびのご要望につきまして、回答させていただきます。

 ご要望1につきまして、携帯電話から発せられる電磁波について過敏に感じられる方がいらっしゃることは、貴重なご意見として承らせていただきます。
 ご要望2につきまして、弊社の携帯電話マナーに関する呼びかけにつきましては、弊社を含む関東の鉄道事業者とともに内容を統一し、「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。」と呼びかけることとしております。
 ご要望3につきまして、各社で統一した呼びかけを行うことにより、よりお客さまに浸透し、わかりやすいご案内になるとの考えのもとで行っております。このたびお客さまより頂戴しました貴重なご意見を参考とさせていただき、より効果的なマナー向上の呼びかけを検討し、引き続きサービス向上に努めてまいります。
 ご要望4につきまして、携帯電話電源オフ車両など専用車両の設定につきましては、列車内混雑率、ホーム混雑率、ホーム上の幅や階段エスカレータ等の設備によるお客さまの流動条件など、様々な項目の検討を行う必要があり、また専用車両をご利用頂けないお客さまに一方的な制約を強いる側面もあることから、お客さまの十分なご理解を得る必要があると認識しております。女性専用車両につきましては、痴漢の被害にあわれたお困りのお客さまが後を絶たないことや、お客さまからの強い要望があることから、上記諸条件を慎重に検討したうえで数線区に限定して導入しておりますが、現時点では、女性専用車両以外の専用車両を導入するという判断にまでは至っていないのが実情でございます。

 今後も、みなさまに愛され親しまれるJR東日本を目指してまいりますので、引き続きご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ではございますが、大久保様のますますのご健勝をお祈り申し上げます。

敬具

平成24年12月25日
大久保貞利様

東日本旅客鉄道株式会社
サービス品質改革部



【西武鉄道からの回答】

2012年12月27日

電磁波問題市民研究会
大久保貞利さま

西武鉄道株式会社
管理部広報担当

 拝啓 皆さまにおかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 このたびいただきました弊社社長宛のご要望につきまして、弊社の代表窓口である管理部広報担当より下記のとおりご回答申し上げます。

敬具

【ご要望および回答】
 1.携帯電話から発せられる電磁波に対して過敏に感じる人がいることをご存知でしょうか。
 回答:電磁波などにより、体調を崩される方がいらっしゃることにつきましては、お客さまからのご意見として伺っております。
 2.そのうえで、過敏に感じる人たちに対して何らかの対策をとっていますか。また、まだなら今後対策を取る考えはありますか。
 回答:弊社におきましては、お年寄りの方、体の不自由な方、乳幼児をお連れの方、妊娠をされている方、医療機器をご使用の方にも、安心して列車にご乗車いただけるよう、全車両に優先席を設けており、優先席及び優先席付近では携帯電話の電源をお切りいただくよう、車内アナウンス、ポスター、車両貼付のステッカーなどにより、お客さまに周知しております。また、エリアを明確にするため、優先席付近のつり革の色を変更する対策もあわせて実施しており、これらの取り組みが、対策となるものと考えております。
 3.現在、優先席付近では携帯電話の電源をオフにするようアナウンスされていますが、携帯電話の電源オフはほとんど守られていない状態をご存知でしょうか。ま たその状態に対して何らかの対策を取る考えはありますか。
 回答:優先席及び優先席付近におきまして、携帯電話を使用しているお客さまがたびたびいらっしゃることは認識しております。車掌の車内巡回時に携帯電話を使用しているお客さまを見掛けた際には、電源をお切りいただくよう、お願いしております。
 4.阪急電車で実施しているように、一両すべてで携帯電話の電源オフを求める車両を設定する考えがありますか。
 回答:弊社では、女性専用車や弱冷房車を設定しており、これ以上の設定車両の拡大は、お客さまの乗車位置の制限、一部車両への集中混雑など、サービスの低下となる可能性が高いことが考えられるため、一両への拡大はせずに、全車両に優先席を設け、優先席付近では、携帯電話の電源をお切りいただくよう、周知徹底を図ってまいります。

 西武鉄道では今後もお客さまの安全・安心に配慮してまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ではございますが、皆さまのご健康とますますのご活躍をお祈り申し上げます。

以上


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