一般白熱電球の製造と販売を要望

報告者:電磁波問題市民研究会・測定担当

 東芝ライテック宛に「一般白熱電球の、製造と販売の再開を要望する」要望書を提出し、その回答が来ました。
 回答は、企業側からの視点でみると、突っ込まれるところを極力減らした、いわゆる「模範解答」のようなものです。その答えを要約すると、電磁波に対して過敏な人がいるのは「直接」ではなくメディアを通じて「間接的に」知っている。しかし、白熱球の製造を中止するのは世界的な流れであり、それは他の力によるもので、止められないというものです。
 ここで、改めて白熱球について考えてみたいと思います。といっても、歴史や技術的なことではなく、白熱球の重要性についてです。
 以前の測定の依頼は、高圧送電線が近くにあるが大丈夫でしょうか、というものが多くありました。そしてその後、近くに携帯電話基地局があるが、その影響は?というものになりました。
 携帯電話基地局が近いという家やマンションに測定に行き、そこで出くわすのが家の中の照明器具からの強い電磁波です。その発生源は、この会報でも何度も触れていますが、インバーター式の蛍光灯です。そこから発生する高周波は携帯電話基地局より数倍高いケースが多くありました。
 そこで、測定を依頼した方に、この照明はやめて白熱球のものに変えた方がいいですよとアドバイスをしました。ところが、その後、白熱球の照明器具がほとんど売ってないのです。どうすればいいでしょうか?と問い合わせがよくありました。
 そこで、白熱球の照明器具が激減しているのを実感しました。東芝ライテックは2010年に一般白熱球の生産を中止しました。東芝ライテックだけでなく、三菱電機照明、パナソニックも一般白熱球の生産を終了しています。現在は国産メーカーでは、業務用の白熱球を生産しているだけです。
 白熱球に替わる照明機器として、LED電球があります。LEDは消費電力が少ないので、1つの電球の価格が高くても、長期に考えれば安くつくという論理があります。確かに論理的にはそうでしょう。
 ただし、電球が切れてすぐに交換が必要なとき、目の前のお金に困っている人が、長期では安くなるからと、いきなり高価なLED電球を買えるでしょうか。電磁波に関してだけでなく、弱者のためにも、安価な白熱球を残していくことは必要であると考えます。
 幸か不幸か、国産はありませんが、外国製の白熱球があるので、全く手に入らないことはありません。ただし、それでよかったとはならないでしょう。その海外製品もいつなくなるかわかりません。コストがあわないと、輸入がなくなる可能性もないとはいえません。一般白熱球については今後を見守っていきたいと思います。
 さて、東芝ライテックからの回答にも、注目点があります。先にも記しましたが、間接的にですが、電磁波に対して過敏な人がいることを知っていることです。知っているということは、無視はできないことになります。一般白熱球については生産再開は難しいかもしれませんが、今回要望書を出したように、声を上げていくことは重要だと考えます。




<当会からの要望書>

2012年11月21日

東芝ライテック株式会社 取締役社長 渋谷徹様

電磁波間題市民研究会
代表 野村 修身

一般白熱電球の、製造と販売の再開を要望します

 貴社益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。
 私たちは電磁波公害をなくすことを目的に研究・活動している環境NPOです。
 2010年3月17日に、貴社が一般白熱電球の製造販売を中止したことに関して、いくつか疑問と懸念があるので、質問と要望をいたします。
 白熱球は蛍光灯やLEDに比較して消費電力が大きく、これらを削減すれば電力消費を減らし、且つ、CO2削減、地球温暖化の抑制に寄与できることは十分理解できます。
 しかしながら、蛍光灯やインバーター式蛍光灯などから発せられる電磁波に対して敏感に感じる人がいたり、その電磁波で健康を害した人もいます。電磁波に過敏に反応する人々は、室内の照明を電磁波の発生が少ない白熱球に頼らざるを得ない状態です。
 ならばLED照明にすればという意見もあるでしょうが、LED照明に関しては、日本照明委員会によると、皮膚への生理的ダメージやメラトニン分泌などへの生理的影響も懸念されています。(照明学会誌 4月号(VOL.94 NO.4 2010))
 また、白熱電球をの製造を中止することは、東芝の発祥事業の1つであり、当時の貴社の名前にもある白熱球を製造を意味する白熱舎の名前と意志を捨て去ることでもあるのではないでしょうか。
 企業は利益を追求することを目的とするのでしょうが、自社の利益(ベネフィット)だけでなく、社会の利益(ベネフィット)へも寄与すべきではないでしょうか。
私たちは、電磁波に対して過敏な人たちが安心して生活できる社会の実現を願って本要望書を提出いたします。ご検討と誠意ある回答を11月30日までにいただけるようお願い申し上げます。

  1. 蛍光灯やインバーター式蛍光灯などから発せられる電磁波に対して、過敏に感じる人がいることをご存知でしょうか。

  2. 蛍光灯やインバーター式蛍光灯などから発せられる電磁波に対して、過敏に感じる人たちは、白熱電球の元でしか生活できないことをご存知でしょうか。

  3. 一度製造販売を中止した一般白熱電球の製造販売の再開を強く要望します。




<メーカーからの回答書>

平成24年12月28日

電磁波問題市民研究会
事務局長 大久保貞利 様

神奈川県横須賀市船越町1−201−1
東芝ライテック株式会社
取締役総務部長 村上 顕郎

拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
11月21日にご質問をいただきました件につき、つぎのとおり回答を申し上げます。

敬具

  1. 蛍光灯やインバータ一式蛍光灯などから発せられる電磁波に対して、過敏に感じる人がいることをご存知ですか。
    (回答)電磁波過敏症と言われる過敏に感じる方がおられるとのお話しは書籍やインターネットなどを通じて認識をしております。

  2. 蛍光灯やインバータ一式蛍光灯などから発せられる電磁波に対して、過敏に感じる人たちは、白熱電球の元でしか生活できないことをご存知ですか。
    (回答)蛍光灯を使用すると電磁波を過敏に感じる方や白熱電球では出にくいとの情報についてインターネットなどを通じて認識はしております。

  3. 一度製造販売を中止した一般白熱電球の製造販売の再開を強く希望します。
    (回答)当社では、地球温暖防止のためCo2排出量が多くなる白熱電球の製造中止をいたしました。これは世界的流れであり、すでに欧州では白熱電球を消費電力の多いものから順次禁止しております。しかしながら、白熱電球が必要な用途もあるとのご要望から耐震用電球など、特殊用途向けの白熱電球は販売を続けております。
    一般照明用の白熱電球はすでに販売を中止しておりますので、お手数ですが、耐震用電球などの白熱電球のご購入を検討いただければと思います。

    以上


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