<海外情報>

(抄訳:TOKAI)

携帯電話はヒトの大脳血流に影響する

フィンランドの研究者が発表

研究者;Sargo Aalto,Christian Haaarala,Anna Bruck,Hannu Sipila,Heikki Hamalainenand Juha O Rinne(トゥルク大学PETセンタ−、アボ大学アボアカデミ−心理学部、トゥルク大学認識神経科学センタ−、トゥルク大学心理学部、フィンランド)

<概要>携帯電話は使用中、高周波電磁波(EMF)を周辺に発する。その電磁波のヒトへの脳生理学上の影響(効果)はよくわかっていない。私たち研究チ−ムは、PET(陽電子放射断層撮影法)処理を使って、健康なヒトのrCBF(局所大脳血流)への携帯電話の影響を研究した。12名の被験者に、コンピュ−タ管理による言語に基づく作動記憶作業を行なわせるという、二重盲検平衡研究方式を使い、PETデ−タを得た。探査的かつ客観的な、3次元統計分析によってわかったことは、携帯電話を使うと、携帯アンテナ直下の側頭部大脳皮質のrCBFが局所的に減少するし、頭部前正面の大脳皮質のrCBFは、かすかに増大することがわかった。携帯電話の電磁波が、ヒトのrCBFに影響を与えることを示唆した、初めての証拠を私たちの研究結果は示した。今回の研究結果は、EMFは神経活動に変化をもたらすという仮説と一致する。

序論
 稼働中の携帯電話は、パルス化された無線周波数のEMF(電磁場)を放出する。放出されたEMFの大部分は、ユ−ザ−の頭部に吸収される(Schonbornら1998)。現在、携帯電話はとても普及しているが、ヒトの生体内(in vivo)における、脳生理学上の携帯電話の影響を懸念するデ−タは欠乏している。いくつかのEEG(脳波検査)研究で、EMFが脳内電気活動に影響を与えるという研究報告がある(Reiserら1995;Croftら2002)。とりわけ、認識作業にEMFは影響を与えると、研究報告は指摘している(Eulitzら1998;Freudeら1998, 2000;Hamblinら2004)。さらに、いくつかの行動研究では、EMFが認識作業への促進効果があることを示唆している(Preeceら1999; Smythe and Costall2003; Koivistoら2000a,b)。一方、別の研究では、その促進効果を示すのに失敗した研究もいくつかある(Haaralaら2003b、2004)。私たちの前回の研究はPETを使ったが、携帯電話の電磁波がrCBFに影響を与える、決定的証拠は見出せなかった。しかしながら、前回の研究では、携帯電話のバッテリ−から出る知覚できないノイズが、頭部の両側の聴覚大脳皮質のrCBFに影響を与えたように見えた(Haaralaら2003a)。前回の研究は、EMFと複合的な階乗式デザイン(五つの異なった作業からなるデザイン)に基づく、認識作業との間の相互関係を調べるのがねらいだったので、EMFの主要な影響と関係する統計学的価値はあまり強くない。
 今回の研究のねらいは、前回の研究より、本質的にもっと感覚的かつ実験的デザインを使っており、携帯電話から放出される電磁波がrCBFに、主にどのような影響を与えるかを検査することにあった。携帯電話のバッテリ−から出る、ノイズの混乱要因となる影響については、無音の外部電源を使うことで排除した。被験者の心理デザインを含んだ二重盲検平衡研究は、12名の健常被験者に、簡単なコンピュ−タ管理された作動記憶作業を行なわせ、その間に、被験者をPETスキャンさせるという方式だ。しかも、被験者は、前半は携帯電話をオンにしてEMFを放射させる状態にし、後半は偽の状態(実際には電源入っていないが被験者は知らない状態)にして、PETスキャンした。作動記憶作業は“基本作業”として選ばれた。なぜならば、安定した簡単な作業は、PETスキャン中のrCBFのランダム・バリエ−ションを最小化するからである。そして、作動記憶作業と関連する反応時間やエラ−率は、曝露条件間の行動等質性をテストするために使われる。さらに、初期の実験では、特に認識作業中にEMFの影響があると報告している。

研究結果
 EMF曝露の影響テストで得られた、統計学的分析によると、携帯電話のアンテナの位置にあたる、こめかみ内部の大脳皮質(左の紡錘状の脳回=脳のひだの高まり部分)のrCBFが減少することがわかった。しかし、主に左右の上部の脳回や中央正面の脳回のrCBFは増加した。概して、SARが高いエリアに限定して調べた、追加の影響分析によると、左の紡錘状の脳回部分で、rCBFが減少する塊部分があるのがわかった。統計学的分析結果を、さらに詳細に描写したり局部を解剖分析した。EMFは反応時間には影響しないし、反応の正確さにも影響しない。また、反応時間や反応の正確さは、両方の条件の間の時間とかなり相関関係があるように機能する。

結論
 今回の研究は、携帯電話から放射されるEMFは、本質的にrCBFに変化をもたらすことを示唆する、初めての脳処理研究であることは間違いない。今回の研究結果の背後にある携帯電話のメカニズムが明確でないにしても、今回の研究結果は、EMFは神経活動に変化をもたらすという解釈と矛盾しない。しかしながら、今回の研究結果が、携帯電話の使用が、神経活動やrCBFの一時的な激しい変化による通常の認識作用以上に、より脳細胞に有害であるとする証拠は、提供していないことは強調したい。


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