携帯基地局裁判の高等裁判所の判断が日本とフランスで正反対

□札幌高等裁判所の判決
 「たった一人の反対でも基地局阻止できる」とした、画期的な札幌地方裁判所の判決が、9ヵ月でひっくり返されました。
 札幌市南区のマンションで、ソフトバンクモバイルの基地局設置工事に、住民たちが反対した訴訟で、2009年2月27日に札幌高等裁判所は、(1)原判決は取り消す、(2)管理組合が賃借権を有することを確認する、(3)工事を妨害させてはならない、との判決を出しました。
 この判決は、「共有部分の賃貸借につき民法602条の適用は排除され、同条に定めた期間内(10年)でなければならないものではない」とし、「工事によって、共有部分に形状または効用の著しい変更が生じるとは認められない」としました。また、「本件議案の(管理組合)の可決には、普通議決で足りるから、賛成が45でも過半数に達している」と、どこまでも札幌地方裁判所で出した原判決を否定しました。

□最高裁判所に上告
 基地局反対派住民は、「区分所有法がいかにザル法かよくわかった」と感想を述べ、この判決を不服として上告手続きを行ないました。このあと、どのような展開になるか予断を許しませんが、とりあえず、基地局設置工事は着手されません。それにしても、フランスとの落差を感じざるを得ません。

□フランスでは次々と勝訴判決出る
 そんな日本を尻目に、フランスでは、「携帯電話基地局の撤去を求める裁判」で、次々と勝訴判決が出ています。その中でも、2009年2月4日にベルサイユ高等裁判所で出た判決は、元の判決に続き、住民側を勝訴とする画期的な判決です。その内容は次ぺ−ジに詳細に紹介しますが、(1)基地局を撤去すること、(2)撤去しない場合は遅延料として1日につき500ユ−ロ(約6万3200円)を支払うこと、(3)提訴した3組の夫妻に、精神的苦痛の賠償金として、7000ユ−ロ(約88万5千円)を支払うことを命じました。

□予防原則への態度が日仏の差
 2008年からこれまでに、フランスでは、立て続けに4件の勝訴判決が出ました。この中の1つは「建設前の差し止め判決」です。この判決は、フランス司法が予防原則を認め始めたことと関係します。


会報第57号インデックスページに戻る