世界保健機関(WHO)「予防方策フレームワーク草案」をどのように生かすべきか

電力会社に「安全論」展開の道具とさせないために

□WHOにとって「科学的不確実分野」のメインを電磁波問題が占めている
 2004年10月(ウェブサイトは11月2日に公開)に発表されたWHO(世界保健機関)の「科学的不確実分野における予防方策展開のためのフレ−ムワ−ク(対策草案)」は、前号で紹介したように総論としての「予防方策の全体的枠組み(フレ−ムワ−ク)」と追加資料から成っている。総論で展開されている内容は「科学的不確実分野」総体に対するWHOとしての見解であり、電磁波を特定対象にしたものではない。しかし、追加資料の3つ(「費用便益分析と費用効果分析のための技術的考察」「極低周波電磁波分野のケ−ススタディ」「高周波電磁波分野のケ−ススタディ」)のうちの2つは電磁波にタ−ゲットを絞っている。これは「科学的不確実分野」の中で、電磁波問題がいかに大きな比重を占めているかを物語っている。

□安全ではないからこそ電磁波に「予防方策フレ−ムワ−ク」が必要なのだ
 次ペ−ジに追加資料の「極低周波電磁波分野のケ−ススタディ」を紹介する。もう一つの追加資料の「高周波電磁波分野のケ−ススタディ」は次号で紹介する予定だ。
 当初、WHOが「極低周波で4ミリガウス程度の環境基準」を設定するのではないかという期待があったが、残念ながら実現しなかった。そのため電力会社側はほっとしているであろうし、「電磁波安全論」の材料として今回の対策草案を利用するであろう。しかし、予防的方策としてWHOが対策草案を出したこと自体が、「電磁波は決して安全ではない」ことの証左なのである。それと、情報の透明性や公開性と決定への利害関係者の参加や関与が必要だとしている。それこそ、私たちは強調して活用すべきであろう。


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