海外情報

WHOウェブサイトより
(抄訳 TOKAI)

予防的枠組みに関するWHOの最新の活動

 この声明は人の健康を守るために「予防的な枠組み(Precautionary Framework)」をつくるためのWHOの計画を明らかにするために出された。

 WHOは人々の健康を守るための予防的方策を採用するための一般的なフレ−ムワ−ク(枠組み)をつくる目的で、幅広く、開放的で、透明なプロセスづくりに着手した。この予防的フレ−ムワ−クはすべての健康問題をカバ−するものである。そのためこのフレ−ムワ−クはWHO国際EMFプロジェクトのスタッフによって進められるが、WHOの他の重要な部門と連携して進められる。EMFを含めた多くの健康問題のためのフレ−ムワ−クをどのように取り入れるかに関する様々な事例研究がWHOの他の部門にあるからだ。
 このフレ−ムワ−クづくりの一つとして、WHOは2003年2月に、欧州委員会(EC)及び米国国立環境衛生科学研究所(NIEHS)と共同でルクセンブルグで国際的なワ−クショップを開催した。このワ−クショップでは、様々な立場の専門家から多くの意見を聞いた。このワ−クショップで出された意見に基づいて、WHOはいろんな段階のリスクマネジメントの過程で、予防策が果たす役割についての包括的なリスクマネジメントのフレ−ムワ−クの理解を深めた。
 このフレ−ムワ−クにおいて、予防方策の採用はプロセスを通して考慮されるのであって、特定の状況に答えて実施するものではない。
 このフレ−ムワ−クが完成した場合はただちにWHOはWHO加盟の国々に、各国の条件とニ−ズに合わせてフレ−ムワ−クを採用する方法についての情報を提供する目的で、極低周波と高周波の両方の電磁波用の一般的事例研究の開発を進める。この2段階のプロセスはルクセンブルグのワ−キング・グル−プが提案したものだ。
 フレ−ムワ−ク案は、ルクセンブルグのワ−キング・グル−プとWHO本部とEMFプロジェクトの国際諮問委員会と世界の重要な専門家に、それぞれレビュ−(検討材料)として利用された。このフレ−ムワ−ク案は現在、WHO・EMFプロジェクトのウェブサイト(www.who.int/emf)に掲載されパブリックコメントに供されている。私たちはこのプロセスにすべての関係者が積極的に参加されことを望む。どうぞ、2003年6月30日までに担当のラリ−・ゴ−ルドサタイン〈goldsteinl@who.int〉までコメントを寄せてください。



<電磁波問題市民研究会の解説>
 電磁波研会報22号で「2月24日〜26日のWHO・EC(EU)・NIEHS合同のルクセンブルグ会議で電磁波に予防原則適用決定」と報じたが、最新のマイクロウェーブニュース(MWN)がこれを否定する記事を載せた。
 これがMWNの誤報なのか、マイケル・レパチョリらWHO国際EMFプロジェクト指導部の姿勢が変わったのかは現時点ではわからない。
 おそらくスウェ−デンのカロリンスカ研究所のアンダ−ス・ア−ルボム博士が言うように「本部が出した方針書案には予防原則を適用すべきと書いてあったが、会議では肝心のところはなにも決まらなかった」というのが本当のところであろう。
 しかし予防原則の手前の「枠組みづくり」であれ、予防原則の方向でWHOとしても取り組まざるを得ない段階であることはたしかだ。
 それと現在、マイケル・レパチョリとリ−カ・カイフェッツの共同責任体制なのがカイフェッツが抜けることの重要さだ。レパチョリはオ−ストラリア出身だが、以前から「企業寄り姿勢」が批判されていた。
 一方、カイフェッツはEPRI(電力研究所)出身だが筋が良く、今回の方針書案も彼女が起草した。その彼女が前から希望していたとはいえこの時期に辞めるのは不可解だ。WHOは一枚岩でなく、内部では各国や産業界の思惑が乱れ飛ぶところなので今後も注目したい。
 だが大事なことは、今回の日本の全国疫学調査結果を見るまでもなく、電磁波の健康影響を示す研究デ−タは増えており、時代の趨勢として予防原則に向かう動きは変わらないであろう。


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