海外情報

マイクロウェーブ・ニュース
2003年5〜6月号より
(抄訳 TOKAI)

レパチョリが「予防原則適用宣言」否定

しかし予防原則の発動に向けた動きは止まらない

□わずか3ヵ月でなにがあったのか?
 WHO(世界保健機関)国際EMFプロジェクトの責任者であるマイケル・レパチョリ(Michael Repacholi)はMWN(マイクロウェ-ブ・ニュ-ス)に対し、「WHOは電磁波に対する予防原則適用宣言(invoke)はしないことを決めた」と語った。
 極低周波(ELF)と高周波(RF)の電磁波の両分野に対し予防原則の適用を求める方針書案を発表してまだ3ヵ月も経たないのに、WHOはこの(ルクセンブルグ会議)方針書案を後退させた。方針書案(ドラフト)はルクセンブルグで2月24日〜26日開かれたWHOのワ−クショップで配布されたものだ。出席者は招待された人たちだ。
 レパチョリは5月22日のEメ−ルで「私たちがルクセンブルグのワ−クショップで配布した方針書案は、意見を求めるための討論用ドラフトにすぎなかった。そしてそのねらいは成功した。」と書いている。

□この“変身”に驚く人は多い
 しかしこの「後退」の決定はルクセンブルグ会議に参加した多くの人たちから驚きをもって受けとめられた。ベルンにあるスイス連邦公衆衛生局のミルヤ−ナ・モ−ゼル(Mirjana Moser)はMWNにこう語った。「私は本当に驚いている。それは予防原則は実施される(invoke)べきだということは少なくても極低周波分野については大体ルクセンブルグで合意したからだ」。
 米国ロ−ウェルにあるマサチュセッツ大学のジョエル・ティックナ−(Joel Tickner)は次のように語った。「配布された方針書案やWHOEMFプロジェクトのスタッフがルクセンブルグで話したことからすれば、WHOEMFプロジェクトが電磁波に予防原則を発動する予定であったと理解する。とくに高周波はともかく、極低周波電磁波に予防原則を適用することは絶対に問題ないはずだ。」
 英国北部で活動する市民団体「リボルト」のマイク・オキャロル(Mike O'Carroll)教授は同じ思いで「(ルクセンブルグで)レパチョリは明快だった。かれは会議で予防原則を実施すべきかを論議するのは時間の無駄で、どのように予防原則は実施すべきか、の方向で指揮を振っていた。」と語った。

□別の意見を述べる人たちもいる
 何人かの人たちは違う見解を述べた。フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学のケネス・フォスタ−(Kenneth Foster)はこうコメントした。「私はまったく驚かない。あれは新しい考えの初めての概念提起だった。あの時の何人かによる長い討論の後、レパチョリは私にこう明確に言った。彼は電磁波に予防原則を適用実施しようというのではなく、予防原則を使うために必要な骨組み(大枠)をどうつくっていくかに努めている、と。予防原則の発動はそれができた後の問題だ。」
 ストックホルムにあるカロリンスカ研究所のアンダ−ス・ア−ルボムは次のように述べた。「私は、今は過渡期でまだ何も決まっていないというのが本当のところだと考えている。方針書案(ドラフト)ではたしかに予防原則は極低周波電磁波に適用すべきだと提案している。」

□方針書案でははっきり書いている
 2月のルクセンブルグワ−クショップで出た方針書案ではこのようにはっきりと書いてある。
「EMFの状況においては、極低周波と高周波の電磁波の両方に予防原則を実施するに十分な証拠があるし、基準に備える十分な証拠がある。」

 WHOのリ−カ・カイフェッツ(Leeka Kheifets)が書いた方針書案はさらにこう続けている。
「この結論は次のようないくつかのファクタ−を基礎にしている。
●IARC(国際がん研究所機関)が2001年に極低周波磁場を小児白血病疫学研究を基に「発がん可能性あり(possible)」と分類。
●確立された国際的ガイドラインと同等レベルの電磁波が携帯電話から出ている。
●いくつかの低コストによる曝露低減意見を取り上げる可能性。

□WHO側の言い分
 WHOの現在の考えと2月にルクセンブルグで出した方針書案との一貫性はあるのかと尋ねたところ、レパチョリとカイフェッツは共同Eメ−ルこう答えた。「私たちは考えを変えていませんし、態度を180度変えてもいません。しかし、私たちはあらゆる段階で用心策が役割を果たせるかというわかりやすいリスク管理のための枠組みを発展させることのほうに重点を置いている。したがって予防原則の実施の必要性はない。予防原則はいつも考慮しなくてはならない課題ではある。この枠組み(frame work)が出来上がったならば、その後でEMFやその他のケ−スに予防原則を適用するつもりだ。」
 レパチョリは、殺虫剤や狂牛病やSARSやその他の問題にも取り組む予定だという。彼は「EMFの事例研究は今後2ヵ月ぐらいで完了する」と言った。
 EMF曝露のための政策勧告に関しては十分準備した上で来年のWHO作業グル−プに提示される、とレパチョリは語った。
 5月2日、レパチョリとカイフェッツは「公衆衛生保護のための予防的枠組み」と題する新しい方針案を発表した。


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