海外情報

英国保健省“Mobile Phones and Health”より
国会図書館調査及び立法考査局社会労働課・田中敏;仮訳


[電磁波問題市民研究会からの注]
英国では、このリ−フレットが全学校に配布されています。

携帯電話と健康

携帯電話の使用
 イギリスでは国民の半分以上が携帯電話を持っています。仕事・家庭・その他様々な場面で、便利で安心を得られる携帯電話は生活の一部になっています。携帯電話は弱い電力を用いて電波を発信・受信する装置です。この電波により電話機が基地局ネットワ−クにつながり、利用者は電話をかけたり受けたりできるようになるのです。
 電波はコミュミケ−ションの手段として100年以上にわたって使われてきました。しかし携帯電話がここまで広く普及したスピ−ドは今までに経験したことがないものです。携帯電話が健康に及ぼすかもしれない影響に人々の関心が集まるのもそのためです。
 このリ−フレットでは、みなさんが携帯電話をどう使用するかについて知識を持って判断できるよう、現段階でわかっていることとまだわかっていないことの両方に基づいて最新の情報とアドバイスをお届けします。
 また、現在すすめられている新たな研究についても概略をお知らせします。

独立した専門家グル−プによる評価
 ある一定の水準を超えて発せられる電波は人体に発熱効果をもたらします。国際的ガイドラインでは、携帯電話から人体への電波をその水準以下になるようにしようとしています。イギリスで売られている携帯電話機はすべてこのガイドラインの基準を満たしています。
 最近の研究結果を検討してみると、国際的なガイドラインで決められた水準以下の電波であればほとんどの人には健康上の問題は起きないといえそうです。しかし理由は明らかではありませんが、この水準以下でも脳の影響に変化をもたらすという結果もいくつかあります。私たちの科学的知識には大きく欠落している部分があるのです。ですから特定組織に属さない専門家グル−プ(ウィリアム・スチュワ−ト卿を長とする政府の諮問を受けたグル−プ)は、より多くの研究結果が明らかになるまで、携帯電話の使用に関して「予防的対策」をとるように勧めています。携帯電話を使う際には、電波を浴びる量を最小限にとどめるような使い方することができるのです。具体的には次のようなことです。
 ○通話時間を短くする。
 ○新しい携帯電話機を買う際には、SAR値(後述)を比較考慮する。

運転中
 運転手の注意をそらすものは、すべて事故の危険性を高めます。歩行者・自転車・同乗者・その他の道路使用者に危険をもたらします。運転中は自分の車を正しくコントロ−ルしなければなりません。少しでも集中を欠いたり一瞬でも注意を怠ると起訴されてしまうという結果になりかねません。ハンズフリ−の電話を使っていたとしても通話により注意力が落ちるでしょう。
 詳しくは、環境・交通・地方省から発行されているリ−フレット「携帯電話と運転」をご覧ください。

子供および16歳未満の若者
 携帯電話は若者に非常に人気があります。安全の確保や他人との連絡などの点で魅力があるのは明らかですが、携帯電話の使用に関しては親子でよく考え、情報に基づいた判断をするべきです。現在の研究結果からは携帯電話の使用による健康上の問題は示されていません。
 しかし、携帯電話の使用が脳の活動に影響を与えるということが示されています。私たちの科学的知識には大きな欠落部分があるのです。10代にかけての時期はまだ頭部や神経系が成長途中なので、もし携帯電話使用によるなんらかの未知の健康上の危険性があるとすれば、子供や若者は大人よりもその影響を受けやすいのかもしれない、と専門家グル−プは考えています。
 そこで専門家グル−プは予防的対策に加えて、16歳未満の子供は不必要な通話を控えるようにするべきだと勧めています。
 この勧告を考慮して、イギリス保健省の首席医務官(Chief Medical Officer)は青少年が携帯電話を使う際には、以下のことを心がけるようにするべきだと強く勧めています。
 ○携帯電話は必要不可欠な通話にのみ使うこと。
 ○通話時間は短くすること。長時間の通話は電波を浴びる時間が長くなるので避けること。

 将来明らかになるかもしれない何らかの危険に子供をさらすのを避けたいと親が考えるなら、子供に携帯電話を持たせないという選択をするべきだ、と首席医務官は勧めています。

仕事で
 携帯電話は仕事で頻繁に用いられています。携帯電話のもつ安全性・効率性・利便性が雇用主や従業員にとって役立つからです。
 雇用主には、従業員の健康と安全を守る法的な義務があります。HSE(Health and Safety Executive=健康安全局)が雇用主に対して出している勧告では、運転中など安全が求められるのに携帯電話使用によって集中が妨げられかねない状況では携帯電話を使用しないよう従業員に対して指導するべきである、としています。
 従業員に携帯電話を使用するよう求めたのに対して健康への影響の可能性を心配する声が出た場合、雇用主はたとえば次のようなことにより対応することができます。
 ○携帯電話は国際的なガイドラインの基準を満たしていることを説明する。
 ○従業員にこのリ−フレットを渡す。
 ○関わりのある従業員と携帯電話使用を減らすための方法を相談する。

病院や飛行機内で
 携帯電話から発せられる無線信号は敏感な電気機器に影響を与えてしまうことがあります。病院や飛行機内、その他の制限された区域では警告表示に注意し、求められていれば携帯電話の電源を切るようにしましょう。

SAR値
 携帯電話の各機種から人体にどれだけの電波エネルギ−を受けているかを測ることができます。これはSAR(Specific Absorption Rate=比吸収率)と呼ばれているものです。2001年からはヨ−ロッパ標準となるSAR測定法ができる予定です。これからはイギリスで売られている携帯電話の各機種について消費者がこの情報を知ることができるようになります。携帯電話を使用する人は機種を選ぶ際に、このSAR値を比較しながら選びたいと思うようになるでしょう。イギリスで販売されている全ての機種はすでに電波被曝量の国際的なガイドラインを満たしています。

ハンズフリ−キット
 SARを減らすのにハンズフリ−キットがどれだけ効果があるかについては、まだはっきりとしていません。使用時のSAR水準を調べるための研究が行なわれており、終了次第公表される予定です。

政府の行動
 このリ−フレットのアドバイスは2000年5月に出された政府への報告書に基づいています。報告はウィリアム・スチュワ−ト卿を長とする特定組織に属さない専門家グル−プによるものです。グル−プは最近の研究結果を調べ、科学者から証拠を手に入れイギリス各地で行なわれた公開会議で国民の意見を聞きました。
 政府はすでに主要な勧告の一部を実行に移しています。また政府や携帯電話会社から資金を得て、スチュワ−ト報告に基づいたさらなる研究が始められたところです。


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