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(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2002年3〜4月号より

短いマイクロ波パルスは人体内に深く侵入し危険

米コッド岬の空軍ペイブポ−ズレ−ダ−は“ブリュアン前駆体”をつくる

□コッド岬のペイブポ−ズレ−ダ−とは
 米マサチュセッツ州ボストン市東方郊外にあり大西洋に突き出したコッド岬(CapeCod)に米空軍の「ペイブポ−ズ(Pave Paws)レ−ダ−基地」がある。このレ−ダ−は主に潜水艦から発射されたミサイルを探知する早期超大型警戒レ−ダ−網である。
 ペイブポ−ズ基地は「フェイズド・アレ−(phased array)レ−ダ−」という特殊なレ−ダ−をもつのが特徴である。フェイズド・アレ−・レ−ダ−とは「放射素子相互間の位相を変化させて、アンテナそのものを動かさずにビ−ムの方向や放射パタ−ンを変えるレ−ダ−アンテナ」である。
 野球場のナイタ−用照明機の中にはめこまれた小さなそれぞれの投光器が独立して点滅するものと考えるとイメ−ジに近いかもしれない。ただし投光器と違ってパルスレ−ダ−は目にみえないが。

<図:脳細胞模型内でのパルス信号の伝送>

□“ブリュアン前駆体”を誘導する
 非常に短いパルス化した放射線(電磁波)は、“ブリュアン前駆体”(Brillouin precursor)として知られる放射線パルスを誘導する。このブリュアン前駆体という短いパルス放射線はエネルギ−が強く、従来の従来のレ−ダ−波に比べてはるかに深く人体内に入り込む。
 そのためコッド岬の周辺住民は長年にわたって人体への悪影響を惧れてペイブポ−ズ・レ−ダ−基地に反対してきた。そしてこのブリュアン前駆体は広帯域放射線(ブロ−ドバンド用電磁波)でもつくられるし、近い将来高速度のデ−タ信号伝送として使用されるため大きな影響をもつであろう。
(注:結晶中を進む電磁波が一定の条件下で強い反射を受け、異常を起こし電磁波が錯乱される現象を起こすことをブリュアン散乱という。この現象はフランスの物理学者ルイス・ブリュアンが発見。ブリルアンともいう。)

□アンバニ−ズは前から警告してきた
 テキサス州サンアントニオにあるブルックス(Brooks)空軍基地の研究者リチャ−ド・アルバニ−ズ(Richard Albanese)は、ペイブポ−ズ・レ−ダ−から放射された電磁波(放射線)が広い範囲で人間が浴びることで人間にブリュアン前駆体を引き起こすことを懸念し続けてきた。2000年5月23日にマサチュセッツ州公衆衛生局(MDPH)に出した文書でアルバニ−ズは、フェイズド・アレイ型の放射線はまだテストされていない、と警告している。彼は15年間、ブリュアン前駆体を研究してきた人物だ。
 エドワ−ド・ケネディ上院議員の要請で米空軍が金を出し、全米科学アカデミ−・研究協議会(NAS−NRC)がアルバニ−ズ理論を評価する研究が現在始まっている。

□画像にはブリュアン前駆体は役立つ
 ラジオ波/マイクロ波(RF/MW)のパルス(デジタル信号)は立ち上げ時間がとても短くてすむし、土や水や生体細胞のような放射線の吸収がしにくい、つまり吸収損失(ロス)の大きい物質に入る際、ブリュアン前駆体をつくるため別の位相に移りやすい。つまり土や水や生体細胞に入り込みやすい。
 ブリュアン前駆体は長所と有害性の二つを合わせ持つ。
 アルバニ−ズと何年も協力して、ラジオ波/マイクロ波・パルスエネルギ−を研究してきたカ−ト・オ−スタン(Kurt Oughstun)は「ブリュアン前駆体は画像には役立つ。それは従来のレ−ダ−信号では侵入できなかった物質に侵入するからだ。しかし一方で、人間の身体に深く入り込む信号を持つということは良いことではないかもしれない」と説明している。

□身体に入り込むパルスの開発の危険性
 オ−スタンはニュ−ヨ−ク州のロチェスタ−大学で博士号研究生の時、ブリュアン前駆体を研究し始めた。当時誰もブリュアン前駆体が意味あるものと考えなかったにもかかわらず彼は博士号取得研究テ−マとしてブリュアン前駆体を選んだ。オ−スタンはブリュアン前駆体は、人間の細胞を通過するラジオ波/マイクロ波・パルスのいくつかのタイプの主要な成分だ、と信じていた。
 オ−スタンの考えは何人かから懐疑というか嘲笑的ともいえる反応をもたらした。エ−ル大学のロバ−ト・アデア(Robert Adair)は昨年、文書で「そのような奇妙なパルス効果は存在するわけがない」と痛烈に批判した。オ−スタンはそんな批判にもめげず「空軍が異なった物質に侵入する信号を使う技術の開発を推進するのはおかしい。空軍は開発している信号が人間の身体を侵入する事実を観てみぬふりをしている。」とMWNに語った。
 オ−スタンは空軍の科学研究部門から多額の研究助成金を受けているので、彼の研究は空軍の放射線安全担当部門から無視されたり拒絶されているようだ。アルバニ−ズは、「4人の専門家で構成する小委員会が作成したMDPH(マサチュセッツ州公衆衛生局)の1999年報告がブリュアン前駆体パルスとフェイズド・アレイ・レ−ダ−の全体の問題を無視したことを知ったので、私は告発しようと決心した」とMWNに語った。


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