ケータイは危険か?
今日誰もが知っておいた方がよい情報

1998年

医学博士 ハンス=クリストフ・シャイナー(ミュンヘン)
バイエルン市民ウエーブ電磁波汚染から守る会
NPO"Bayerische Buergerwelle"

(翻訳:加藤尚子)

ドイツ語原文:http://www.buergerwelle.de/d/dindex.html
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 無線電話および特にその基地局の高周波による被害には、熱効果と非熱効果がある。ドイツおよびヨーロッパの規制値は、旧ソ連のものよりもはるかに高く、設定にあたっては何故か熱効果しか考慮されていない。非熱効果について多くの学術的な調査研究がなされてきており、1990年までにエレクトロスモッグ(電波による大気汚染)だけで1万件が公表され、米国だけでも年間300〜400件の新たな発表がある。しかし、非熱効果の研究報告や旧ソ連東欧諸国の経験に基づくデータは広まっておらず、全くと言っていいほど顧慮されていない。

 このような状況の中で、このテーマは近年、差し迫ったものになった。今後20ケ月のうちに、ドイツおよび欧州の携帯電話会社によって、住民に四六時中電波を発信し続ける携帯電話の基地局がドイツだけで8万基も設置される計画があるからだ。そして、それがどのような結果をもたらすかは当分まだ分からない。携帯電話の加入者は1997年末には500万人と公表されたが、2000年には1800万人にのぼる見通しだ。人々は、後10〜15年のうちに従来の固定電話によるコミュニケーションを全廃してケータイに置き換えようとしている。それには、数年のうちに基地局をキロメートル単位ではなくメートル単位の間隔で配置することが必要になる。この試みは手始めにルール地方やいくつかの見本市会場などでなされている。また、ミュンヘンの中央環状線沿線でもこれに着手されることになった。それは、我々に恐れというものを教授する発展である。

 はじめに、携帯電話の電波について述べる。ケータイや移動電話、その無線基地局や中継塔の電波は、可視光線や赤外線よりも低い300MHz〜300GHzの周波数帯であるマイクロ波を使っている。それは、非電離電磁波である。電離する紫外線やガンマ線は、それ以上の周波数である。放送の電波は約300KHz、我々が日常使う電気は50Hzで、マイクロ波よりも低い周波である。

 ドイツおよび欧州の規制値設定の問題点や法的手段の行使の可否は、既に述べたように、ドイツ工業規格のドイツ電機技術士協会による規制値が熱効果のみをもとに設定されているという不備のうえにある。

 熱効果については本稿では概要を述べるにとどめるが、頭蓋骨は、前頭部、中頭部、後頭部に腔を持つ複雑な幾何学的構成になっているため、多様な電波の重複や反響が起こりうるということを指摘しておく。そのため、高性能のケータイで頻繁に通話すると、耳の後ろのアンテナが脳に極めて近い位置にあるため、神経網が局所的に過熱されて、いわゆる「ホットスポット」が脳内に生じる恐れがある。

 さらに、水晶体やレンズがある眼球が過熱されることも大きな問題である。目には熱を調節する機能が無いことがすでに知られている。つまり、加えられた熱を逃がすことができない。そうしたことから、ケータイによるマイクロ波の被曝が原因で小児にも白内障が起こることが指摘されている(ケルン環境研究所)。我々は、技術の進歩の成果に対して盲目になっているのだろうか?

 高周波による身体への害についての理解を高めるために、生物理学的な原理についていくつか述べる。生の営みは、細胞膜における放電と蓄電に結びついていることが知られている。細胞膜では、いわゆる「イオンポンプ」がナトリウムイオンを細胞から排出し、カルシウムイオンを細胞内に取り込む。それによって細胞の電気的環境が保たれており、共鳴振動数の高いギガヘルツ帯、つまりマイクロ波の微弱な電磁場の電磁振動が発生している(H・フレーリヒ論文)。1991年のノーベル医学賞が細胞膜組織におけるイオン媒路の発見に授与されているのは興味深い。それには、情報の伝達には0.001mW/cm2の微弱な電磁場強度でも十分で、内分泌の誤作動(分泌物の生産過多や過少)を引き起こすことが示されている。これとの関連で、ケータイ使用者の頭部への影響は1mW/cm2以上で現れる。

 ドイツの物理学者アルベルト・ポップは、細胞が微弱な「生光子の放出」と関連することを証明できた。これは最小のエネルギー粒子で、その一つ一つが細胞核のDNAの螺旋状組織の中にある。この光子は、整流された光の振動であるとの特性を持つ。したがって、細胞は微弱なレーザー光線との関係を持っている。よって、マイクロ波による細胞への非熱性の生物学的刺激は、一方では細胞膜の機能の攪乱となって現れる。さらに、「生光子との関係」の阻害によっても生じる。特に、生光子がマイクロ波によって整流性、つまりレーザー光線の特性を阻まれることが挙げられる。DNAの伝達におけるこの秩序の喪失は、生体の情報システムに破壊的な結果を招きうる。遺伝子は、遺伝子操作技術のようにそれ自身の構造が変わってしまうことはないが、内包する情報が封鎖される。たとえば腫瘍抑制遺伝子が機能しなくなってガン細胞が急に妨害されることなく増殖することは容易に想像がつく。高周波による被害のやっかいなところは、我々の生体の細胞、神経系、情報伝達システムそのものが微弱な強度によっても反応してしまうところにある。外部の人工技術による高周波の発生源の過剰によって、高周波エネルギーとが細胞の情報システムに干渉し、細胞、神経、体液のレベルで様々な変調が引き起こされると理解できる。

 ザールラント大学の生物理学者U・ヴァルンケは、微弱な電磁場の変化によっても細胞膜の機能が持続的に阻害されることについて詳述している。これは特にアデノシン三リン酸(ATP)による細胞のエネルギー生産について当てはまる。細胞内環境の保全を掌り、ATPによってエネルギーを吸収する細胞膜のイオンポンプが部分的にあるいは全く機能しなくなるのだ。これは、細胞の広範囲な阻害や完全な破壊をもたらす。最終的には、今日しだいに頻繁に注目されるようになってきた「病理学的エネルギー喪失」(PED)の原因となり、それはアメリカで最初に指摘された慢性疲労症候群(CFS)と一致すると述べられている。

 しかし、高周波の影響力については、細胞の機構や情報にもたらす阻害あるいは破壊の作用だけが知られるようになったのではない。遺伝質の変化(遺伝子による奇形やガンのリスクの増大に関連するあらゆる結果)をもたらすことについても次第に明らかになってきた。最近重大性を増して注目されているのは、現行の携帯電話技術が高周波の中に低周波化したパルスも含まれた電波を放出することである。基地局や中継塔のみならずケータイや家庭内のコードレス電話も、言語情報を聴覚信号に置換するのに一定の周波数帯で機能しているのではない。さらに、複数のケータイ(基地局一基につき8台まで)が同時に使えるようにするために、会話の情報は小さな「パッケージ」のなかに圧縮され、正確な「八分の一拍子」で放射される。このパッケージの中には休息信号がある。それで「パルスの発信」はネックレスの真珠のように一定のリズムで情報提供と休息をする構成になっている。これは、1台のケータイあるいは1台のケータイが使用している基地局では217Hzである。1つの基地局からの低周波パルスは、同時に使用されているケータイの台数が増えると周波数が高くなる。同時使用が2台であれば434Hzであり、最多利用台数である8台では最大値である1736Hzとなる。この重大な意味を持つパルスの放射は、しかるべき測定器を用いて簡単に測ることができ、明らかに証明できる(測定記録は社団法人バイエルン市民ウェーブで閲覧可能)。低周波を浴びると体内で雪崩のような戦闘プロセスが作動してしまう人がいることは、今や生理学的に知られている。たとえば、消防車やパトカー、救急車のサイレンを見たり聞いたりすることによって驚愕やパニックの反応を起こしてしまう人がいる。ディスコで点滅するストロボスコープのライトで自律神経の症状を表し、失神する人もいるのだ。

 リューベック大学の物理学者クリーツィングは、携帯電話基地局の高周波帯に組み込まれている低周波のパルスに対して特に人体が敏感に反応することを早期に指摘した一人である。新陳代謝、ホルモン分泌システム、免疫系といった重要な機能や寝起きのリズムなどを含む生体内の信号も、低周波で周期的に繰り返される波形を描くことは明らかである。高周波の基地局のなかの低周波のパルスによって、免疫力の劇的な低下から発ガンのリスクの明らかな上昇に至るまで、脳幹領域における我々の「バイオリズム」の様々な変調が起こることが説明されうる。

 しかし、細胞膜の機能の阻害は生体のカルシウム濃度の変化をももたらす。また、被験者をドイツの基地局で一般的に使われているパルスのある電磁場に一週間さらし続けたら、脳波に変調が起こった。自分自身でケータイを使用しなくても、周囲の誰かがケータイで電話をしたとき、脳波は10Hz帯でそれ以前には見られなかったほど大きく振れる。そのとき、脳波の反応は刺激から数分後に見られた。

 さて、脳波のなかの「アルファ波」もこの周波数(7〜14Hz)で現れ、催眠や眠りを掌る周波となっていることをよく考えてみれば、携帯電話の電波が意識および無意識の状態にも介入する恐れがある。それで、この調査結果から、ケータイや基地局は我々の心理に麻薬や精神安定剤と同様な作用をする「精神を掌る」要素と見なすことができるだろう。この観点で、パニックやノイローゼ、精神病の増加の原因として新たに論議することができる。

 複雑なシステムや制御系へ干渉するということで、高周波は技術の分野でも障害物と見なされている。それゆえ、ケータイの使用は病院内では厳しく禁止されている。ケータイは、心臓ペースメーカー、人工呼吸器、電気補聴器、電気透析装置の誤作動の原因になるだけではなく、心悸亢進による心拍停止時の蘇生に使用する細動除去器にも影響を及ぼす。

 1996年2月にミュンヘンで心筋梗塞後の心悸亢進によって心拍が停止する緊急事態が起こった。救急医は細動除去器(心拍が速過ぎたり遅過ぎたりするときに不整脈を電気ショックによって取り除く)を携えて来た。しかし、医師が持って来た細動除去器は動かなかった。二人目の救急医が呼ばれたが、彼の細動除去器も作動しなかった。三台目の細動除去器が運び込まれたときにはもはや手遅れだった。心筋梗塞の患者は亡くなった。この一連の故障の推測される原因は、近くで何も知らずにケータイで電話していた通行人がいたことだった。

 航空機の電子機器の通信信号へ干渉する危険性があり、空中の安全が脅かされることから、飛行機の中でのケータイの使用はいくつかの路線では完全に禁止されている。離着陸時の使用を刑法で禁止している路線もある。議会では、違反行為は2年以下の懲役を課すことが審議された。数年前、高周波の作用により、ドイツ連邦空軍のミサイルを搭載したジェット機が木造の教会に墜落した。基地局が着陸の電子機器を制御不能にしたことが明らかになっている。基地局による障害はコンピュータ、レジスター、ステレオ、エレベータ、電話、テレビ、さらに自動車の電子機器や無線装置などにも見られる。自動車の電子機器の誤作動の危険性のため、BMWは外部アンテナ付きの無線電話しか認めていない。さらに、ケータイによってABSシステムやエアーバッグへの影響が致命的な結果を招くこともある。

 既に述べたように、生の営みは微弱の高周波の電磁信号によって制御されている。この生体信号の強度は電子工学の規制値よりも低い。それで、その電磁信号は一般的に知られているものの、強度の測定は間接的に行うなど、かなり難しい(F.A.ポップ)。自然は、可視光線の下に位置する周波数帯を、本能的な無意識下の生の営みの制御に使うために割り当てた。しかし、我々は、この聖域であるべき周波数帯を、人工の技術に利用している。

 マイクロ波の吸収の結果として、頭痛、不整脈、睡眠障害、集中力の低下、眩暈、思考力の低下、聴力の低下、意気消沈、いらつき、血中脂肪の増加、リンパ球の減少、発ガンリスクの増大、など、様々な障害が指摘されている。ドイツの規制値以下のマイクロ波においてもこの健康被害が見られることに、注目すべきである(たとえば電子レンジでは許容限度値は2.5mW/cm2に設定されている)。

 東欧および旧ソ連では、既に述べたように、マイクロ波の非熱効果も考慮して規制値は0.01mW/cm2になっている。この低い規制値は1933年以来の長年にわたる観察から設定されたものである。放送局からの電波によって頭痛、眼痛、様々な自律神経系の症状が現れた。さらに電波を浴び続けると、不整脈、眩暈、神経過敏、意気消沈、知的能力の低下、集中力の低下、記憶力の喪失、脱毛、食欲不振、うつ、幻覚などが現れ、精神病に至ることもあった。さらに、リンパ球の減少、白内障や不妊症が頻発、女児出生率の増加と男児の減少、流産や小児死亡率の上昇が起こり、レーダー技師では脳波や心電図に変化が見られた。このような身体の変調は、ペテルスブルクのゴードンとマルソーなどによって指摘されている。

 80年代の米国の調査は、旧ソ連の調査よりも15年遅れで同じ結果となった。動物実験で、リンパ球細胞分裂の加速化、奇形や染色体異常といった遺伝子の異常、植物や昆虫の実験では遺伝障害が見られた(ヒラー報告)。さらに、高周波にさらした動物に白血病が見られた。白血球に正常な細胞分裂能力が無くなったのだ。この種のことは、ポーランドの遺伝学者クチャルスキーも述べている。1984年にハイデルベルク大学のアンドラス・ベルガ博士は、許可された規制値である2.5mW/cm2を照射したニワトリのヒナが、数時間で死亡したとの研究報告を提出した。マイクロ波の密度を下げると、奇形が現れた。フランクフルト大学の神経生物学者ペーター・ゼムは、キンカチョウ(錦花鳥)にドイツの基地局と同等の電磁波を30分照射した。実験された鳥は、脳の神経細胞の約60%が電気信号の交信機能を損なった。コオロギの実験では、後ろ足の反射行動に阻害が見られた。伝書鳩にも携帯電話の電波を照射したところ、脳内でのメラトニンの生産に時間がかかるようになった。継続して照射すると「時差ぼけ」のような状態に至った。

 マインツ大学の医学者であり物理学者であるヨアヒム・レシュケは、青年の夜の睡眠を調査した。ベットの上に脳から40cmの距離のところに携帯電話を置いた。寝入るのは早かったが、夢を見ることを妨げられ、夢を見ている時間が少なくなったとの結果がでた。これは、記憶力には重大なことである。夢を見ている時間に日中の出来事の視覚的印象が保存され、長期的な記憶となるからである。レシュケは、「現時点では全く何の心配も持たずにケータイと付き合うべきではないだろう。」と述べている。

 ギーセン市近郊のリンデン市の先進科学研究所のヴィルフリート・ディンプフェルは、男女36人に15分間にわたり携帯電話を電源を入れた状態にして頭から40cmの距離に置き、脳波を測定したところ、中央部の神経系の働きに僅かながらはっきりとした変化が記録された。リューベックの医学物理学者レープレヒト・フォン・クリーツィング博士は、ボランティアで参加した被験者に217ヘルツにパルス化した高周波(ドイツの基地局と同じ電波)を浴びせたところ、15〜20分後に、かつて医者が観察したことの無いような脳波の変調が記録された。この「トゲ状波」としての脳の反応は、照射を止めてから24時間以上も存続して見られた。パルスの無い電磁場での同様の実験では何の影響も見られなかった。パルスのある電磁場の問題は、既に15年前から示唆されている。細胞膜におけるカルシウムの流出は、そのような電磁場の影響によって高まる。リューベック大学病院では、パルスのある電磁場によって、細胞の免疫反応が90%減少することを検証している。一連の動物実験では、その他、微弱な強度においても、モルモットの逃避や学習の行動の変化が見られた。

 学術的な注目が増したことにより、磁場を加えた場合、特にドイツおよび欧州の基地局で使用している低周波や、高周波に調整された情報においてメラトニンの生産の減少が見られるとの結果が増えてきた。継続的あるいは長時間のケータイの使用後に少なくとも敏感な被験者にほとんど例外なく見られる頭痛、睡眠障害、集中力・記憶力の低下、いらつき、発汗、勃起障害、高血圧、免疫力の低下、通常なら害が出ない病原菌やウイルス性疾患、ガン細胞に対する抵抗力の低下といった一連の自律神経系等の症状は、電磁場によって引き起こされたメラトニンの減少によるものと理解されよう。

 メラトニンが脳の松果体から分泌されるホルモンであることは知られている。明らかなメラトニン分泌量の低下は、低周波のエレクトロ・スモッグ(電波による大気汚染)においても見られる。まさに、ドイツおよび欧州携帯電話基地局と同じく100〜250ヘルツのパルスに変調した電波が、脳において、いわゆる日周性のリズム、特に睡眠・覚醒のリズムを掌るメラトニン生産の明らかな減少を招く。それで、我々は、不眠と翌朝と日中の疲弊感が、「睡眠ホルモン」としてのメラトニンの減少による症状であることをつきとめた。

 また、メラトニンはとても重要なホルモンとして、副腎におけるいわゆる「ストレス・ホルモン」であるアドレナリンやノルアドレナリンの生産を制御する。メラトニンが不足すると、それに応じてストレス・ホルモンの生産が減少する。ヒトは、ストレスに敏感になり、次第に日中のストレスに対応できなくなる。疲弊、興奮、意気消沈が起こり、仕事や私的生活に好ましくな無い結果を招く。

 メラトニンは脳におけるセロトニンの生産に重要な影響を与える。ここで、セロトニンがヒトの心理状態の鍵を握る役割を担っているということを知らなくてはならない。このことから、「感情ホルモン」あるいは「抗うつホルモン」と呼ばれている。そして、それは、高周波を浴びると意気消沈の気分が亢進することから説明がつく。

 おそらく、メラトニン減少の最も重要な影響は、バクテリア、真菌、ビールスや、体内で自生するガン細胞に対する抵抗力の低下であろう。そのことを十分に考慮すべきである。

 電話に使われる高周波の発ガン性を廻る議論は、オーストラリアの疫学調査によって特に現実的な関心を持たれるようになった。ジュネーブの世界保健機関(WHO)の委託を受けた王立アデレード病院のM・リパチョーリの研究グループは、動物実験で、腫瘍抑制遺伝子を取り除いた遺伝子伝達マウスに30分ずつ二回にわたってドイツおよび欧州携帯電話基地局で通常使われている低周波にパルス化した高周波を照射したところ、照射していない群に比べて悪性腫瘍の発生率が2.4倍になるという打ちのめされるような結果に至った。この数値は、100匹のマウスに18時間ケータイの電波を当てたときの結果と同じである。

 高周波の発信源の近くでは、脳腫瘍の発生率が高まり、自律神経系の症状が増加するとの指摘がある。その報告をしたのは、ニーダーザクセン州フォラーゾーデ市の医師エグベルト・クッツで、16件もの脳腫瘍が相次ぐ異例が起こり、その患者のほとんど全員がドイツ連邦軍のレーダー装置と携帯電話の基地局という二つの高周波送信鉄塔の間に住んでいた。殆ど全員が亡くなったが、多くの言葉を並べるよりも、患者の住居の地図(バイエルン市民ウエーブの資料を参照)は揺るぎのない証拠であり、腫瘍の形成と高周波の吸収の因果関係を証明している。

 高周波発信源の重大な影響については、スイスのベルン近郊のシュヴァルツェンブルクからも報告があり、三か所の短波送信局の半径1000m以内では、特に、頭痛、睡眠障害、いらつき、体力の低下、疲労感、関節痛といった自律神経の失調に属する変調が頻繁に見られた。

 それと似たことがグロルスハイム市やバイエルンで最も出力の高い送信所があるミュンヘン近郊のホルツキルヒェン市でも観察された。1997年のトラウンシュタイン市近郊のシュナイトゼーからの最新の自律神経医学的な観察結果は、人間と動物の健康に大きな被害を及ぼすという方向を示唆している。送信鉄塔が設置されている土地にある農場では、農家の家族だけでなく、家畜も病気になった。雌牛には、行動障害、リューマチやアレルギー性疾患、拒食、奇形児の出産、流産が見られた。雌牛は25km離れた農場に移転すると、症状が消え、群れは指示に従い、迅速に小屋に帰った。トラウンシュタインの獣医局は、慎重に分析した結果、唯一考えられる原因は送信所からの高周波による影響であるという納得しうる結論を出すに至った。

 似たようなことが、「ユーロシグナル」によって呼び起こされたファラースハウゼン市でも報告されている。そこでも伝染病のごとく人間が病気になり異常出産がある。親指が三本もあり腎臓に奇形がある子供が二人生まれた。家畜においては、二つの頭と五本の脚を持つ子牛が生まれている。ほぼ地域全体に見られたこのような現象や急速な疾患の広がりは、政治的にも波紋を投げかけ、ユーロシグナルの基地局の操業主であるテレコム社の子会社であるTeDe-Mobil社は基地局を遠ざけるに至った。基地局が撤去されると、前述のような症状が回復し、その地域全体が再び健康になった(問題:いったい誰が損害賠償と慰謝料を支払うのか?)

 ドイツでは今日すでに、物理学者が電磁波の測定を他の国には見られないほどおこなっている。電磁波汚染は、すでに何千キロメートルにもわたる高圧線や鉄道上の電線、レーダー基地局、ラジオ・TV局、人工衛星、宇宙から地球に到達する電波から成る。結論:私たちは、全容が見通せないほど電波が混在した文明の中で生活している。更なる技術の礼賛が計画されている。将来的に、自動車の交通を制御するための電波の発信装置が路上に何百倍も取りつけられる。小型送信機によって料金の決済ができる。何百万台ものパソコンが、ケーブルを通してではなく無線でデータの送受信ができるようになるのを待っている。

 ともあれ、連邦電波防護局は、「信頼できる業者による機器では問題なし」と見ている。

 しかし、それに対して、ミュンヘンにある連邦国防軍大学の電子工学の専門家であるギュンター・ケーズ教授は他の見方をしている。規制値が高過ぎるのだ! 消費者は長時間ケータイで電話しないほうがよい。業界は、頭の中にではなく周囲に向かって電波を放つアンテナがついた「エコ・ケータイ」なるものを作ってはどうか。コペンハーゲンにおけるパルスのある電磁場についての国際的なワークショップで、ドイツの二つの携帯電話事業者であるテレコム社とマンネスマン社は厳しい非難にさらされた。特に米国は、ドイツでは国内基地局、欧州基地局において多くの問題点が未解決の技術が宣伝されている、と批判した。米国では普通の固定電話網はデジタル言語伝達機を通して機能するが、移動電話ではまだいわゆる「古風な」アナログ技術によって交信される。現在、米国にはデジタルの無線情報技術の甚大な問題の有無や健康被害を解明する大規模な研究プロジェクトがあり、すでに様々な結果が把握されている。それに対してドイツの電話会社や携帯電話機のメーカーは、問題ないという説明をするばかりになっている。

 私自身は、独自の観察により、ヴァルンケが述べたような病理学的エネルギー損失(PED)を証明した。当然のことながら、極めて稀な病例は、単一の原因によるものであり、重度こそ異なるものの全ての患者に現れる一連の病因が常に見られる。他の病因から独立して、高周波の被害は規則的に際立った「治療障害」であることが明らかとなった。さらに、つまり、重金属、殺虫剤、ホルムアルデヒド、木材保護剤などによる被害といった他の病因によって強化される相乗作用もある。この相乗効果ということでは、最近、歯科医J.レヒナーはは、金冠や歯に詰める金属は、高周波を集積・共鳴させる作用があり、中脳および脳幹の構造(脳下垂体、延髄、大脳辺縁系など)を高周波の電磁波で損なわせることを証明した。

 アマルガム充填剤と低周波にも困った相乗作用がある。低周波はアマルガムを詰めた患者の口腔内電流の電圧を高める。口腔内の電流が有毒であるかどうかの判断は、この脳の直下の歯の領域の電位が、毒性の高い水銀や他の重金属のイオンの流出に起因するということを念頭に置いてなされなければならない。

 また、咽喉部、気道、尿道において伝染病にかかりやすくなるということや、睡眠障害、頭痛、精神不安定、集中力の低下、発汗、胃炎に似た症状などのかたちでの自律神経系の症状が見られることが定期的に立証されている。これに関連して興味深いのは、抵抗力が弱まった人にだけ胃腸管や性器(帯下の分泌)などに発症する病原菌としての意味を持つガンジダ菌や糸状カビ等のどこにでも常に存在する微生物に対する抵抗力の低下の観察である。一連の免疫学的調査は、それ自体有害ではないカンジダへの抵抗力をつける身体能力が低下の傾向にあることを示している。抵抗力が弱まった人や高周波の影響を受けた人では明らかに免疫グロブリンの濃度が高くなるということは、糸状菌が抵抗力の弱まった腸壁を漂い過吸着し、独立した病原体として内性真菌症、つまり体内菌による病気を発生させることを推論させる。これまでのところ、内性真菌症は結核、ガン、エイズなどにかかっている極度に弱まった人にしか見られていない。カンジダから分離される毒性の高いアフラトキシンは、肝臓を損なわせるほか、発ガン性があるともされている。

 我々はケータイの使用という高周波の大実験に参加することで免疫系を麻痺させるのか? これまで無害とされていた微生物に病原菌として勝利の行進をさせるのであれば、将来に何ら良いことが期待できない。


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