2005/12
ヌポ難民キャンプの図書館委員会は図書館が開館した2002年5月に構成され、SVAと共に図書館運営に携わってきた。同キャンプはSVAが活動を開始する前からキャンプ図書館が1館あり、図書館委員会も存在していた。だから他のキャンプと比較して、図書館活動の意義をすでに理解していること、また難民の人たちの読書関心など高く、活動を開始する上での基盤がすでに整っていることはSVAにとって大変有難いことではあった。しかし既存の図書館委員会は図書館は「静かに本を読む場所」との意識が強く、子どもの活動を中心とした図書館を作りたいと願っていたSVAに当初、反発の声が多かった。説明に説明を重ね、何とか理解を得たものの、開館後から様々な問題に直面することとなった。
9人いる図書館委員会の中で、SVAとの会議や活動に積極的に関わってくるのは委員長と副委員長の2人のみ。何故他のメンバーが関わってこないのか不思議でならなかったが、実はこれまで図書館の運営に携わってきたのはこの2人だけで残りは名前だけの存在。更に話しを聞いていくと、彼らは自分たちの図書館への思い入れがあまりにも強すぎてか、周囲の意見や提案にも耳を傾けず、好き勝手に運営をしていることから、他の委員会は次第に遠のいていったという。
結局、図書館が開館してから現在まで、この状態は続いた。 SVAが一番頭を悩ませたことは、図書館にとって最も大事な存在である図書館員の存在を無視し、自分たちが前面に出てあれもこれもやろうとすることだった。例えば、図書館に配布している文房具。彼らが全て管理し、必要な時にはいちいち彼らのところにいって何の活動に使うのか、いくら必要なのかを伝え、了解されれば受け取ることが出来る。図書館の鍵も常に彼らが保持していて、図書館員は朝、わざわざ委員会のところに行き鍵を受け取り、夕方にはまた返しに行く。「図書館員が図書館の管理に責任を持ち、自主的に活動を行っていくためにも彼らにもっと役割を持たせて下さい」と何度会議で議論したことか。
でも彼らは考えを変える気は一向にない。またSVAが指導した本の登録、貸し出しの方法についても知らないうちに勝手に変更していて、図書館員は混乱、同時に毎月まとめていたデーターも数字が変わってしまい、SVAも混乱することになったり、次から次へと問題が生じていった。
ある時期、キャンプの自治であるキャンプ委員会に相談し、図書館委員会の交代を提案した。それがもし難しいようであればキャンプ委員会に会議に入ってもらい、今後の運営方法について議論を行いたいとお願いした。会議は実現したものの、当時のキャンプ委員会は2人の性格をよく知っていてか、双方でよく話し合い、解決していって下さい、とほとんど解決が見られない結果で終わってしまった。
ヌポ難民キャンプで図書館が開館して、何人の図書館員が辞めて行ったことだろう。家族のこと、健康のこと、個人的な理由で辞めざるを得なかった図書館員もいたが、多くは2人の図書館委員会の運営方法に我慢が出来ず、辞めていってしまった。図書館員がのびのびと仕事が出来、もっと多くの子どもたちに来てもらえるようにはどうしたらよいのか、色々と解決策を試みたものの、だめだった。図書館委員会の言い分は「この図書館は俺たちのものだ。だから俺たちが思うようにするだけでSVAは口を出さなくていい。図書館に必要な物だけ持ってきてくればいいんだ!」とまでいう始末。
しかし今年の9月になり、ある転機が訪れた。2年に1度のキャンプ委員会交代の選挙が行われ、新たなメンバーが選出された。
この選挙でキャンプ委員長となったデ・モさんは図書館委員会の言動について他の図書館委員会や住民から不満の声を聞いたことがあったことから、SVAと会って話しをしたいとの連絡があった。
11月に入ってから彼を初めとする数名のキャンプ委員会と会い、図書館委員会とのこれまでの問題について説明し、解決への支援をお願いした。そこでキャンプ委員会はSVA、図書館委員会、図書館員、そして教育委員会などの関係者を集めて会議を開くことを決定、その場で今後のことを話し合うことになった。これまでほとんど顔を見せていない図書館委員会の他のメンバーにも参加するよう、キャンプ委員会から通達が行ったようで会議の当日を迎えた。図書館委員会からの参加はたったの2人。
なんと委員長と副委員長ではない、他のメンバーである。彼らはなんと会議参加を拒否したのである。実はこの会議の前日、キャンプ委員長のデ・モさんが図書館委員会だけを招集して事前に意見と聞いておこうとしたらしいが、その場にも2人は現れなかったという。SVAの会議にも出て来ない場合、彼らは図書館委員会としての継続する意思がないものと理解し、新たな委員会を選出する思いでいたようだった。そして当日、彼らは姿を現さなかった。
会議の冒頭、デ・モさんから「図書館委員会の委員長、副委員長が参加を拒否したことから、新たな委員会を選出したいと思う。しかしその前にSVAからこれまでのいきさつ、またSVAの活動方針について話しを聞き、皆からの意見も伺いたい。そこで改めて選出を行うかどうか決定しよう」と挨拶があり、では宜しくお願いしますとバトンタッチされた。
私の中にかなりの緊張感が走った。私の説明次第では、図書館委員会ではなく、SVAが悪いではないか、と言われかねない。そうなれば何の解決も出来ないどころか、SVAとしてはキャンプから撤退しなければならないかもしれない。そんな思いを抱きながら説明を始めた。何をどう話したのか、自分でもよく覚えていないのだが、話しを終えた後、参加者から拍手があった。その後、現在の図書館委員会のやり方はキャンプ図書館としての機能を著しく低下させている、SVAの意見はもっともであるとの声が参加者から上がり、満場一致で新しい図書館委員会の選出を行うことが決定した。
選出は12月に行われることになったが、まだ課題が残っている。一つはSVAが活動開始する前に存在していた図書館にあった本、現在はSVAが購入した本と一緒になっているのだが、それは自分たちのものであるから返すように、と図書館委員会から言われている。最終的な解決までにはもう少し時間がかかりそうだが、きちんと話し合っていきたいと思う。彼らとの活動は決して嫌な思い出だけではない。図書館のために、そして難民の人たちのために彼らが精一杯力を注いでくれたことには心から感謝している。残念なことに双方の考え方や意見の食い違いからこのような結果になったが、自分にも大きな反省を感じている。人間同士には様々な価値観や考え方が存在するが、これらをどう上手く共存させることができるか、NGOの活動の中で最も難しいことかもしれないと感じた時であった。
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