石川逸子さんの詩
トンネルのむこうで


 トンネルのむこうで
             石川逸子

トンネルのむこうでは
花が砕かれ
子どもたちが焼かれているらしい


トンネルのこちらで
星条旗に顔をそむけた一人の女子学生の
祈りは 闇をこえていくだろうか

新年を待つように 「正義の戦争」の開始を
わくわくカウントダウンした ひとびとは
わが文明の滅びを数えていることもしらず


リュックを背負い
トンネルをこえて 盾になるために出かけた
ひとびとは今どこで砲火にさらされているだろう


ことし はるがこんなに冷たいのは
春の女神も 
ミサイルにおびえているのだろうか


トンネルのむこうで
花が砕かれ
子どもたちが焼かれる  


トンネルのむこうで
砂嵐が巻き
放射能の粉塵がちらばる