[紹介]まんが「慰安婦」レポート @〜私は告発する〜
(チョン・ギョンア著 山下英愛訳 明石書店 2007年7月30日発行)

 本書は、2006年に韓国で出版され大きな反響を呼んだ、ルポ漫画である。1巻では、オランダと韓国の被害女性が沈黙を破り告発に立ち上がっていく過程をとりあげ、被害者たちの苦しみと深い傷に寄り添うように、「慰安所」とその制度が作り上げられていった歴史を描き出そうとしている。半世紀におよぶ長い沈黙の意味、証言の重み。分かりやすく親しみやすいタッチの絵の中に、告発する被害女性たちへの暖かい共感が読み取れる。以後、2巻、3巻も日本語訳版が出版される予定である。
 著者チョン・ギョンアは、エディット・ピアフを題材にした作品でデビューし、大韓民国出版漫画大賞を受賞して一躍注目を浴びることとなった、韓国の若手漫画家の一人である。
 まず目を引くのは冒頭の「プロローグ」。韓国人被害者ではなくオランダ人「慰安婦」被害者の物語から始まっている。そこに韓国社会への重要なメッセージがこめられていることは疑うべくもない。
 韓国内では「慰安婦」問題にかかわってナショナリズムを前面に出す言説が多く、被害者=韓国・朝鮮人ととらえる人々も少なくないと聞く。本書は、あえてそのような風潮に真っ向から挑み、「戦争と性暴力に苦しむすべての女性の人権につながる」(チョン・ギョンア)ものとして、日本軍「慰安婦」問題の解決をめざす姿勢を鮮明にしているのである。
 もしこの本が、韓国ではなく最初から日本で出版するものとして描いたなら、彼女はいったいどんな物語から始めただろうか――。
(N/Y)




 12月9日の「語り合う会」のテーマの一つにしようと思います。皆さん、ぜひ読んでください。

2007年11月4日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局