「この写真を見た上で、それでもなおかつ爆撃を強行するとしたら
・・・・・私は言うべき言葉を知らない」

  [紹介]写真集
  「イラク 湾岸戦争の子どもたち
   劣化ウラン弾は何をもたらしたか」
   (高文研 森住卓写真・文 2002.4.10. 2000円)

 著者はフォトジャーナリスト森住卓氏で、『セミパラチンスク』で日本ジャーナリスト会議特別賞、平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞を受賞している。
 森住氏は劣化ウラン研究会の会員で、アメリカが使用した劣化ウラン弾の影響を執拗にカメラで追及し続けている。「4年間もイラクに通った」だけでなく、湾岸戦争での反劣化ウラン兵器国際会議に出席し、「バルカンシンドローム」をコソボに出かけその目で確かめ、さらには広く放射能の人間に対する被害の実態を追及し続けている。
 この写真集は「T湾岸戦争から10年」、「U小児病院白血病専門病棟」、「V生活の中の子ども」の3部から構成されている。Tは戦車の残骸や壊れた建物の中で生きる子どもたち、Uは湾岸戦争によって傷ついた子どもたち、Vは働き学ぶ子どもたちである。
 森住氏は最新のホームページで、NHKが劣化ウラン問題を薄めた報道番組を作ろうとしたことに対して出演を辞退したことを明らかにし、「イラクの最も差し迫った問題は劣化ウラン弾被害の真相究明と被害者の救済なのです」と言い切っている。この写真集のポイントもUにある。
 無脳症児として生まれ数時間さえ生きられない赤ちゃん、白血病で苦しむ子ども、抗ガン剤で髪の毛が抜けた思春期の女の子、腎臓や肝臓が腫れ腹水がたまった子ども、そして湾岸戦争後に造られたという子ども専用墓地、筆者のカメラに笑顔で群がる子どもの後ろには延々と広がる墓地と土饅頭、目を覆いたくなる写真が次々と飛び込んでくる。後の解説には、医薬品はなく、保育器は故障し、天井のランプは切れ、トイレは汚物があふれ、病室にはハエが飛び交うという、経済制裁に直撃された病院の姿。劣化ウランによる被害に対する私たちの認識がまだまだ甘いことを思い知らされる。
 しかし、この写真集を一読した後では、湾岸戦争の後遺症で苦しむ人々、劣化ウランの被害でむしばまれた子どもたちという見方だけでイラクをとらえるのは極めて一面的であることに気づく。むしろ、イラクの子どもたちがこんなにも生き生きとしていることに驚かされる。輝く瞳と明日を信じる笑顔で満ちあふれている。働く子どもたちも、ぎゅうぎゅう詰めの教室で勉強する子どもたちも何ら変わることがない。
 それだけにTやVで写された子どもたちの笑顔とUの子どもたちの悲劇の落差が、アメリカがおこなった戦争と、今準備している戦争の非道性を一層浮きだたせる。
 この本が出版された4月10日は、自衛隊の海幕幹部が横須賀基地を尋ね、米軍の方から日本に対して自衛艦派遣期間の延長とイージス艦の派遣を要請するよう裏工作を行った日である。これこそ、テロ対策支援を口実に、なし崩し的に対イラク戦争にまで加担しようとするものであった。
 森住氏はこの本の最後を、「この写真を世界中の心ある人たちに見てほしい、と私は願う。とりわけ、ブッシュ大統領に見てほしいと思う。この写真を見た上で、それでもなおかつ爆撃を強行するとしたら・・・・・私は言うべき言葉を知らない。」という言葉で締めくくっている。この言葉はそっくり、小泉首相や海幕幹部にも当てはまる。

(2002年5月14日 N)


○森住さんのホームページで主な写真を見ることができます。
   アドレス http://www.morizumi-pj.com/index.html





関連情報 パンフレット『劣化ウラン弾―被害の実態と人体影響』
          (美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)