[投稿]体験者の証言が綴る沖縄の惨劇
長編ドキュメンタリー映画「ひめゆり」の紹介

 柴田昌平監督 2時間10分

 映画「ひめゆり」は、昨年完成し全国で自主上映運動が起こり大阪でも上映されていたのですが、観ることができませんでした。今年の夏、アンコール上映をやっていることを知りましたので見に行ってきました。
 これまで「ひめゆり学徒」の悲劇をあつかった映画は4本作成されていますが、どれも証言に基づきながらもドラマとして作成されています。しかし、この映画は完全なドキュメンタリーとして作成されました。
 「ひめゆり」は、体験者自身が体験をきちんと記録化したいとの声から始まり、ひめゆり平和記念館のリニューアルと併せて取り組まれたもので、体験者が「遺言」として記録化したものでした。あくまで証言の積み上げがこの作品です。

上映時間2時間30分間全体を「ひめゆり学徒」のたどった道のりにそって
第1章 戦争動員と看護活動
第2章 南部撤退から解散命令
第3章 死の彷徨 
にわけ、体験者本人の31にものぼる証言のみで構成されています。
 全編、ドラマのような盛り上がりがなく淡々と進みますが、証言の持つ迫力とリアリティ、個別性に強く引き込まれました。
 証言者は、自分の経験だけでなく、そばで亡くなった同級生の最後の姿や言葉を静かに語っています。証言の場面では、本人と同級生の当時の学生時代の写真が登場し、学生時代のエピソードやクラブ活動などが紹介されます。具体的な人物の生き様として描かれており、個人の体験を大切にし、沖縄戦が何を奪ったのか、想像させるものとなっています。

 印象に残ったのが、証言者が「生き残った」ことを悔やみ続けたこと、今は自分のそばで亡くなった同級生の最後の言葉と思いを伝えるために「生かされた」のだと感じ証言を続けていること、そして同級生の最後の言葉が、「助けて」という生への渇望と悔しさであり「お国のための死」という殉国美談ではなかったことを語っていることです。

 「ひめゆり学徒」の悲劇を拡大させたのが、6月18日にでた「解散命令」でした。その後、学徒たちは、バラバラに最南端の崖っぷちに追いやられ、米軍包囲の下で、爆死したり「自決」に追いやられたりしました。「ひめゆり学徒」の死者のほとんどが、解散命令以降に起こりました。その中でも学徒たちの心を支配し続けたのが、捕虜になることをゆるさない教育でした。そのことが、証言の随所に出てきます。
 私は沖縄戦にかかわる本や証言集を何冊か読んでいましたが、ほとんど理解していなかったと、大きな衝撃を受けました。

 毎年機会を見つけて、教育の現場で沖縄戦を授業で取り上げてきました。そのとき、歴史的事実としてだけ伝えることや典型的な事例だけを伝えステレオタイプ化した沖縄戦を取り上げることに抵抗がありました。沖縄戦は、体験した一人一人違ったものとしてあるからです。
 今年も6月23日をきっかけに沖縄戦の平和学習に取り組みましたが、授業のまとめとして、大阪在住のひめゆり学徒の生き残りの方を教室に迎え、その方個人の体験を下に沖縄戦を考えました。そこでは皇民化教育による心の支配の実態を学ぶことができました。映画「ひめゆり」には、その方がいたガマと同じガマにいた方の証言もあり印象的でした。

 この映画の作成過程で亡くなった体験者が2名おられます。沖縄戦の中で亡くなっているが、遺影が見つからない方が10名。今でもひめゆり平和資料館に足を運ぶことができない体験者が多数おられるとのことです。

(2008年8月12日 大阪教員 I)

上映予定
■大阪 第7芸術劇場
8/9(土)〜8/15(金) 連日14:30〜
8/16(土)〜8/22(金) 連日18:30〜
■三重 伊勢 進富座 
8/16(土)〜8/21(木) 13:30〜/19:30〜
■長野 上田電気館
9/20(土)〜9/25(木)10:00〜/18:30〜

詳しくは http://www.himeyuri.info/ をご参照ください。