反占領・平和レポート NO.45 (2006/3/15)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.45

イスラエル軍によるエリコ刑務所襲撃を糾弾する!


■ 3月14日、イスラエル軍は、2台の軍用ブルドーザーと2機の攻撃用ヘリコプターを含む80台以上の軍用車両で、エリコのパレスチナ自治政府刑務所を包囲し攻撃し、刑務所の外壁を破壊して看守ら3人を射殺し多数を負傷させ、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)のサアダト議長ほか6人の身柄引き渡しを要求し武力により一方的に拘束した。
 あらゆるパレスチナ人の生殺与奪の権限はイスラエルにあると言わんばかりの暴挙である。私たちは、この許し難い暴挙を断固糾弾する。


■ 2001年8月、当時のPFLPアブ・アリ・ムスタファ議長がイスラエル軍のミサイル攻撃で暗殺され、その報復として同年10月、イスラエルの極右モレデット党から入閣していたゼエビ観光相が暗殺された。今回イスラエル軍に拘束された6人は、イスラエル観光相ゼエビ暗殺に関与したとイスラエルが主張していたが、パレスチナ自治政府が身柄を拘束し、2002年5月、米国政府、パレスチナ自治政府、イスラエル政府の協定により、米英監視部隊の監視の下にエリコの自治政府刑務所に収監されていた。
 イスラエル軍のエリコ刑務所襲撃に先立ち、米英監視部隊は退去していた。その理由を、米英政府は「治安状態が悪く、改善されなかった。」と言い訳している。米英政府・軍とイスラエル政府・軍が通じていたことは明らかだ。パレスチナ自治政府のアッバス議長は、作戦前に刑務所の監視部隊を撤退させた米英政府に責任があるとする声明を発表した。私たちは、ブッシュ・ブレア政府を厳しく糾弾する。


■ パレスチナ自治政府に拘束された6人のうち4人はパレスチナの軍事法廷で裁かれたが、サアダトPFLP議長は罪状もないまま収監され続けた。そのことに対して、パレスチナ最高裁は釈放すべきであるという判決を下していた。今年1月に行われたパレスチナ立法評議会選挙に、サアダトPFLP議長は獄中から立候補して当選し、アッバス議長は釈放する意向を示していたと報じられている。
 イスラエル軍による今回の暴挙は、主に3つの理由から行われたものと考えられる。
1)開始されたイスラエル総選挙のためのプロパガンダである。対パレスチナ強硬姿勢を誇示することで、ハマス勝利によって右ぶれしているイスラエル世論にアピールしようとしたのである。
2)ハマス包囲網を構築してハマスを孤立させようとしたが失敗し、手詰まり状態に陥っていたことに対する巻き返し。ハマスとパレスチナ自治政府に対する恫喝。
3)イスラエル政府は、ハマス勝利を前にして、一方的に国境を確定していくと宣言して「分離壁」の建設を加速させようとしているが、東部ヨルダン渓谷の側にも「壁」を建設しようとしていて、そのために西岸地区東部にも軍事的プレゼンスを確保していく布石。


■ イスラエルは、5年以上にわたるパレスチナ人民への武力攻撃にもかかわらず、パレスチナ人民を屈服させることができなかった。逆に、イスラエルに対して強硬姿勢をとるハマスが多数派として選出された。その結果として、これまで対テロ取締りをしていないと自治政府に責任をなすりつける形で事実上の領土併合(=「分離壁」)を正当化しようとしていたレトリックもかなぐり捨て、「テロ組織ハマス」と対話することはできないという口実を前面に押し出して、一方的な国境の確定という形で公然と領土併合を正当化し居直ろうとしている。

 国際法を蹂躙したイスラエルによる領土併合を断じて許してはならない。パレスチナ人民と自治政府による反発が強まるのは当然のことである。それに対して、イスラエルは、さらなる武力行使で強行突破することも辞さないという姿勢を示しているのである。イスラエルが次の大規模な武力行使に出る前に、国際的な圧力をかけなければならない。

2006年3月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


<参考>
※「ナブルス通信」は、今回のイスラエル軍による攻撃作戦をいち早く報じ、その後の事態も詳しくフォローされて、パレスチナの人権団体「PCHR(パレスチナ人権センター)」やイスラエルの平和団体「グッシュ・シャロム」の緊急アピールなども紹介されています。ぜひ参照してください。
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200603150248.htm
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200603142227.htm