反占領・平和レポート NO.41 (2004/7/19)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.41

画期的な国際司法裁判所の勧告意見−−−
○「分離壁(Wall)」は占領下の領土併合であり国際法違反である
○パレスチナは全体としてイスラエルの占領下にあり国際人道法に違反する違法状態にある
Epoch-making ADVISORY OPINION of ICJ (International Court of Justice)
The Wall Annexes Occupied Territory and thus Violates The International Law.
The Palestinian Territories Remain Occupied in Their Entirety and Are under the Violation of International Humanitarian and Human Rights Law.


■ついに出た画期的な国際司法裁判所の勧告意見。
 7月9日、国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルが建設している「分離壁(Wall)」に関する勧告意見を発表しました。それは、パレスチナ問題の公正な真の解決へ向けた第一歩となりうる画期的な内容をもっています。にもかかわらず、大手メディアはその内容をほとんど報道していません。むしろ、意図的に隠そうとさえしているのではないでしょうか。

 当初私たちも、国際司法裁判所の勧告意見については、たいしたものは出ないのではないかという思い込みがあって、あまり注目していませんでした。だから、メディアの報道についても「まあ、そんなところか」という受け止め方をしました。ところが、今回の勧告意見の内容は非常に重大だということが分かってきました。

 イスラエルの平和運動活動家ギラ・スヴィルスキーさんからのメールが発端です。早くも7月10日には彼女から「私は、この決定を拍手でもって大歓迎します。」というメールが届きました。そこで私たちは、インターネットによってその内容を知ろうと勧告文原文やパレスチナ人民連帯に関わる人々の意見や評価などをできるだけ調べました。そして調べるうちにその画期的な内容が分かってきたのです。以下、ICJの勧告意見の主要な内容とギラさんのメールの翻訳とを紹介します。

 また、「グッシュ・シャロム」のウリ・アヴネリ氏も、「ウォールに反対してきたイスラエル平和勢力が支持する諸原則に非常に近い諸原則」と評価しています。こちらについては、「ナブルス通信」が翻訳を掲載されていますので参照して下さい。
http://www.gush-shalom.org/archives/article311.html(「There are Judges in The Hague」by
Uri Avnery 2004.7.10)
http://www.onweb.to/palestine/siryo/avnery-aftericj10jul04.html(「ナブルス通信」ウリ・アヴネリ論説翻訳)

 ICJの勧告意見は、主に次の5点に要約することができます。
(1)ジュネーブ第4条約、ハーグ1907年条約付属ハーグ規約、国際人権規約をはじめとする国際人道人権法が、パレスチナ被占領地に適用される。
(2)イスラエルが西岸に建設している「ウォール」とそれによってもたらされている事態は、国際人道人権法に違反している。イスラエルは、「ウォール」建設を中止し、原状回復と賠償を行わねばならない。
(3)パレスチナの地は、オスロ合意のもとでパレスチナ自治政府への限定された権力の移行が行われたが、全体として被占領のままである。「ウォール」は、占領地の事実上の領土併合であり、国際法違反である。またパレスチナ人の自決権をも侵害している。
(4)イスラエルによる「ウォール」建設の違法性は、「テロとの闘い」のための「自衛権」によっては阻却されない。パレスチナ被占領地は、国際人道人権法にてらして違法状態にある。
(5)イスラエルに国際法違反状態を終了させる義務があるだけでなく、すべての国家にイスラエルによる違法状態を終了させる義務があり、違法状態の継続に援助しない義務がある。
http://www.icj-cij.org/icjwww/idocket/imwp/imwpframe.htm(ICJ勧告意見英文)
http://electronicintifada.net/v2/article2893.shtml(「エレクトロニックインティファーダ」論説)

 上記の内容は、国際法の観点からは当然のことではありますが、その当然のことが長らく蹂躙され続けてきました。今回は、イスラエルによる「ウォール」建設という新たな事態に対して司法判断が下されたわけですが、その際に根本問題であるイスラエルによるパレスチナの占領という事実が明確に再確認されました。世界で最も権威ある司法判断として、国際法に違反した状態が続いていることが明瞭に指摘されました。


■パレスチナ人民連帯の今後の取り組みこそが、今回の司法判断を生かすことが出来る。
 さらに重要なことは、国際社会に対して、この違法状態を終わらせる責務があることを指摘したことです。これは、イスラエルに対する国際的な制裁に道を開く可能性もあります。また米国によるイスラエルヘの援助や、度重なる拒否権行使によるイスラエル支援も問題とされる可能性があります。従来の国際法秩序を破壊しようとしてきたブッシュ政権の、「テロとの闘い」や「自衛のための先制攻撃」にも矛先が向いていく可能性をもっています。

 ICJの勧告意見には法的拘束力はありません。今回の勧告意見を報道した全てのメディアがこの「法的拘束力はない」を繰り返し流しました。流すことで「何をやっても無駄」という諦めを押し付け、勧告意見そのものの権威をおとしめようとしています。
 しかし、「法的拘束力はない」を繰り返すのではなく、どうすれば、事実上の法的拘束力を持たせることが出来るのか、その具体的な方途、道筋を示すべきです。国際世論と国際的なパレスチナ連帯運動の取り組み如何では、世界的な権威をもつICJの法的判断は、絶大な影響力をもちうるものです。その可能性を現実性に転化させるのは、国際的な闘争の圧力以外にはありません。イスラエルや米国に国際法を遵守させることは、国際的な運動の結集としてしか実現されません。現在国連において、ICJの勧告意見を受けて議論が続けられています。事態を注視して引き続き続報を準備したいと思います。

2004年年7月19日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




[翻訳紹介]
ありがとうございました、皆様
ギラ・スヴィルスキー


友人の皆さん、この短い署名入り論評は、私が通常書いているものよりもフォーマルなもので、よりいっそう広範な人々に、いわゆる「セキュリティー・フェンス」に関して実際に何が間違っているのかを明らかにしようとするものです。

 ハーグの国際司法裁判所は、注意深く理由づけがなされてはいるが、あいまいさを残さない明瞭な決定で、期待された通りの決定を下しました。それは、パレスチナ領土内に建設されたイスラエルのセキュリティ・フェンスが、国際法に照らして違法であるということを明らかにしました。

 自国の安全について深く懸念している一人のイスラエル人として、またこの障壁建設の道義的意味について深く懸念しているユダヤ人として、私は、この決定を拍手で持って大歓迎します。

 ウォールに賛成するイスラエルの安全保障に関する主張は、深刻に損われました。現在建設されているものとしては、ウォールは1967年国境にしたがわず、パレスチナ領土に深く喰い込んでいます。そのルートは、結局数十万人のパレスチナ人をイスラエル側に残すことになります。どうしてこれが、イスラエル領内でのパレスチナ人の自爆を妨げることになるのでしょうか?

 人道的観点からすれば、このウォールは法外に常識はずれです。それは、パレスチナ人が農地や学校や病院や仕事に行くのを妨げています。あなたの子どもが日に2回、学校への行き帰りにウォールの所で兵士たちが現れてゲートを開けるのを待たねばならいということを想像してみて下さい。オリーブの木で生計を立てている農民が、今ではもうそのオリーブの木のところへは行けないか、ウォール建設のためにその木が倒されてしまっているという状況を想像してみて下さい。突然医者に診てもらうことが必要になっても、通ることが許可されないという状況を思い浮かべてみて下さい。あなたがただ年老いた母親を訪ねたいだけであっても、今ではウォールが間に立ちはだかっているという状況を思い浮かべてみて下さい。イスラエルの人権団体「ベッツェレム」によれば、ウォールが完成すれば、パレスチナ人のおよそ38%が生活を破壊されることになり、生活を続けることができなくなります。

 ウォールの存在は、パレスチナ人にとって残酷であるだけにとどまりません。それは、結局はイスラエルの安全を害するものでもあります。それは私たちに向けられる恨みと憎しみを強めるからです。これがウォールの提供する安全保障だというのでしょうか?

 このような状況をほとんど避けることのできないパレスチナ人とは異なって、たいていのイスラエル人は、ウォールを見たことさえありません。それはパレスチナの領土内に建設されています。そこで危険を冒して居座っているのは、イスラエル人入植者(と彼らを守るために送られた兵士たち)だけです。他のイスラエル人たちがもしそれを見ることがあれば、私が思うに、見た人は皆ショックを受けることでしょう。いくつもの場所で、ウォールはパレスチナの町の中を突っ切っているだけでなく、事実上すっかり町全体を包囲して、そこの住民を檻にいれるような形になっている所もあります。そこでは、かれらの出入りの権利は、ゲートをガードしている若い兵士たちの気まぐれにゆだねられているのです。

 これらの場所では、住民が今では30フィートの灰色のコンクリート胸壁にすっかり囲まれています。ところどころに監視塔があって、そこから兵士たちが双眼鏡と自動ライフルを眼下の住民に向けているのです。ウォールに設置された灯火が、24時間行われている監視をたやすくするために下の通りを照らしています。私は、私の前の世代が反ユダヤ主義の歴史の一時代にゲットーに閉じ込められたという経験をもつユダヤ人として、このような状況をとても恐ろしいことだと思います。10万人ものパレスチナ人をゲットーや飛び地に檻で囲って閉じ込めることが、イスラエルの安全保障に役立つことでしょうか? ヨーロッパでユダヤ人を強制的にゲットーに閉じ込めたことがヨーロッパの国々の安全保障に役立ったでしょうか?

 先週、イスラエル最高裁は、ウォールによってもたらされた重大なパレスチナ人の人権侵害を認定し、特定の場所について軍にルート変更を命じました。わが国の政府は、このイスラエル最高裁の裁定によって−−「ウォールは我々が対処している国内的安全保障問題である」という理由づけで−−イスラエルがハーグの裁定を無視することが可能になるのを期待しているのですが、イスラエル平和運動活動家の大部分はそんなことは認めていません。占領地内でのウォール建設は−−それは誰かの財産の上に建設することを意味していますが−−、基本的な権利の侵害です。それを人がどのように見るかに関わりなく、基本的な権利の侵害であることは間違いありません。そして、ウォールが安全を保障するという主張は、たくさんのパレスチナ人がまさに「イスラエル」側に残るということによって意味のないものになっています。

 結局のところ、わが国が安全保障を達成する最善の方法は、パレスチナ人と和平の交渉をすることです。そして双方の側の生活を十分に改善して、平和を維持することに確固たる関心があるという状況にすることです。しかしながら、ウォールはまさにその反対のことをしています。その結果として、それはパレスチナ人にとって悪いだけでなく、イスラエル人にとっても悪いものとなっています。

 数日前、私は、パレスチナ人の老女が自分たち一家のオリーブの木をうろたえながら探しているのを見かけ注視しました。それは軍が切り倒してしまい、その刈り跡の上にウォールがそびえることになっているのでした。「あの愚かな人々が...」彼女は注意深く名前は言わずに述べました、「彼らの愚かさがなければ、私たちはお互いに平和に暮らすことができたのに。」と。