反占領・平和レポート NO.22 (2002/08/09)
anti-Occupation pro-Peace Report No.22

緊急報告:
「グッシュ・シャロム」が‘魔女狩り’的迫害を受けている!

翻訳紹介:「イスラエルの平和戦線より」(ギラ・スヴィルスキー)


EMERGENT REPORT :
  Gush Shalom is being persecuted like witch hunting !

TRANSLATION: "From the Peace Front in Israel" by Gila Svirsky.



■ 軍、政府、マスメディアが一体となって、グッシュ・シャロムを攻撃・迫害。
 8月4日、「ハ・アレツ」紙は、15人のイスラエル軍士官(中佐から准将)がグッシュ・シャロムから戦争犯罪について告発する手紙を受け取っていることを報道しました。軍がそれを公表し、「ハ・アレツ」紙がそれを取材したという形の報道ですが、軍と政府に対する非難や批判はなく、軍高官の言明を好意的に報道するようなものでした。リベラルの代表とされる同紙がこのような報道をし、マスメディアはこぞってグッシュ・シャロム非難の大合唱となっているようです。

 私たちもまだ詳細を十分に把握できていませんが、現在わかる限りで、もう少し詳しく報告します。詳細は追ってレポートする予定です。

■ 「ブラボー!グッシュ・シャロム!」支配者・権力者たちをそれほどまでに慌てさせたすばらしい闘い!
 グッシュ・シャロムは、3月末から4月にかけてのパレスチナ自治区へのイスラエル軍の軍事侵攻について、調査チーム(「グッシュ・シャロム戦争犯罪証拠収集チーム」)を組織して、具体的な戦争犯罪の証拠収集を行なってきたようです。そして、地方紙などのインタヴューに答える形で「軍功」を自慢した将兵たちの話から、特定できた士官に対して警告を発したり告発したりする手紙を送りつける活動をしていたようです。それはウェブサイトその他には公表されませんでした。
 軍と政府は、これまでは無視することで対応してきたようです。しかしついに無視できなくなって、自ら公表し、グッシュ・シャロムに攻撃と迫害を加えはじめたのです。シャロン首相は、グッシュ・シャロムのこの活動を、軍士官を脅迫して義務の遂行を妨げるものとして、司法長官に調査を指示しました。
 政府の閣僚がグッシュ・シャロムを公然と非難し、マスメディアもこれに協力して右翼的大衆を動員した「魔女狩り」的攻撃・迫害が行われているようです。グッシュ・シャロムに「密告者」「裏切り者」「国家反逆者」「極悪非道の恥ずべき行為者」等々の非難のメールや電話が殺到しているようです。

 それに対して、平和運動や人権運動にとりくんでいる人々、とりわけここでもまた女性たちが、最も果敢にグッシュ・シャロム擁護運動を展開しているようです。今回翻訳紹介するギラ・スヴィルスキーさんの報告の中にも、この問題がとりあげられていて、ギラさんは「ブラボー!グッシュ・シャロム!」と叫んでいます。軍と政府が慌てふためいて攻撃をしかけてくるほどの闘いをやっていることに拍手喝采しているのです。いかなる攻撃と迫害に対しても、それこそ自分たちの「ねうち」だと言わんばかりに胸を張って闘っている姿が目に浮かぶようです。

 続報は、今準備中です。私たちにどんな支援ができるかも含めて検討して、報告したいと思います。とりあえず言えることは、8月初めに開始されたばかりの「アメリカの対イスラエル援助停止を求めるオンライン署名」に国際的な協力が殺到すれば、それがグッシュ・シャロムに対する激励になるのはまちがいないということです。この署名運動は、イスラエル政府とイスラエル軍の急所をついています。グッシュ・シャロムへの大々的な攻撃が開始されたのは、この署名が始められたからではないかとさえ思えるぐらい、時期が一致しています。この1週間で約1000名が署名し、どんどん増えています。皆さんの協力を再度呼びかけます。ぜひ広めて下さい。

■ 「忙しい夏」の活動報告=「イスラエルの平和戦線より」
 私たちは、「反占領・平和レポート No.20」で、イスラエル平和運動の苦悩と新たなとりくみについて詳しく報告しました。5月頃から始まった模索と苦悩は、断続的に続き、ようやく成果を生み出しつつあるようです。(最近の会議の様子は、「女性連合」のサイトで見ることができます。)
 一方では、事態のいっそうの悪化と反動勢力・右翼勢力の活動の活発化とがあります。グッシュ・シャロムに対する攻撃・迫害のことは上で述べましたが、軍務拒否者に対する攻撃・迫害も激しくなっていて、いつ何時、右翼的宗教的狂信者に襲われるかもしれないという状況があるようです。
 しかし、他方では、着実に実を結びつつある新たな力強い闘いも成長しています。
 特筆すべきは、新しく始まった「女たちの拒否運動(Women Refuse)」です。「軍事的解決に協力することをやめ、」「愛する人々が軍事行動に参加することに反対する」ことを女性たちに呼びかけています。この内容は、4/27テルアビブ1万人行動で女性の発言者の一人が提起したことです(「反占領・平和レポート No.15」)。5月初めからの「女性連合」が主導した真剣な討論の中で、具体化され結実したものにちがいありません。

2002年8月9日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(8月22日一部訂正 [お詫びと訂正])




[翻訳紹介]
イスラエルの平和戦線より
2002.8.6

From the Peace Front in Israel
by Gila Svirsky

 一方では...
 一方では、事態はいっそう悪化してしまいました。イスラエルの側では、家から家、家族から家族へと悲劇を拡大し、無差別に攻撃をしかけ、パレスチナ人との間で和平を達成しようとする多くの人々の望みをむしばむテロリズムがあります。そしてパレスチナの側では、迫害のレベルは、正常な生活に取って代わって戦車が戸口に砲口を向けて、無実の人々が仕事や学校へ行くことも、医者のもとへ行くことも、食糧を調達に出かけることをも妨げるほどになっています。米国際開発局が発表した数値によれば、占領地のパレスチナ人の子供の4分の1が栄養失調になっているということです。
「ハ・アレッツ」紙の記事 http://www.haaretzdaily.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=194758
そして、たとえ人工透析や化学療法を必要としていても、胎児を帝王切開で分娩する必要があっても、あるいは単に歯の治療の必要があっても、外出禁止令と封鎖は、そのすべてを不可能にしています。

 悪いニュースは重なるもので、罪深い対衝(unholy syzygy)をなすジョージ・W・ブ ッシュとアリエル・シャロンが同時に公職にあり、ともにその残虐な行いを「テロリズムに対する戦争」として作り話をしています。テロリストに殴り返すことが、彼らに武器を置かせ謝らせることに導くでしょうか? イスラエル人に、侵略、封鎖攻囲、外出禁止令の無益さと逆効果がまだ分からないということは、私には驚くべきことに思えます。恐怖と復讐が視界をおおい隠しています。

 他方では...
 イスラエル平和運動は、シャロンが現職にとどまっている限り、端の方から徐々に掘り崩すことができるだけであって和平は達成できないということを十分認識して、こつこつ取り組みを続けています。ここに、忙しい夏の活動からいくつかの貴重なニュースを取り出してみます。

 *軍務拒否運動 : 軍の士官と兵士たちは、占領地での軍務拒否を継続している。そして、収監と公の非難を受けるという代価を払っている。最高裁は、略式ではない完全軍法会議を求めるデイヴィッド・ゾンシャイン(「軍務拒否奨励」運動の共同創設者の一人)の要求を依然として抑えつけている。そこにおいて彼は、軍務につかないという自らの決定の正当性を主張するために、占領を公判廷にもちだして問題にするつもりなのだが。そうこうするうちに、入植者たちの運動の中で権威のある一人のラビ(ユダヤ教聖職者)が、そのような軍務拒否は死に値すると公に宣言し、そのことによって、神の意志の実行者を自ら任じる者は誰でも彼ら軍務拒否者たちに対してオープン・シーズン(解禁)であることを宣した。(軍務拒否者に対する私刑が宗教的に正当化されるという意味−−訳者)

 *戦争犯罪 : 日曜(8/4)に、イスラエル軍は次の事実を明らかにした。複数の軍高官がグッシュ・シャロム平和運動から送られた手紙を受け取ったということ、その手紙は、彼らがメディアで自慢している軍功のいくつかが戦争犯罪であり、国際法で罰せられるべきものであると述べていること。軍は激怒し、メディアは悪意に満ちていた。インタヴュー担当者は、グッシュ・シャロムを「密告者」と呼び、ある者は、「歴史上の暗黒の時」に仲間のユダヤ人を売り渡した人々に喩えた。シャロンは、士官たちに義務の遂行を思いとどまらせようとする脅迫の適法性を調査するよう、司法長官に指示した。
 ブラボー!グッシュ・シャロム! このことで何人かは本当に義務の遂行を思いとどまってくれたら! この手紙が、イスラエル兵士たちの心に、戦争犯罪での刑事告発の恐れを植えつけますように!

 *入植者−−もはや和平への障害ではない−− : 「ピース・ナウ」は、入植者のほとんど80%がイデオロギーや宗教ではなく経済的な理由から占領地に入った、ということを明らかにした非常に重要な調査を公表した。大部分は、実際、財産の損失が補償されるならイスラエルに戻ると述べた。
[参照:www.peace-now.org/SettlerSurvey/ExecutiveSummaryEng.doc
 この調査は、入植者を撤収させることがイスラエルの内戦につながるという右翼の脅しを完全にコケにしている。立ち去らねばならなくなることを避けるためには武器をとると述べたのは、たった3%のみであった。この情報を広めることは極めて重要である。

 *女たちの平和運動 : 女性平和運動活動家たちは、とても忙しい夏を過ごしている。そのハイライトは、「女たちの拒否運動(Women Refuse)」である。政府転覆的ともいえるこの運動は、「ニュー・プロフィール」によって始められ、女たちに軍事的解決に協力することをやめるよう呼びかけ、愛する人々が軍事行動に参加することに反対するよう呼びかけている。「私たちは、戦争を遂行し占領を支える機械の一部になることを拒否する。...私たちは、敵対し合うことを拒否する。」「Machsom Watch」の女性たちは、夜明けから検問所を監視し、兵士たちに、人に屈辱を与える恥知らずな行為を思いとどまらせている。そして、「公正な和平をめざす女性連合」は、二日間のセミナーを開催し、会場は寿司詰め状態になった。そこでは、政治的アナリストたちが、計画よりも半年早い来春の選挙を予言した。というのも、シャロン政権がイスラエルの経済危機への対処で、もがき苦しんでいるからである。今や、目標は、ちゃんとした−−そして選挙で選んでもらうことのできる−−対案を創出することである。

 *人道的援助 : 多くの平和運動と人権運動の諸組織は、協力し合って次のような活動を行なってきた。取り壊された家を再建すること、ネゲヴ砂漠のベドウィンの人々に水を運ぶこと、エイン・フードという認知されていないアラブ人の村で学校を新たに改造すること、ジェニンのサマーキャンプへの支援を提供すること、いくつかの特に反民主主義的な法案の国会通過を妨げること。人道的な必要性について言えば、ヘブロンの多くのパレスチナ人家庭では、何か月も水道の蛇口に水が出ていない。...ところが近くの入植者たちは、芝生に水をやったり水泳プールを楽しんだりしているのだけれども。

 *最後に、「ベッツェレム」からの煩わしい話 : この権威ある人権組織に入って10か月になる一人のフィールドワーカーが、パレスチナ自治政府によって逮捕され、イスラエルのシン・ベト(秘密警察)への協力で告発された。多大な努力の後にベッツェレムは、何とか拘置所で彼に非公式で会うことができた。そこで彼は告発を認めた。ベッツェレムは声明を発し、次のように述べた。もしこの告発が本当であれば、シン・ベトによる人権活動家の利用が「大問題であり、ベッツェレムの活動と調査員の生命の両方を危険にさらす可能性があったものである。」と。その声明は、また、彼が自治政府による正式の公正な裁判を受けるべきであることを要求した。
 次のような疑いがあります。すなわち、イスラエルのシン・ベトは、ベッツェレムの活動家の一人を勧誘して、その名声を害することを故意に追求したのではないか? その男は本当に協力したのか? また、彼は、公正な裁判を受ける見込みがないもとで、司法取引の一部として「自白する」ように説得されたのだろうか? ひとつのことだけは確かです。一度自白が行なわれた以上は、この男はもはや安全ではないということ。おそらく彼の残りの生涯を通じて。彼の魂に救いがありますように。

Shalom / Shlaam エルサレムより
ギラ・スヴィルスキー