政府・防衛庁による身元・思想調査事件を許さず、
徹底的な事実究明・責任追及を求める特別決議




 5月28日、防衛庁が情報公開法に基づく請求者142人について、違法な身元調査、思想チェックを行い、ブラックリストを作っていたことが発覚しました。前代未聞の人権侵害事件です。沖縄や横須賀など全国の反基地運動、反戦平和運動に対する露骨な敵対であり、弾圧です。私たちは断じて許すことはできません。

 何よりもまず、事実関係を徹底的に究明させなければなりません。誰の指示か。何のためにやったのか。その情報をどこから、どんな方法を使って得たのか。警察、自治体などが協力したのかどうか。それらに関わった関係者全員の公表と責任の所在を明らかにさせなければなりません。既に現時点での報道でも組織的、計画的に行われたことが明らかです。事態を沈静化させようと政府・防衛庁は「個人の責任」に解消しようとしています。トカゲのしっぽ切りは許されません。中谷防衛庁長官は責任を取って辞任すべきです。さらには小泉首相も責任を取って辞任すべきです。それほど重大な問題です。

 今回の事件は小泉政権の軍国主義と反動の最も危険で悪質な部分を明るみに出しました。ブラックリストが作成されたのは戦争屋小泉首相の誕生以降のことであり、テロ特措法とアフガン戦争への参戦、靖国神社公式参拝、そして有事法制等々、急ピッチの戦争準備と切り離すことはできません。

 防衛庁の危険な動きはこれだけではありません。法的根拠を無視した昨年の米空母護衛事件、最近発覚した米日軍部合作でのイージス艦派遣策動など、法律や憲法を無視し、シビリアン・コントロールをあざ笑うかのような「軍部の独走」が相次いでいます。支離滅裂で滅茶苦茶な議論で強行しようとする有事法制もこの「独走」の一環です。私たちは有事法制反対の運動をますます強めなければなりません。

 更に、今回の事件ではっきりしたことは、有事法制が通ると大変な事態になるということです。「平時」から有事に向けた地均しが推進されることは明らかです。国民全体、市民一人一人を戦争に協力させるとは、これに反対する者、非協力者を思想チェックと身元調査で普段から監視することと表裏一体です。まさしく「非国民」をあぶり出すとんでもない行為がまかり通ることになります。有事法制を何としても廃案に追い込みましょう。

 今回の事件は、政府与党が強行しようとしているメディア規制法廃案の正当性を一層明らかにしました。同法は、本来目的としなければならない「行政による個人情報の流出防止」を全く無視するだけではなく、逆に「個人情報検閲法」「内部告発防止法」「悪徳政治家保護法」と揶揄されるほど政府と官僚機構を保護するものです。まさに防衛庁がやったブラックリスト作りは、政府の「個人情報保護法案」の先取りなのです。

 今回のような悪質な人権侵害が明らかになったからには、今年8月から全面実施されようとしている住民基本台帳ネットワークシステム(国民総背番号制)を中止すべきです。もし今のような政府官僚機構が好き放題にブラックリストを作れる状況のままこのシステムが始動すれば大変な事態になります。事は防衛庁にとどまらず、同じようなブラックリストが全省庁レベル・全国レベルで作成可能になるからです。

 今回の事件は、反基地運動、反戦平和運動だけの問題ではありません。政府の不正、汚職などを追及する市民や市民運動、厚生省の薬害問題を追及する市民や市民運動、原発に反対する環境保護運動や反公害運動等々、様々な形で政府を批判する市民運動全体、平和と民主主義の運動全体に対する挑戦です。思想信条の自由を踏みにじる憲法違反の行為です。政府は憲法順守が義務づけられているはずです。戦争について、基本的人権について、国民主権について、ことごとく憲法をないがしろにし、根本から侵害し蹂躙する小泉政権の責任を徹底的に追及しましょう。

2002年5月29日
5・29有事法制を廃案に!院内集会参加者一同